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第8話 決別
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クロエは、光属性の魔力を右手に込めて、浄化の光を衣服に当てていく。
すると、泥や汗で汚れていたワイシャツは、見る見るうちに真っ白で綺麗になり、スカートも新品の様に清潔になった。
「うわぁ!新品みたい!」
魔術学園で魔術の基礎は学んだが、貴族として生きていく上で、魔術を必要とする機会は殆ど無かった。
「浄化魔術は重宝しそうね」
まさか、使い道が殆ど無いと思っていた浄化がこんなに便利な魔術だったとは想像もしていなかった。
クロエは、ついでに自分の身体の汚れも浄化して、宿屋を後にした。
「よし!今日も仕事を頑張って金持ちになるぞ!」
気合いを入れ直したクロエは、冒険者ギルドに向かっている途中、道に落ちている新聞に目を奪われた。
「これって・・・私の記事?」
落ちていたのは、昨日の夕刊で、「ハートフィリア家の悪女クロエ・ハートフィリアがついに断罪された」と大きく見出しに書かれていた。
拾い上げて内容を読んでみると、婚約破棄された事や貴族の資格を剥奪されて平民になった事まで事細かに書かれていた。
編集者の偏見もかなり込められており、遂に婚約者の第一王子に見限られただの悪女に罰が下っただのと好き勝手に書かれている。
「・・・何ですって!?」
記事の続きを読むと、シオン殿下が自ら率先して、婚約者であるクロエ・ハートフィリアを断罪する様に王命を出したと記載されていた。
今回の断罪は、第二王子や王妃の策略によるものだと思っていたクロエは動揺する。
まさか、今まで盾として守ってきた婚約者が、庇うどころか、率先して自分を断罪したとは思ってもいなかった。
「私は・・・一体、何の為に頑張って来たの?」
どれだけ周りに嫌われても、嫌がらせを受けても、婚約者だけは自分を信じてくれていると思っていた。
自分の言葉を信じてくれない家族も裏切り者の婚約者も、もうどうでも良い。
クロエの中で、一つの恋が終わりを告げた。
「私は・・・私の道を行くわ」
クロエは新聞を破り捨てると、冒険者ギルドに行く前に古着屋に向かう事にした。
古着屋で着ていたワイシャツやスカートを売り、動きやすくて顔を隠せる黒いフード付きパーカーとホットパンツを購入した。
新聞には、クロエの顔写真が何枚も載せられており、元公爵令嬢のクロエが冒険者をしている事が新聞記者に嗅ぎつけられたら、直ぐに記事のネタにされてしまう。
悪目立ちしない為に、他の冒険者にも可能な限り身元がバレない様に素顔は出来るだけ隠す事にした。
それから1週間が経過した。
クロエは、倉庫の片付けや荷物運びの依頼を繰り返して小銭を稼いでいた。
少しでも節約する為に、相変わらず同じ汚い宿屋で生活をしているが、浄化魔術で部屋を清潔にしたら、少しはマシになった。
毎日使うことで、身体強化の魔術も次第に使い熟せる様になってきたし、身体も鍛えられて来た気がした。
身体強化をして、身体の筋肉を限界以上まで使用する事で筋肉が損傷し、治癒魔術で自己治癒力を高めて回復を早めるので、短期間で効率的に筋肉が成長していた。
「今日は、どの依頼にしようかな?」
クロエは、いつもの様に朝早くから依頼掲示板を眺めていた。
依頼の受注は早い者勝ちであり、朝が一番依頼数が充実している。
それに、朝一だと酔っ払いも少なく、他の冒険者と顔を合わせなくて良いので、一石二鳥だった。
クロエは、ふと一枚の依頼書を剥がした。
「下水道掃除か・・・浄化魔術でいけんじゃない?」
浄化の光を使えば、効率的に汚れを消す事ができる。
下水道掃除は、最も嫌厭される依頼の一つでもあり、冒険者ですら誰も受けたがらない仕事だ。
しかし、それだけ報酬は高く設定されており、日給は5万イエンで、一区画清掃完了すると追加報酬で5万イエン出る。
「試してみる価値はありそうね!」
クロエは、下水道掃除の依頼を受注して、早速、現場へ向かった。
「・・・酷い臭いね」
地下の下水道に潜ったクロエは、早速後悔していた。
長らく誰も掃除をしていなかったのか、床だけじゃなく、壁や天井も糞尿やヘドロがこびり付いており、悪臭で鼻が曲がりそうだ。
全体的に湿気でジメジメしており、床は汚水が流れていて、ヌルヌルする。
壁に衣服や腕が触れる度にヌチョッとした汚物が付き、全身の毛が逆立つ。
「最悪ね!さっさと浄化して終わらせてやるわ!」
クロエは、両手に魔力を込めると、浄化の光を放った。
壁や床にこびり付いた汚物が綺麗に剥がれ落ちて消滅していく光景は、何とも言えない気持ち良さがあった。
「よーし!この調子で稼ぐわょオォッ!?」
天井を浄化しながら歩いていたクロエは、足を踏み外して、深い溝に落ちた。
当然、溝の中は糞尿と汚水で満たされており、膝上まで浸かってしまったクロエは、糞尿塗れの状態で硬直していた。
靴の中まで糞尿が入り込み、全身から悪臭がする。
「・・・最悪」
クロエは、涙目で呟いた。
すると、泥や汗で汚れていたワイシャツは、見る見るうちに真っ白で綺麗になり、スカートも新品の様に清潔になった。
「うわぁ!新品みたい!」
魔術学園で魔術の基礎は学んだが、貴族として生きていく上で、魔術を必要とする機会は殆ど無かった。
「浄化魔術は重宝しそうね」
まさか、使い道が殆ど無いと思っていた浄化がこんなに便利な魔術だったとは想像もしていなかった。
クロエは、ついでに自分の身体の汚れも浄化して、宿屋を後にした。
「よし!今日も仕事を頑張って金持ちになるぞ!」
気合いを入れ直したクロエは、冒険者ギルドに向かっている途中、道に落ちている新聞に目を奪われた。
「これって・・・私の記事?」
落ちていたのは、昨日の夕刊で、「ハートフィリア家の悪女クロエ・ハートフィリアがついに断罪された」と大きく見出しに書かれていた。
拾い上げて内容を読んでみると、婚約破棄された事や貴族の資格を剥奪されて平民になった事まで事細かに書かれていた。
編集者の偏見もかなり込められており、遂に婚約者の第一王子に見限られただの悪女に罰が下っただのと好き勝手に書かれている。
「・・・何ですって!?」
記事の続きを読むと、シオン殿下が自ら率先して、婚約者であるクロエ・ハートフィリアを断罪する様に王命を出したと記載されていた。
今回の断罪は、第二王子や王妃の策略によるものだと思っていたクロエは動揺する。
まさか、今まで盾として守ってきた婚約者が、庇うどころか、率先して自分を断罪したとは思ってもいなかった。
「私は・・・一体、何の為に頑張って来たの?」
どれだけ周りに嫌われても、嫌がらせを受けても、婚約者だけは自分を信じてくれていると思っていた。
自分の言葉を信じてくれない家族も裏切り者の婚約者も、もうどうでも良い。
クロエの中で、一つの恋が終わりを告げた。
「私は・・・私の道を行くわ」
クロエは新聞を破り捨てると、冒険者ギルドに行く前に古着屋に向かう事にした。
古着屋で着ていたワイシャツやスカートを売り、動きやすくて顔を隠せる黒いフード付きパーカーとホットパンツを購入した。
新聞には、クロエの顔写真が何枚も載せられており、元公爵令嬢のクロエが冒険者をしている事が新聞記者に嗅ぎつけられたら、直ぐに記事のネタにされてしまう。
悪目立ちしない為に、他の冒険者にも可能な限り身元がバレない様に素顔は出来るだけ隠す事にした。
それから1週間が経過した。
クロエは、倉庫の片付けや荷物運びの依頼を繰り返して小銭を稼いでいた。
少しでも節約する為に、相変わらず同じ汚い宿屋で生活をしているが、浄化魔術で部屋を清潔にしたら、少しはマシになった。
毎日使うことで、身体強化の魔術も次第に使い熟せる様になってきたし、身体も鍛えられて来た気がした。
身体強化をして、身体の筋肉を限界以上まで使用する事で筋肉が損傷し、治癒魔術で自己治癒力を高めて回復を早めるので、短期間で効率的に筋肉が成長していた。
「今日は、どの依頼にしようかな?」
クロエは、いつもの様に朝早くから依頼掲示板を眺めていた。
依頼の受注は早い者勝ちであり、朝が一番依頼数が充実している。
それに、朝一だと酔っ払いも少なく、他の冒険者と顔を合わせなくて良いので、一石二鳥だった。
クロエは、ふと一枚の依頼書を剥がした。
「下水道掃除か・・・浄化魔術でいけんじゃない?」
浄化の光を使えば、効率的に汚れを消す事ができる。
下水道掃除は、最も嫌厭される依頼の一つでもあり、冒険者ですら誰も受けたがらない仕事だ。
しかし、それだけ報酬は高く設定されており、日給は5万イエンで、一区画清掃完了すると追加報酬で5万イエン出る。
「試してみる価値はありそうね!」
クロエは、下水道掃除の依頼を受注して、早速、現場へ向かった。
「・・・酷い臭いね」
地下の下水道に潜ったクロエは、早速後悔していた。
長らく誰も掃除をしていなかったのか、床だけじゃなく、壁や天井も糞尿やヘドロがこびり付いており、悪臭で鼻が曲がりそうだ。
全体的に湿気でジメジメしており、床は汚水が流れていて、ヌルヌルする。
壁に衣服や腕が触れる度にヌチョッとした汚物が付き、全身の毛が逆立つ。
「最悪ね!さっさと浄化して終わらせてやるわ!」
クロエは、両手に魔力を込めると、浄化の光を放った。
壁や床にこびり付いた汚物が綺麗に剥がれ落ちて消滅していく光景は、何とも言えない気持ち良さがあった。
「よーし!この調子で稼ぐわょオォッ!?」
天井を浄化しながら歩いていたクロエは、足を踏み外して、深い溝に落ちた。
当然、溝の中は糞尿と汚水で満たされており、膝上まで浸かってしまったクロエは、糞尿塗れの状態で硬直していた。
靴の中まで糞尿が入り込み、全身から悪臭がする。
「・・・最悪」
クロエは、涙目で呟いた。
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