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第30話 闇市
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港町カナンは、観光や漁業だけで無く交易港としての機能も有しており、日々、多くの貿易船が立ち寄り、様々な交易品が取引されていた。
その一方で、海賊や奴隷商人などの犯罪者も多く、日常的に人攫いや奴隷競売が行われている闇の側面もある。
港に近い街の一画には、そんな闇商売を生業とする者たちが集まる闇市が存在する。
そこでは、人身売買から盗品や違法薬物の取引まで、ありとあらゆる犯罪行為が黙認されていた。
闇市が並ぶ通りは昼間でも薄暗く、海賊や脛に傷のあるごろつきは勿論、奴隷を鎖で引き連れて歩く商人や路上に座り込む薬物中毒者等が転がっており、危険な雰囲気が漂っている。
そんな闇市の奥深く、一際暗い場所に大きなテント型の店舗があった。
店の中には、大型の獣が入れそうな檻が幾つも設置されており、檻の中には、人間だけで無く、魔物や亜人種も閉じ込められている。
不衛生な血生臭い部屋には拘束具や拷問器具が至る所に転がっており、日常的に調教がされている事が伺える。
そこは奴隷商人のレイドが経営する店だった。
レイドは港町カナンでは名の知れた奴隷商人であり、人間や亜人種の奴隷だけで無く、冒険者ギルドと取引をして、捕獲した魔物を従魔として売り捌いていた。
レイドの専門は調教であり、かつて城の地下牢で拷問官として働いていた時に学んだ知識を活かして、奴隷の心を折る事を得意としていた。
しかし、レイドは慎重で疑り深い性格をしており、調教だけでは安心できず、違法な魔術を専門に取り扱っている呪術師と専属契約を結んでいた。
奴隷や魔物を強力な呪術で隷属させ、絶対に主人に逆らえない従順な奴隷や従魔を売ることで、闇の世界での信用を築いて来た。
闇の世界で生きて行く為に必要なのは、信頼だ。
いつ裏切られるか分からない無法者達との取引をして行く上で、信頼を得る事は非常に難しく、それ故に価値がある。
しかし、それ以上に必要な力がある。
それは、危険を嗅ぎ分ける能力だ。
ヤバい臭いを嗅ぎ分け、危険を回避する事が生き残る上で、何より重要だった。
そんなレイドの直感が警報を鳴らしていた。
店に入って来たのは、2人の美少女だった。
闇市には似つかわしく無い一際異質な2人の少女の来店に、レイドは目を細める。
前を歩くのは、茶髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ獣人の娘で、頭とお尻から犬耳とフサフサな尻尾を生やしていた。
冒険者か?
動きやすい革鎧に身を包んでおり、堂々とした雰囲気と表情から闇の世界の住人だと分かった。
この街では亜人種はそこまで珍しくは無いが、美しいプロポーションと顔付きから、奴隷にして売れば、かなりの値が付くだろう。
ついつい人を値踏みしてしまうのは、レイドの職業病の様なモノだ。
もう1人は・・・ほほぅ!
獣娘の背後にいたのは、美しい黒髪に珍しい黄金色の瞳を持つ美少女だった。
10代半ばといったところだろうか?
整った顔立ちをしているが、まだ幼さが残っている。
艶のある髪質にきめ細かな白い肌、立ち居振る舞いや姿勢から感じられる優雅さは隠しきれておらず、高貴な血筋の娘である事は一目で分かった。
黒いパーカーにホットパンツ姿の美少女は、不安そうに周囲をキョロキョロと警戒しており、嫌々ながら連れて来られた様子だ。
家出又は誘拐された貴族令嬢か?
令嬢の両手は見えない魔術の枷で拘束されており、逃げられない様に獣娘が風の手綱を引いている事が分かった。
恐らく、誘拐した貴族令嬢を売りに来たのだろう。
これは・・・高く売れるぞ!
レイドは、強欲ないやらしい笑みを浮かべた。
貴族令嬢の奴隷というだけでも希少性が高く、高値でも買いたがる変態は多い。
それが、若く、美しい一級品の美少女ともなれば、値段は更に跳ね上がるだろう。
10代なら調教には、最適な年齢であり、何でも言うことを聞く従順な奴隷に仕上げる事ができる。
何より、あの美しい令嬢を調教するのが、今から愉しみで仕方がない。
我儘で生意気そうな貴族令嬢がどんな顔で泣くのだろうか?
