堕ちた令嬢と冥界の契約

第9話 スケルトンたちと畑作り

クロエ・ハートフィリアは、森の中の静かな隠れ家に戻りながら、次の計画を練っていた。冒険者ギルドでの初めての依頼は、下水道清掃という地味で汚れる仕事だったが、スケルトンを使って無事にこなすことができた。今後もこうした雑務は、スケルトンに任せれば良い。だが、生活する上で、もっと安定した基盤が必要だと感じていた。

「食べ物もお金も、自給自足できればもっと安心よね……」

クロエは自分の森の家を見つめながら、ふと思いついた。森の広大な敷地は、十分に畑を作る余裕がある。今は報酬で食糧を買っているが、いつかは持ち金が尽きる可能性もある。自給自足の体制を整え、家の周りに畑を作れば、生活も安定するだろう。

「そうね、スケルトンたちに畑作りを手伝わせれば、すぐにできるはず」

クロエは決断を下し、スケルトンを使って畑を作ることを計画した。普通ならば大変な重労働だが、彼女には感情を持たず、休むことなく働き続けるスケルトンたちがいる。彼らなら、地面を耕し、畝を作る作業も効率的に進められるだろう。

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翌朝、クロエはスケルトンたちを召喚する準備を整えた。静かな森の中、木々に囲まれた彼女の家の前には、十分なスペースが広がっている。ここに畑を作れば、食料を自給できるようになり、彼女の生活は安定するはずだ。

「来なさい、スケルトン」

クロエが冥界とのつながりを呼び起こすと、青白い光が瞬き、スケルトンたちが彼女の前に現れた。無表情で、ただ命令を待つ彼らは、何の疑問も抱かずにクロエの指示を待っていた。

「この場所に畑を作るわ。土を耕し、種を植える準備をしてちょうだい」

クロエが命令すると、スケルトンたちは即座に動き出した。彼女はあらかじめ用意していた農具――スコップやクワをスケルトンたちに渡し、それぞれに作業を割り振った。

スケルトンたちは無言で動き始め、地面を耕す作業を始めた。土を掘り返し、石を取り除き、固まった地面を柔らかくしていく。その姿はどこか機械的で、感情もなく、ただ作業に集中しているようだった。

「いい感じね……」

クロエは彼らの働きを見守りながら、手伝うことなく静かに立っていた。スケルトンたちは一切の疲労を見せず、黙々と畑作りに取り組んでいる。彼らがいることで、クロエは自分の体力を消耗せずに済む。これこそが、彼女が闇の力を活用して生活を安定させるための方法だった。

「まるで、農夫みたいね……」

クロエは冗談めかして呟いたが、実際にはスケルトンたちは彼女にとって非常に頼りになる存在だった。土を耕し、畝を作り、まっすぐに並べられた区画が次第に形を成していく。

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夕方になる頃には、スケルトンたちの作業はほとんど完了していた。広々とした畑にはきれいに畝が作られ、すぐにでも種を植えられる状態になっている。クロエはその出来栄えを見て満足げに頷いた。

「これで、食料を自給できるわね」

クロエはスケルトンたちを冥界に戻し、静かに一人になった畑を見つめた。少し時間はかかるだろうが、この畑で育てた作物が実れば、彼女は日々の食料を安定して手に入れることができるだろう。森の静けさの中で、一人で自給自足の生活を送り、冒険者としても力をつけていく――それが彼女の理想だった。

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その夜、クロエは自分の畑を眺めながら、これからのことを考えていた。生活の基盤ができ始めた今、次に考えるべきは自分の力の向上だ。スケルトンをうまく活用することで、雑務や単純労働は乗り越えられるが、戦闘や冒険においてはもっと強力な力が必要になるだろう。

「もっと……強くならないと」

彼女は静かにそう呟いた。自分の力を完全に使いこなし、どんな敵にも負けない存在になるためには、まだまだ道のりは長い。だが、この畑を作ったことで、少しだけ前進した気がした。

「よし、次は種を植えて、あとは少しずつ育てていくだけ」

クロエは森の静寂の中で、小さな自分の拠点が形作られていくのを感じていた。スケルトンたちと共に、彼女は少しずつではあるが、自分自身の未来を築き始めているのだ。

これからどんな試練が待ち受けていようとも、クロエは自分の力を信じて進んでいく決意を固めていた。