堕ちた令嬢と冥界の契約

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第10話 闇夜の襲撃

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静寂に包まれた森の中、クロエ・ハートフィリアは疲れた体をベッドに横たえ、深い眠りに落ちていた。スケルトンたちを使い、畑作りを進めた一日だった。家の周りの畑は見事な出来栄えで、これからの生活に向けて一歩踏み出したという安堵感が彼女の心に広がっていた。

「これで少しは……安心できるわね……」

疲労もあって、クロエは深い眠りに陥っていた。だが、森の静けさに潜む危険は、彼女が思っていた以上にすぐ近くにあった。

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夜半、暗闇の中で、森を彷徨う一匹のゴブリンがいた。周囲からはぐれてしまったゴブリンは、食料を求めてうろついていた。偶然、森の中に佇むクロエの家を見つけ、その家に忍び込んでいた。薄明かりが漏れ出す家の中には、無防備に眠るクロエがいる。

ゴブリンは鼻をクンクンと鳴らし、獲物を見つけたかのように興奮しながら彼女に近づいた。

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クロエは、何か冷たいものが触れる感覚で目を覚ました。重い眠りから引きずり出されるようにして、体が無理やり意識を取り戻す。だが、その時にはすでに、彼女の体には何か異常が起きていた。目を開けると、ぼんやりとした視界の中で、緑色の異形が自分の上に覆いかぶさっているのが見えた。



「……ゴ、ゴブリン……!」

クロエは驚愕の声を上げたが、その叫びはかすれた。ゴブリンは、彼女が目覚めたことにも気づかず、粗野な手で彼女の衣服を引き裂いていた。無防備に眠っていたクロエは、抵抗する間もなく服を剥ぎ取られ、素肌が冷たい夜風に晒されていった。

「やめて……!」

彼女は必死に叫んで抵抗しようとしたが、ゴブリンは小柄ながらも非常に力強く、クロエの体を押さえつけた。彼女は闇の力を使おうとしたが、目の前の恐怖がその集中を妨げていた。

「このままでは……!」

追い詰められたクロエは、最後の手段として自らの闇の力を呼び覚ました。彼女の持つ不可視化の魔法――それは、彼女の生身の体だけに効果を発揮する。服を着ている状態ではその力は使えないが、今はすでに服は剥ぎ取られていた。

「消えなさい……!」

クロエは苦しげに囁きながら、全身に闇の力を集中させた。次の瞬間、彼女の体が薄い闇のベールに包まれ、姿が消えた。ゴブリンは、突然消えた彼女に驚いて目を見開き、辺りを見回した。

「……よし……」

クロエは不可視化された状態で、ゴブリンの足元から静かに逃れた。彼女は素早く部屋の隅に身を潜め、呼吸を整えた。ゴブリンは混乱しながらクロエの姿を探していたが、彼女の姿は完全に消えている。

「今なら……!」

クロエは再び集中し、ペンダントに手を触れた。彼女はスケルトンを召喚する準備を整え、冷静に呪文を唱えた。

「来なさい、スケルトン!」

彼女の声と共に、青白い光が部屋を照らし、スケルトンたちが現れた。ゴブリンはその異常事態に驚き、叫び声を上げながら後退した。

「これで終わりよ……!」

クロエは隠れたまま、スケルトンたちに命令を下した。スケルトンたちは無言でゴブリンに向かい、骨の腕を振り上げて襲いかかった。ゴブリンは慌てて応戦しようとしたが、スケルトンたちは圧倒的な数で彼を囲み、次々と攻撃を加えていった。

ゴブリンはスケルトンたちの攻撃に必死で抵抗しようとするも、その力はクロエの闇の力の前では無力だった。やがて、スケルトンたちの打撃が決定打となり、ゴブリンはその場に倒れ込んだ。

「……ふぅ……」

クロエはようやく姿を現し、倒れたゴブリンを見つめた。恐怖に震えていた体が少しずつ落ち着いていく。全裸のまま冷たい夜風に当たりながら、彼女は深く息をついた。

「危なかった……」

クロエはスケルトンたちを冥界に戻し、急いで破れた服を拾い上げた。手早く身に着けながら、彼女は今夜の出来事がどれだけ危険だったかを改めて痛感した。自分の家が完全に安全な場所ではないという現実が、クロエの心を締めつけた。

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クロエは、再び静かになった森の家で一人、疲れ果てた体を椅子に預けた。不可視化の力とスケルトンの召喚で何とか乗り切ったものの、あのゴブリンに対してもう少し早く反応していれば――そんな後悔が心に渦巻いていた。

「もっと強くならないと……」

彼女は静かに呟いた。森の中での隠れ家生活も、決して安全ではない。これから先も、いつ何が襲ってくるかわからない。今の自分では、完全に守りきれないことを実感した夜だった。

「これ以上、無防備ではいられないわ……」

クロエは新たな決意を胸に、森の家を守るためのさらなる対策を考えることにした。自分の力を磨き、どんな脅威にも対処できる存在になるために。
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