美しい悲鳴を早く聴きたい。
そんな妄想に耽りながら、レイドは獣娘に歩み寄る。
「本日はどの様なご要望で?」
強面を髭面で隠しながら、精一杯の営業スマイルで接客する。
答えは分かり切っていた・・・はずだった。
「従魔契約を依頼しに来たニャ!」
予想外な獣娘の回答にレイドは困惑した。
従魔契約を依頼される事は珍しい事では無いが、肝心の従魔にする為の魔物が見当たらない。
まさか、人間相手に従魔契約を使うわけが無いと考えたレイドは、獣娘が従魔を購入しに来たのだと解釈した。
「なるほど・・・従魔をお買い求めでしたら、こちらの奥に準備が御座いますが、いかが致しましょうか?」
「違うニャ!このペットを従魔にするニャ!」
そう言って、獣娘が突き出したのは、黒髪の令嬢だった。
少女も驚いている様で、顔を青ざめさせながら、必死に首を横に振って拒絶反応を示している。
声を封じられているのか?
どうやら魔術で声を出せなくされている様で、涙目で何かを訴えているが、何も聴こえない。
しかし、レイド自身も驚きを隠せずにいた。
従魔契約は、隷属契約とは違い直接魂に刻み込む魔術であり、一度契約すると、2度と解除する事は出来なくなる。
永久的に自我と自由を主人に奪われる非人道的な契約であり、支配権の譲渡も出来ない為、人間に使われる事は殆ど無い。
「本当に宜しいので?」
従魔契約を結べば譲渡不可となり、奴隷としては売り物にならなくなる。
売れば数億イエンにはなるであろう希少な奴隷をドブに捨てる様なモノだ。
「やるニャ!」
しかし、獣娘の有無を言わせない威圧感に、レイドは背中から脂汗が流れ落ちる。
この雌犬は危険だ。
笑っている様に見えても、目は笑っていない。
まるで裸で猛獣の前に差し出されたかの様なプレッシャーだ。
「かしこまりました」
この娘に逆らってはいけない。
レイドは自身の直感を信じて、頷いた。
その一方で、海賊や奴隷商人などの犯罪者も多く、日常的に人攫いや奴隷競売が行われている闇の側面もある。
港に近い街の一画には、そんな闇商売を生業とする者たちが集まる闇市が存在する。
そこでは、人身売買から盗品や違法薬物の取引まで、ありとあらゆる犯罪行為が黙認されていた。
闇市が並ぶ通りは昼間でも薄暗く、海賊や脛に傷のあるごろつきは勿論、奴隷を鎖で引き連れて歩く商人や路上に座り込む薬物中毒者等が転がっており、危険な雰囲気が漂っている。
そんな闇市の奥深く、一際暗い場所に大きなテント型の店舗があった。
店の中には、大型の獣が入れそうな檻が幾つも設置されており、檻の中には、人間だけで無く、魔物や亜人種も閉じ込められている。
不衛生な血生臭い部屋には拘束具や拷問器具が至る所に転がっており、日常的に調教がされている事が伺える。
そこは奴隷商人のレイドが経営する店だった。
レイドは港町カナンでは名の知れた奴隷商人であり、人間や亜人種の奴隷だけで無く、冒険者ギルドと取引をして、捕獲した魔物を従魔として売り捌いていた。
レイドの専門は調教であり、かつて城の地下牢で拷問官として働いていた時に学んだ知識を活かして、奴隷の心を折る事を得意としていた。
しかし、レイドは慎重で疑り深い性格をしており、調教だけでは安心できず、違法な魔術を専門に取り扱っている呪術師と専属契約を結んでいた。
奴隷や魔物を強力な呪術で隷属させ、絶対に主人に逆らえない従順な奴隷や従魔を売ることで、闇の世界での信用を築いて来た。
闇の世界で生きて行く為に必要なのは、信頼だ。
いつ裏切られるか分からない無法者達との取引をして行く上で、信頼を得る事は非常に難しく、それ故に価値がある。
しかし、それ以上に必要な力がある。
それは、危険を嗅ぎ分ける能力だ。
ヤバい臭いを嗅ぎ分け、危険を回避する事が生き残る上で、何より重要だった。
そんなレイドの直感が警報を鳴らしていた。
店に入って来たのは、2人の美少女だった。
闇市には似つかわしく無い一際異質な2人の少女の来店に、レイドは目を細める。
前を歩くのは、茶髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ獣人の娘で、頭とお尻から犬耳とフサフサな尻尾を生やしていた。
冒険者か?
