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第1章3部
歪んだ表現
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冷たく昏い眼差しは、何も映していないただのビー玉に見えた。目が合っているはずなのに、この人の視界に私は存在していないだろう。
なのに全身を縛られたように動けなくなっているのは、この人が自分だけに注ぐ殺意のせいだ。
一歩動けば殺される。そう、あの鷹の傀儡と対峙した時に感じた殺意と同じだ。
実力差が圧倒的だったヴァースキとの対戦とは違う恐怖。そう、自分は今恐怖を感じているのだ。
「ぐっ――」
かすかな呻き声はテオのものだった。動けば殺されると分かっているはずなのに、咄嗟に吹き飛ばされたテオの方向を見やる。
体を少し動かしただけで全身に激痛が走り、皮膚が引っ張られるだけで傷口から鮮血が溢れた。
セリカの位置からテオの姿は確認できない。しかし、テオの声がした方向へ必死に手を伸ばした。
伸ばした手から体を引っ張ろうと力を入れれば、ガリッと爪に土が入りこんだ。
そんな様子にゼロは手のひらをセリカに向け意識を集中した。
倒れているセリカの周辺に何発もの魔法が着弾した。
「くっ――!」
着弾した際に飛び散った石や土が容赦なく露出している肌に当たり、思わず目を瞑る。
さらに続く魔法の衝撃でセリカは数メートル先にある藪に放り出されてしまった。
「ハァ・・・ハァ・・・当たっていない――?」
倒れたまま自分のケガの具合を確認すると、先ほどと変わっていない自分の状態に疑問を抱く。
耳元でジャリッと音がする。そして、紐も飾りもないシンプルな黒い靴が目の前に現れた。
「どういう、つもりだっ――!!?」
わざと外した攻撃の意図が分からず、セリカはもう1度相手を睨もうと頭を上げようとした。
すると一瞬目の前が暗くなり浮遊感を感じたセリカは、そのままガクンと再び頭から突っ伏してしまった。
(めまいが・・・血を流しすぎたか。止血しないと危ないな――。)
うっすら目を開ければ、自分の周辺にある草や石などに大量の血が付着しているのが確認できる。それを見たセリカはまるで他人事のように、そう判断した。
その時、顎に何かが触れる。急に視界が明るくなり自然と瞼が落ちた。革の匂いが嗅覚を刺激すれば首を引っ張られている感覚にゆっくりと目を開けた。
相手は片手をローブのポケットに突っ込みセリカを見下ろしている。
その時初めて相手の靴の先で顎を無理やり押し上げられていることが分かった。
一瞬で頭に血が上がったセリカは上半身を捩じり、靴先から顔を背けようとした。
しかし激痛が襲い、思ったように動けなかった。
「フン、暑苦しいフード、だな。そんなに、顔に自信が、ないのか?」
屈辱的な方法で視線を合わせているセリカは、腹の虫が治まらず最後にニヤリと笑った。無理やり上を向けさせられているせいで発した声はかすれている。
「がっ――!」
顎を支えていた力が急に消え、濡れた草が顔に柔らかく刺さる。と、同時に、上から頭を押さえつけられれば砂利が顔に落ちた。どうやら頭を相手踏みつけられているようだ。
「おいおい、女の子に対してその仕打ちはないんじゃないのー?それとも、そういうプレイ?」
茂みから姿を現したのは、ファルナとガロだった。ファルナはニヤニヤと笑っている。
「ざまぁみろ!!お前だったんだな、探し人って!」
自分をコケにしたセリカが足蹴にされてボロボロになっている。
ガロは優越感に浸り、セリカを見下ろした。
十中八九、木の枝にいた奴らだろう。顔を確認しようにも足蹴にされている力が思った以上に強く、セリカは顔を上げることができなかった。
(――探し人?)
