8 / 24
第8話 決別
しおりを挟む
クロエは、光属性の魔力を右手に込めて、浄化の光を衣服に当てていく。
すると、泥や汗で汚れていたワイシャツは、見る見るうちに真っ白で綺麗になり、スカートも新品の様に清潔になった。
「うわぁ!新品みたい!」
魔術学園で魔術の基礎は学んだが、貴族として生きていく上で、魔術を必要とする機会は殆ど無かった。
「浄化魔術は重宝しそうね」
まさか、使い道が殆ど無いと思っていた浄化がこんなに便利な魔術だったとは想像もしていなかった。
クロエは、ついでに自分の身体の汚れも浄化して、宿屋を後にした。
「よし!今日も仕事を頑張って金持ちになるぞ!」
気合いを入れ直したクロエは、冒険者ギルドに向かっている途中、道に落ちている新聞に目を奪われた。
「これって・・・私の記事?」
落ちていたのは、昨日の夕刊で、「ハートフィリア家の悪女クロエ・ハートフィリアがついに断罪された」と大きく見出しに書かれていた。
拾い上げて内容を読んでみると、婚約破棄された事や貴族の資格を剥奪されて平民になった事まで事細かに書かれていた。
編集者の偏見もかなり込められており、遂に婚約者の第一王子に見限られただの悪女に罰が下っただのと好き勝手に書かれている。
「・・・何ですって!?」
記事の続きを読むと、シオン殿下が自ら率先して、婚約者であるクロエ・ハートフィリアを断罪する様に王命を出したと記載されていた。
今回の断罪は、第二王子や王妃の策略によるものだと思っていたクロエは動揺する。
まさか、今まで盾として守ってきた婚約者が、庇うどころか、率先して自分を断罪したとは思ってもいなかった。
「私は・・・一体、何の為に頑張って来たの?」
どれだけ周りに嫌われても、嫌がらせを受けても、婚約者だけは自分を信じてくれていると思っていた。
自分の言葉を信じてくれない家族も裏切り者の婚約者も、もうどうでも良い。
クロエの中で、一つの恋が終わりを告げた。
「私は・・・私の道を行くわ」
クロエは新聞を破り捨てると、冒険者ギルドに行く前に古着屋に向かう事にした。
古着屋で着ていたワイシャツやスカートを売り、動きやすくて顔を隠せる黒いフード付きパーカーとホットパンツを購入した。
新聞には、クロエの顔写真が何枚も載せられており、元公爵令嬢のクロエが冒険者をしている事が新聞記者に嗅ぎつけられたら、直ぐに記事のネタにされてしまう。
悪目立ちしない為に、他の冒険者にも可能な限り身元がバレない様に素顔は出来るだけ隠す事にした。
それから1週間が経過した。
クロエは、倉庫の片付けや荷物運びの依頼を繰り返して小銭を稼いでいた。
少しでも節約する為に、相変わらず同じ汚い宿屋で生活をしているが、浄化魔術で部屋を清潔にしたら、少しはマシになった。
毎日使うことで、身体強化の魔術も次第に使い熟せる様になってきたし、身体も鍛えられて来た気がした。
身体強化をして、身体の筋肉を限界以上まで使用する事で筋肉が損傷し、治癒魔術で自己治癒力を高めて回復を早めるので、短期間で効率的に筋肉が成長していた。
「今日は、どの依頼にしようかな?」
クロエは、いつもの様に朝早くから依頼掲示板を眺めていた。
依頼の受注は早い者勝ちであり、朝が一番依頼数が充実している。
それに、朝一だと酔っ払いも少なく、他の冒険者と顔を合わせなくて良いので、一石二鳥だった。
クロエは、ふと一枚の依頼書を剥がした。
「下水道掃除か・・・浄化魔術でいけんじゃない?」
浄化の光を使えば、効率的に汚れを消す事ができる。
下水道掃除は、最も嫌厭される依頼の一つでもあり、冒険者ですら誰も受けたがらない仕事だ。
しかし、それだけ報酬は高く設定されており、日給は5万イエンで、一区画清掃完了すると追加報酬で5万イエン出る。
「試してみる価値はありそうね!」
クロエは、下水道掃除の依頼を受注して、早速、現場へ向かった。
「・・・酷い臭いね」
地下の下水道に潜ったクロエは、早速後悔していた。
長らく誰も掃除をしていなかったのか、床だけじゃなく、壁や天井も糞尿やヘドロがこびり付いており、悪臭で鼻が曲がりそうだ。
全体的に湿気でジメジメしており、床は汚水が流れていて、ヌルヌルする。
壁に衣服や腕が触れる度にヌチョッとした汚物が付き、全身の毛が逆立つ。
「最悪ね!さっさと浄化して終わらせてやるわ!」
クロエは、両手に魔力を込めると、浄化の光を放った。
壁や床にこびり付いた汚物が綺麗に剥がれ落ちて消滅していく光景は、何とも言えない気持ち良さがあった。
「よーし!この調子で稼ぐわょオォッ!?」
天井を浄化しながら歩いていたクロエは、足を踏み外して、深い溝に落ちた。
当然、溝の中は糞尿と汚水で満たされており、膝上まで浸かってしまったクロエは、糞尿塗れの状態で硬直していた。
靴の中まで糞尿が入り込み、全身から悪臭がする。
「・・・最悪」
クロエは、涙目で呟いた。