動きやすい革鎧に身を包んでおり、堂々とした雰囲気と表情から闇の世界の住人だと分かった。
この街では亜人種はそこまで珍しくは無いが、美しいプロポーションと顔付きから、奴隷にして売れば、かなりの値が付くだろう。
ついつい人を値踏みしてしまうのは、レイドの職業病の様なモノだ。
もう1人は・・・ほほぅ!
獣娘の背後にいたのは、美しい黒髪に珍しい黄金色の瞳を持つ美少女だった。
10代半ばといったところだろうか?
整った顔立ちをしているが、まだ幼さが残っている。
艶のある髪質にきめ細かな白い肌、立ち居振る舞いや姿勢から感じられる優雅さは隠しきれておらず、高貴な血筋の娘である事は一目で分かった。
黒いパーカーにホットパンツ姿の美少女は、不安そうに周囲をキョロキョロと警戒しており、嫌々ながら連れて来られた様子だ。
家出又は誘拐された貴族令嬢か?
令嬢の両手は見えない魔術の枷で拘束されており、逃げられない様に獣娘が風の手綱を引いている事が分かった。
恐らく、誘拐した貴族令嬢を売りに来たのだろう。
これは・・・高く売れるぞ!
レイドは、強欲ないやらしい笑みを浮かべた。
貴族令嬢の奴隷というだけでも希少性が高く、高値でも買いたがる変態は多い。
それが、若く、美しい一級品の美少女ともなれば、値段は更に跳ね上がるだろう。
10代なら調教には、最適な年齢であり、何でも言うことを聞く従順な奴隷に仕上げる事ができる。
何より、あの美しい令嬢を調教するのが、今から愉しみで仕方がない。
我儘で生意気そうな貴族令嬢がどんな顔で泣くのだろうか?
美しい悲鳴を早く聴きたい。
そんな妄想に耽りながら、レイドは獣娘に歩み寄る。
「本日はどの様なご要望で?」
強面を髭面で隠しながら、精一杯の営業スマイルで接客する。
答えは分かり切っていた・・・はずだった。
「従魔契約を依頼しに来たニャ!」
予想外な獣娘の回答にレイドは困惑した。
従魔契約を依頼される事は珍しい事では無いが、肝心の従魔にする為の魔物が見当たらない。
まさか、人間相手に従魔契約を使うわけが無いと考えたレイドは、獣娘が従魔を購入しに来たのだと解釈した。
「なるほど・・・従魔をお買い求めでしたら、こちらの奥に準備が御座いますが、いかが致しましょうか?」
「違うニャ!このペットを従魔にするニャ!」
そう言って、獣娘が突き出したのは、黒髪の令嬢だった。
少女も驚いている様で、顔を青ざめさせながら、必死に首を横に振って拒絶反応を示している。
声を封じられているのか?
どうやら魔術で声を出せなくされている様で、涙目で何かを訴えているが、何も聴こえない。
しかし、レイド自身も驚きを隠せずにいた。
従魔契約は、隷属契約とは違い直接魂に刻み込む魔術であり、一度契約すると、2度と解除する事は出来なくなる。
永久的に自我と自由を主人に奪われる非人道的な契約であり、支配権の譲渡も出来ない為、人間に使われる事は殆ど無い。
「本当に宜しいので?」
従魔契約を結べば譲渡不可となり、奴隷としては売り物にならなくなる。
売れば数億イエンにはなるであろう希少な奴隷をドブに捨てる様なモノだ。
「やるニャ!」
しかし、獣娘の有無を言わせない威圧感に、レイドは背中から脂汗が流れ落ちる。
この雌犬は危険だ。
笑っている様に見えても、目は笑っていない。
まるで裸で猛獣の前に差し出されたかの様なプレッシャーだ。
「かしこまりました」
この娘に逆らってはいけない。
レイドは自身の直感を信じて、頷いた。
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