「うわ、すごいケガしてるじゃん!痛そー。
ゼロ、あの黒い影たち、どうやって利用したんだよ?」
霊魔との闘いによる疲弊もあるだろうが、セリカのケガの大半は傀儡にやられてできた傷だった。無抵抗だった為、自然と傷が深くなったのだろう。
「細工した。」
「何に?」
「作業に。」
「何の?」
「影たちにエレメントを複製させる。」
「どうやって。」
「介入した。」
「どこに。」
「サーバーに。」
「この学園の!?どうやって!?」
「――。」
「ゼロ?」
「――うるさい。」
いい加減面倒くさくなったのだろう。会話を放棄したゼロは口を噤んだ。
まだ聞きたいことはある。が、これでも会話をした方だ。これ以上聞いても答えてはくれないだろう。だから質問を変えてみようとしたときだった。
ゼロが足蹴にしているセリカがモゾモゾと動き始める。
上から降ってくる会話は、セリカには理解できなかった。
それよりもこの現状を打破するべく何とか体を動かそうとする。
痛みよりも屈辱感が勝った時、右手でゼロの足首を掴み力を込めて足をどけた。
痛みで歪んだ表情のまま見上げると、自分を囲っている人物の顔をハッキリと見ることができた。
ガロは声の印象どおり幼かった。シリアよりも幼く見えるかもしれない。ということは、初等部ぐらいの年齢だろう。
ボサボサの髪は手入れをされているという感じではない。鼻までかかる前髪をうっとおしそうに、首を振る動作でかき分けている。
薄汚れたローブにフードを被る姿がまるでゼロの弟みたいだ。
隣にいる細身の男は、肩まであるブロンドの髪を毛先だけ薄ピンクに染めていた。遠目からは分からなかったが、フチなしの丸メガネを鼻にかけている。
踝まである金色と黒色で装飾されてあるマントと首に嵌めてあるベルト式のチョーカーが軽薄さを際立たせている。
しかし、ふざけた態度の裏に覗く目には、静かな計謀が垣間見えているようで何となく気色が悪い。
そして、問題なのは全身ローブの男だ。フードが深すぎて顔の表情を見ることはできない。が、フードから覗く眼が不気味に光り、冷たい視線は威圧感しか感じない。
セリカが足を掴み、頭を退けたことに対しても興味が無いのか微動だにしなかった。
「んで、どーするんだっけ、この子。このケガ、放っておけば死ぬぞ。」
「連れて帰る。」
「え、虚空界に連れてくのか?」
「あぁ。」
「ふーん。まぁ、確かに中身がどうなってるのか調べたいよなー。」
「――。」
「え、どういうこと?」
「まぁまぁ。お子様にはまだ早いってことよ。」
「なんだよ、どういうことだよっ!!?」
「さて、じゃあ行きますかぁー。」
ファルナはセリカのポニーテールをグッと掴み、自分の肩の位置まで軽々と持ち上げた。
セリカの身体から大量の血が流れ地面に血だまりができる。
「ぐっ!!はな、せ――!」
痛みでセリカは苦渋の表情が浮かべる。
「セリカァ!」
その時、少女の泣き声にも似た声が響いた。ファルナたちがその声を辿れば、複数の人影が集まっている。
「大集合だな♪」
ファルナは再びほくそ笑んだ。
なのに全身を縛られたように動けなくなっているのは、この人が自分だけに注ぐ殺意のせいだ。
一歩動けば殺される。そう、あの鷹の傀儡と対峙した時に感じた殺意と同じだ。
実力差が圧倒的だったヴァースキとの対戦とは違う恐怖。そう、自分は今恐怖を感じているのだ。
「ぐっ――」
かすかな呻き声はテオのものだった。動けば殺されると分かっているはずなのに、咄嗟に吹き飛ばされたテオの方向を見やる。
体を少し動かしただけで全身に激痛が走り、皮膚が引っ張られるだけで傷口から鮮血が溢れた。
セリカの位置からテオの姿は確認できない。しかし、テオの声がした方向へ必死に手を伸ばした。
伸ばした手から体を引っ張ろうと力を入れれば、ガリッと爪に土が入りこんだ。
そんな様子にゼロは手のひらをセリカに向け意識を集中した。
倒れているセリカの周辺に何発もの魔法が着弾した。
「くっ――!」
着弾した際に飛び散った石や土が容赦なく露出している肌に当たり、思わず目を瞑る。
さらに続く魔法の衝撃でセリカは数メートル先にある藪に放り出されてしまった。
「ハァ・・・ハァ・・・当たっていない――?」
倒れたまま自分のケガの具合を確認すると、先ほどと変わっていない自分の状態に疑問を抱く。
耳元でジャリッと音がする。そして、紐も飾りもないシンプルな黒い靴が目の前に現れた。
「どういう、つもりだっ――!!?」
わざと外した攻撃の意図が分からず、セリカはもう1度相手を睨もうと頭を上げようとした。
すると一瞬目の前が暗くなり浮遊感を感じたセリカは、そのままガクンと再び頭から突っ伏してしまった。
(めまいが・・・血を流しすぎたか。止血しないと危ないな――。)
うっすら目を開ければ、自分の周辺にある草や石などに大量の血が付着しているのが確認できる。それを見たセリカはまるで他人事のように、そう判断した。
その時、顎に何かが触れる。急に視界が明るくなり自然と瞼が落ちた。革の匂いが嗅覚を刺激すれば首を引っ張られている感覚にゆっくりと目を開けた。
相手は片手をローブのポケットに突っ込みセリカを見下ろしている。
その時初めて相手の靴の先で顎を無理やり押し上げられていることが分かった。
一瞬で頭に血が上がったセリカは上半身を捩じり、靴先から顔を背けようとした。
しかし激痛が襲い、思ったように動けなかった。
「フン、暑苦しいフード、だな。そんなに、顔に自信が、ないのか?」
屈辱的な方法で視線を合わせているセリカは、腹の虫が治まらず最後にニヤリと笑った。無理やり上を向けさせられているせいで発した声はかすれている。
「がっ――!」
顎を支えていた力が急に消え、濡れた草が顔に柔らかく刺さる。と、同時に、上から頭を押さえつけられれば砂利が顔に落ちた。どうやら頭を相手踏みつけられているようだ。
「おいおい、女の子に対してその仕打ちはないんじゃないのー?それとも、そういうプレイ?」
茂みから姿を現したのは、ファルナとガロだった。ファルナはニヤニヤと笑っている。
「ざまぁみろ!!お前だったんだな、探し人って!」
自分をコケにしたセリカが足蹴にされてボロボロになっている。
ガロは優越感に浸り、セリカを見下ろした。
十中八九、木の枝にいた奴らだろう。顔を確認しようにも足蹴にされている力が思った以上に強く、セリカは顔を上げることができなかった。
(――探し人?)