すると、泥や汗で汚れていたワイシャツは、見る見るうちに真っ白で綺麗になり、スカートも新品の様に清潔になった。
「うわぁ!新品みたい!」
魔術学園で魔術の基礎は学んだが、貴族として生きていく上で、魔術を必要とする機会は殆ど無かった。
「浄化魔術は重宝しそうね」
まさか、使い道が殆ど無いと思っていた浄化がこんなに便利な魔術だったとは想像もしていなかった。
クロエは、ついでに自分の身体の汚れも浄化して、宿屋を後にした。
「よし!今日も仕事を頑張って金持ちになるぞ!」
気合いを入れ直したクロエは、冒険者ギルドに向かっている途中、道に落ちている新聞に目を奪われた。
「これって・・・私の記事?」
落ちていたのは、昨日の夕刊で、「ハートフィリア家の悪女クロエ・ハートフィリアがついに断罪された」と大きく見出しに書かれていた。
拾い上げて内容を読んでみると、婚約破棄された事や貴族の資格を剥奪されて平民になった事まで事細かに書かれていた。
編集者の偏見もかなり込められており、遂に婚約者の第一王子に見限られただの悪女に罰が下っただのと好き勝手に書かれている。
「・・・何ですって!?」
記事の続きを読むと、シオン殿下が自ら率先して、婚約者であるクロエ・ハートフィリアを断罪する様に王命を出したと記載されていた。
今回の断罪は、第二王子や王妃の策略によるものだと思っていたクロエは動揺する。
まさか、今まで盾として守ってきた婚約者が、庇うどころか、率先して自分を断罪したとは思ってもいなかった。
「私は・・・一体、何の為に頑張って来たの?」
どれだけ周りに嫌われても、嫌がらせを受けても、婚約者だけは自分を信じてくれていると思っていた。
自分の言葉を信じてくれない家族も裏切り者の婚約者も、もうどうでも良い。
クロエの中で、一つの恋が終わりを告げた。
「私は・・・私の道を行くわ」
クロエは新聞を破り捨てると、冒険者ギルドに行く前に古着屋に向かう事にした。
古着屋で着ていたワイシャツやスカートを売り、動きやすくて顔を隠せる黒いフード付きパーカーとホットパンツを購入した。
新聞には、クロエの顔写真が何枚も載せられており、元公爵令嬢のクロエが冒険者をしている事が新聞記者に嗅ぎつけられたら、直ぐに記事のネタにされてしまう。
悪目立ちしない為に、他の冒険者にも可能な限り身元がバレない様に素顔は出来るだけ隠す事にした。
それから1週間が経過した。
クロエは、倉庫の片付けや荷物運びの依頼を繰り返して小銭を稼いでいた。
少しでも節約する為に、相変わらず同じ汚い宿屋で生活をしているが、浄化魔術で部屋を清潔にしたら、少しはマシになった。
毎日使うことで、身体強化の魔術も次第に使い熟せる様になってきたし、身体も鍛えられて来た気がした。
身体強化をして、身体の筋肉を限界以上まで使用する事で筋肉が損傷し、治癒魔術で自己治癒力を高めて回復を早めるので、短期間で効率的に筋肉が成長していた。
「今日は、どの依頼にしようかな?」
クロエは、いつもの様に朝早くから依頼掲示板を眺めていた。
依頼の受注は早い者勝ちであり、朝が一番依頼数が充実している。
それに、朝一だと酔っ払いも少なく、他の冒険者と顔を合わせなくて良いので、一石二鳥だった。
クロエは、ふと一枚の依頼書を剥がした。
「下水道掃除か・・・浄化魔術でいけんじゃない?」
浄化の光を使えば、効率的に汚れを消す事ができる。
下水道掃除は、最も嫌厭される依頼の一つでもあり、冒険者ですら誰も受けたがらない仕事だ。
しかし、それだけ報酬は高く設定されており、日給は5万イエンで、一区画清掃完了すると追加報酬で5万イエン出る。
「試してみる価値はありそうね!」
クロエは、下水道掃除の依頼を受注して、早速、現場へ向かった。
「・・・酷い臭いね」
地下の下水道に潜ったクロエは、早速後悔していた。
長らく誰も掃除をしていなかったのか、床だけじゃなく、壁や天井も糞尿やヘドロがこびり付いており、悪臭で鼻が曲がりそうだ。
全体的に湿気でジメジメしており、床は汚水が流れていて、ヌルヌルする。
壁に衣服や腕が触れる度にヌチョッとした汚物が付き、全身の毛が逆立つ。
「最悪ね!さっさと浄化して終わらせてやるわ!」
クロエは、両手に魔力を込めると、浄化の光を放った。
壁や床にこびり付いた汚物が綺麗に剥がれ落ちて消滅していく光景は、何とも言えない気持ち良さがあった。
「よーし!この調子で稼ぐわょオォッ!?」
天井を浄化しながら歩いていたクロエは、足を踏み外して、深い溝に落ちた。
当然、溝の中は糞尿と汚水で満たされており、膝上まで浸かってしまったクロエは、糞尿塗れの状態で硬直していた。
靴の中まで糞尿が入り込み、全身から悪臭がする。
「・・・最悪」
クロエは、涙目で呟いた。
21
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる