黒騎士物語

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8話 B級冒険者

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後日、再び冒険者ギルドを訪れたジン・クロードをナーベが対応していた。
数千体もの魔物の死体の山を鑑定するのに冒険者ギルド総出で対応しても3日間もの日数を要した。

「大変お待たせしました。こちらが鑑定結果になります。魔石が無いので討伐報酬は渡せませんが、素材の買取は公正にさせて頂きました」

魔物の討伐報酬を得る為には魔石の提出が義務付けられている。
これは、聖騎士や黒騎士へ支給する為の魔石を国が冒険者ギルドから買い取っているからであり、買取額が討伐報酬の源泉にもなっている。
つまり、魔石が無ければ討伐報酬の元となる国からの収入が無いので支給出来ないと言う事だ。

「ありがとうございます」

ジンは大量の明細が記載された用紙を受け取る。

・ポイズンスネークE×15:金貨1枚銀貨5枚
・ビックマウスF×80:銅貨8枚
・ファイアウルフD×50:金貨50枚
・ホーンラビットF×980:金貨9枚銀貨8枚
・フォレストディアE×650:金貨65枚
・グレイウルフE×850:金貨42枚銀貨5枚
・キラーベアD×60:金貨300枚
・ファイアベアD×30:金貨300枚
・ブラッティエントC×10:金貨1000枚
・マンイータープラントC×3:金貨300枚
・グリーンスライムC×1:金貨150枚
・レッサーバジリスクB×1金貨500枚

合計:金貨2718枚、銀貨8枚、銅貨8枚

それは大金だった。
普通に暮らせば10年以上遊んで暮らせるくらいの金だ。

「ご質問やご不明点はありますか?」

ナーベの問いにジンは考える。

「買取額をアイテムと交換する事は可能ですか?」

「アイテムと交換ですか?ギルドから貸与している装備品などでしたら可能ですが」

「じゃあ、収納用の魔導具と交換出来ますか?」

ジンはキラーワームを収納した指輪を欲しがっていた。
前から気にはなっていたが、今回の様に魔物を大量に狩る場合は、やはり収納アイテムが必須だ。
今回は悪魔の騎士達に手伝って貰って素材を運べたが、毎回そんな事をしていては手間が掛かって仕方がない。

「収納アイテムですか?そうですね~、これだけの金額となると・・・少し待っていて下さい」

そう言うとナーベは奥の扉へ入って行った。

暫くして戻ってきたナーベは、銀の指輪を一つ持ってきた。

「この指輪は当ギルドで最高峰の収納用魔導具です。亜空間収納に加えてアイテムボックス機能があり、ソート機能や分類分けなども可能な優れものです」

見た目は普通だが、かなり複雑なルーン文字が刻まれているのだろう。

「へぇ、これはいくらくらいするんですか?」

「なんと、金貨2500枚です!」

「それなりの家が建つレベルの値段ですね」

「どうしますか?やっぱりやめときますか?」

「いや、買います」

ジンは即決した。
金額は確かに高いが、冒険者ギルドの販売価格なので、適正価格である事は間違いない上に、品質も保証される。
収納アイテムとなると、商人から購入する場合、偽物や粗悪品を掴まされる可能性が高く、値段も安くない。
長く使うなら尚更良いものを買っておいた方が良いだろう。

「分かりました!では、差額分を現金でお支払い致します」

ジンは金貨218枚と銀貨8枚銅貨8枚を受け取った。
試しに左手の人差し指にはめた指輪を翳すと、一瞬にして亜空間内に収納された。

「やっぱり、収納アイテムは便利だな」

ジンは満足そうに笑みを浮かべる。

「明後日には騎士学園の入学式ですよね?新しい環境は大変だろうけど、頑張って下さいね!」

ナーベはガッツポーズで応援した。

「ありがとうございます!」

ジンはお礼を言って冒険者ギルドを後にした。

「・・・あれ?何か言い忘れてるような」

ジンが去った後でナーベが首を傾げる。

「あっ!昇格の事伝えるの忘れてた!」

ジンは今回の大量の魔物の討伐に加えて、危険度Bランクのレッサーバジリスクの討伐を評価され、ギルドマスターからの指示でB級に昇格されていた。
幸い、騎士学園に入学したジン・クロードには国から徴兵される対象からは外れるのだが、3日間の激務で頭がパンクしており、それどころでは無かった。

「・・・まっ、いっか」

ナーベは直ぐに仕事に戻り、いつもの忙しない1日を迎えた。
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