「うわ、すごいケガしてるじゃん!痛そー。
ゼロ、あの黒い影たち、どうやって利用したんだよ?」
霊魔との闘いによる疲弊もあるだろうが、セリカのケガの大半は傀儡にやられてできた傷だった。無抵抗だった為、自然と傷が深くなったのだろう。
「細工した。」
「何に?」
「作業に。」
「何の?」
「影たちにエレメントを複製させる。」
「どうやって。」
「介入した。」
「どこに。」
「サーバーに。」
「この学園の!?どうやって!?」
「――。」
「ゼロ?」
「――うるさい。」
いい加減面倒くさくなったのだろう。会話を放棄したゼロは口を噤んだ。
まだ聞きたいことはある。が、これでも会話をした方だ。これ以上聞いても答えてはくれないだろう。だから質問を変えてみようとしたときだった。
ゼロが足蹴にしているセリカがモゾモゾと動き始める。
上から降ってくる会話は、セリカには理解できなかった。
それよりもこの現状を打破するべく何とか体を動かそうとする。
痛みよりも屈辱感が勝った時、右手でゼロの足首を掴み力を込めて足をどけた。
痛みで歪んだ表情のまま見上げると、自分を囲っている人物の顔をハッキリと見ることができた。
ガロは声の印象どおり幼かった。シリアよりも幼く見えるかもしれない。ということは、初等部ぐらいの年齢だろう。
ボサボサの髪は手入れをされているという感じではない。鼻までかかる前髪をうっとおしそうに、首を振る動作でかき分けている。
薄汚れたローブにフードを被る姿がまるでゼロの弟みたいだ。
隣にいる細身の男は、肩まであるブロンドの髪を毛先だけ薄ピンクに染めていた。遠目からは分からなかったが、フチなしの丸メガネを鼻にかけている。
踝まである金色と黒色で装飾されてあるマントと首に嵌めてあるベルト式のチョーカーが軽薄さを際立たせている。
しかし、ふざけた態度の裏に覗く目には、静かな計謀が垣間見えているようで何となく気色が悪い。
そして、問題なのは全身ローブの男だ。フードが深すぎて顔の表情を見ることはできない。が、フードから覗く眼が不気味に光り、冷たい視線は威圧感しか感じない。
セリカが足を掴み、頭を退けたことに対しても興味が無いのか微動だにしなかった。
「んで、どーするんだっけ、この子。このケガ、放っておけば死ぬぞ。」
「連れて帰る。」
「え、虚空界に連れてくのか?」
「あぁ。」
「ふーん。まぁ、確かに中身がどうなってるのか調べたいよなー。」
「――。」
「え、どういうこと?」
「まぁまぁ。お子様にはまだ早いってことよ。」
「なんだよ、どういうことだよっ!!?」
「さて、じゃあ行きますかぁー。」
ファルナはセリカのポニーテールをグッと掴み、自分の肩の位置まで軽々と持ち上げた。
セリカの身体から大量の血が流れ地面に血だまりができる。
「ぐっ!!はな、せ――!」
痛みでセリカは苦渋の表情が浮かべる。
「セリカァ!」
その時、少女の泣き声にも似た声が響いた。ファルナたちがその声を辿れば、複数の人影が集まっている。
「大集合だな♪」
ファルナは再びほくそ笑んだ。
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