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第1章
森のはずれで
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猛々しく振り下ろされた爪に、それは一瞬でただの肉塊へと姿を変えた。ビクンビクンと反射を起こす身体は薄く細い現世への糸に縋りついているようだ。
抉られた傷から生温かい血が周辺に飛び散る。その巨大な牙は器用に毛を毟り、皮を引きずり剥がした。
今まで生命を宿していた肉塊は柔らかくて、弾力のある血生臭い細胞だ。その食感を楽しむかのようにグチュリグチュリと頬張る生物は、サバンナを生き抜く貪欲な肉食動物を彷彿とさせる。
ただ違うのは2本の脚で自身の体を支え、膝を曲げた状態で獲物に食らいつき、さらに鋭利な爪をまるで人間の手のようにしなやかに使いこなしていることだろうか。
一心不乱に目の前の獲物にむしゃぶりつく生物を呆れた様子で見ていた少年は、おおきく欠伸をした。
「ふわぁ~ぁ~。人探しっていうから簡単だと思っていたのに。こんなに広いなんて聞いてねーし。」
辺りをグルリと見渡せば、視覚がマヒしたのではないかと錯覚するぐらい似たような光景が広がっている。歩いているはずなのに同じ場所で足踏みをしている気にさえなってくるのだ。
「っていうか、何でここ端末使えねーの?こっちに来てから探す奴の特徴を聞こうと思ってたのに。どんな奴を探せばいいかなんて聞いてねーよ!」
怒気が混じった少年の声は、しかし頼りなく静かな森に溶けていった。
多分、目的の人物について詳細を聞く機会はあった。その機会は覚えていても、肝心の内容をなに一つ覚えていない。
端末に入っているゲームに夢中だったからだ。そしてここでは勿論誰も返事をしてくれる人はいない。
唯一、目の前にいる生物は相変わらず肉塊に夢中で、口の周りは薄い赤色に染まっていた。次第に苛々が募ってくる。
「お前いつまで食ってんだよっ!さっきだって、勝手に居なくなっちまうしっ!俺の言う事を聞けよっ!!」
しかし生物は、チラリと少年の方を見ただけで再び獲物を食べはじめた。ガリゴリッと音を響かせると、口に残った骨をペッと吐き出す。
その態度にカッとした少年は指をパチンと鳴らす。すると、その生物の額に刻まれた刻印が鈍く光った。
「ウガガァァッァァァッ!!!!!!!!」
強い衝撃を受けたかのように、生物の体が大きく跳ねビクビクッと痙攣を引き起こす。
自然と背筋が伸び、口は開き、顎は上を向いた。口からは獲物の肉片がズルリと落ち、薄いピンク色をした涎が糸を引いて垂れる。
「ウ・・・ア、ァ・・・ァ──」
衝撃の名残による痺れがその生物の動きを止める。しかし、ギロリと動かした憎悪の眼はしっかりと少年を見据えていた。
「ふん、気色悪ぃ。」
そんな視線をものともせず少年は歩き出す。その顔はどこか面白そうだ。
「ほらほら、言う事聞かないとまた痛い思いしちゃうよ~。」
生物に向かってヒラヒラと手を振ると、その中指には細いシルバーの指輪が嵌まっている。その指輪を恨めしそうな目線で捉えた生物は、不本意な態度ながらもその少年の後についていった。
その場には生物が吐き出した臓器だった細胞や骨が転がっている。骨は血や毛が混じりながらも、今までそれの四肢を確かに支えていた証のように誇らしげな白色をしていた。
抉られた傷から生温かい血が周辺に飛び散る。その巨大な牙は器用に毛を毟り、皮を引きずり剥がした。
今まで生命を宿していた肉塊は柔らかくて、弾力のある血生臭い細胞だ。その食感を楽しむかのようにグチュリグチュリと頬張る生物は、サバンナを生き抜く貪欲な肉食動物を彷彿とさせる。
ただ違うのは2本の脚で自身の体を支え、膝を曲げた状態で獲物に食らいつき、さらに鋭利な爪をまるで人間の手のようにしなやかに使いこなしていることだろうか。
一心不乱に目の前の獲物にむしゃぶりつく生物を呆れた様子で見ていた少年は、おおきく欠伸をした。
「ふわぁ~ぁ~。人探しっていうから簡単だと思っていたのに。こんなに広いなんて聞いてねーし。」
辺りをグルリと見渡せば、視覚がマヒしたのではないかと錯覚するぐらい似たような光景が広がっている。歩いているはずなのに同じ場所で足踏みをしている気にさえなってくるのだ。
「っていうか、何でここ端末使えねーの?こっちに来てから探す奴の特徴を聞こうと思ってたのに。どんな奴を探せばいいかなんて聞いてねーよ!」
怒気が混じった少年の声は、しかし頼りなく静かな森に溶けていった。
多分、目的の人物について詳細を聞く機会はあった。その機会は覚えていても、肝心の内容をなに一つ覚えていない。
端末に入っているゲームに夢中だったからだ。そしてここでは勿論誰も返事をしてくれる人はいない。
唯一、目の前にいる生物は相変わらず肉塊に夢中で、口の周りは薄い赤色に染まっていた。次第に苛々が募ってくる。
「お前いつまで食ってんだよっ!さっきだって、勝手に居なくなっちまうしっ!俺の言う事を聞けよっ!!」
しかし生物は、チラリと少年の方を見ただけで再び獲物を食べはじめた。ガリゴリッと音を響かせると、口に残った骨をペッと吐き出す。
その態度にカッとした少年は指をパチンと鳴らす。すると、その生物の額に刻まれた刻印が鈍く光った。
「ウガガァァッァァァッ!!!!!!!!」
強い衝撃を受けたかのように、生物の体が大きく跳ねビクビクッと痙攣を引き起こす。
自然と背筋が伸び、口は開き、顎は上を向いた。口からは獲物の肉片がズルリと落ち、薄いピンク色をした涎が糸を引いて垂れる。
「ウ・・・ア、ァ・・・ァ──」
衝撃の名残による痺れがその生物の動きを止める。しかし、ギロリと動かした憎悪の眼はしっかりと少年を見据えていた。
「ふん、気色悪ぃ。」
そんな視線をものともせず少年は歩き出す。その顔はどこか面白そうだ。
「ほらほら、言う事聞かないとまた痛い思いしちゃうよ~。」
生物に向かってヒラヒラと手を振ると、その中指には細いシルバーの指輪が嵌まっている。その指輪を恨めしそうな目線で捉えた生物は、不本意な態度ながらもその少年の後についていった。
その場には生物が吐き出した臓器だった細胞や骨が転がっている。骨は血や毛が混じりながらも、今までそれの四肢を確かに支えていた証のように誇らしげな白色をしていた。
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