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2話 冒険者ギルド
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エスパーダ王国の首都ザザンにある冒険者ギルド本部は常に依頼が山の様に持ち込まれている。
・魔の森に現れたレッドグリズリーの討伐
・ナギ大平原のゾンビの群れの討伐
・魔鉄の鉱山に巣食うキラーワームの討伐
・魔の森の行方不明者の捜索
・豊穣の海に現れた巨大ザメの討伐
・・・etc
ギルド職員は常に忙しそうに冒険者へ仕事の斡旋をしている。
しかし、有能な冒険者の殆どは戦争で国に徴兵されてしまった為、依頼を熟せる冒険者が慢性的に足りていない。
首都に甚大な被害が発生する様な問題に対しては軍の騎士が派遣される事もあるが、基本的にオルクス帝国との戦争が厳しく、軍が協力してくれる様な事は滅多に無い。
結局、危険度の高い依頼を低ランクの冒険者に依頼する事も少なくない為、死傷者の数が増え、余計に冒険者不足が加速すると言う悪循環に陥っている。
ギルド職員のナーベは今日も山積みの依頼書を捌きながら溜息を吐く。
「ハァ、ジン君は大丈夫かなぁ?」
ナーベは、ジン・クロードにキラーワームの討伐依頼を託した事を後悔していた。
キラーワームの討伐なんてBランクの冒険者パーティでも死傷者がでる可能性が高い。
いくらジン・クロードが熟練の冒険者とは言え、Cランクの冒険者がソロで討伐するには無理があった。
それでも、今の冒険者ギルドにはジン・クロードよりも強い冒険者は残っていない。
殆どがDかEランクでCランクの冒険者は一握りだ。
「せめて、他の冒険者とパーティを組む様に説得するべきだったかな~」
ナーベが苦悩していると、ギルドの入口の扉が開き誰かが入ってきた。
「・・・あっ!?」
その姿を見たナーベは驚きと共に嬉しそうな表情を浮かべる。
「お帰りなさい!ジン君!」
ナーベは直ぐにジンの元へ駆け寄る。
直ぐに身体を入念にチェックするが、特に怪我らしいところは無い。
皮の鎧には緑色の体液がこびり付いているので、恐らくキラーワームの返り血だろう。
顔には少し疲れが見えるが、大丈夫そうだと安堵の溜息を吐いた。
「依頼は達成した」
ジンは、ギルドから貸与されていた指輪をナーベに返した。
「お疲れ様!じゃあ早速確認しますね!」
ナーベは指輪に魔力を流して中に保管されているキラーワームの死骸を取り出した。
ズシンッ!!
それは想像を遥かに超えるサイズのキラーワームの死骸だった。
「嘘、こんなに大きいの!?」
全長10m以上はある巨体に、凶悪な牙を持つ姿を見てギルド内に居た職員や冒険者達は背筋を凍らせた。
そして、こんな怪物をたった1人で狩るジン・クロードの実力を改めて評価する。
本来なら冒険者ランクをBに引き上げるだけの功績だが、ナーベは少し躊躇する。
Bランク以上の冒険者は全員、軍に徴兵される契約になっているからだ。
今、ジン・クロードに抜けられるとギルドの依頼が回らなくなるのは目に見えていた為、ナーベは昇級の話は極力避ける事にした。
「報酬を貰えますか?」
ジンの質問にナーベはハッとした様に思い出した。
「そうですね!キラーワームの討伐報酬が金貨300枚に死体及び魔石の買取価格で金貨200枚を追加しますので、合わせて金貨500枚ですね!」
金貨500枚と言えばギルド職員の年収分くらいの大金だ。
1つの依頼で稼げる金額としてはかなり高額だ。
しかし、それだけ危険度が高い仕事と言うことだ。
こんな依頼を何度も受けていれば命がいくつあっても足りないだろう。
「確かに受けとりました」
ジンは渡された金貨が詰まった袋の重さを確かめて頷いた。
「あと、これはサービスよ」
そう言うと、ナーベはジンに初級ポーションを手渡した。
ポーションは体力や魔力を回復させる特殊な薬で非常に高価な代物だ。
「良いんですか?」
ジンは軽く驚きながらもナーベから受け取る。
「ジン君、身体強化魔法を使ったでしょ?」
「・・・はい」
「明日は騎士学園の入学試験でしょ?頑張ってね!」
ナーベは、身体強化魔術の副作用を知っていた。
自分が依頼したせいでジンの入学試験に悪い影響が出たら悔やんでも悔みきれない。
ジン・クロードの境遇を知るナーベは、ジンの幸せを願っていた。
「ありがとうございます!」
ジンが嬉しそうに頭を下げる。
「その代わり!騎士学園に入っても、たまには冒険者ギルドに寄って下さいね?」
ナーベは上目遣いでジンに近づく。
ジンは少しだけ顔を赤らめるが、しっかりと頷いて返した。
「騎士学園でもっと強くなったら、きっと今よりも高難易度の依頼も受けられるようになりますよ」
ジンの返事にナーベは嬉しそうにはにかむ。
「期待していますね!」
・魔の森に現れたレッドグリズリーの討伐
・ナギ大平原のゾンビの群れの討伐
・魔鉄の鉱山に巣食うキラーワームの討伐
・魔の森の行方不明者の捜索
・豊穣の海に現れた巨大ザメの討伐
・・・etc
ギルド職員は常に忙しそうに冒険者へ仕事の斡旋をしている。
しかし、有能な冒険者の殆どは戦争で国に徴兵されてしまった為、依頼を熟せる冒険者が慢性的に足りていない。
首都に甚大な被害が発生する様な問題に対しては軍の騎士が派遣される事もあるが、基本的にオルクス帝国との戦争が厳しく、軍が協力してくれる様な事は滅多に無い。
結局、危険度の高い依頼を低ランクの冒険者に依頼する事も少なくない為、死傷者の数が増え、余計に冒険者不足が加速すると言う悪循環に陥っている。
ギルド職員のナーベは今日も山積みの依頼書を捌きながら溜息を吐く。
「ハァ、ジン君は大丈夫かなぁ?」
ナーベは、ジン・クロードにキラーワームの討伐依頼を託した事を後悔していた。
キラーワームの討伐なんてBランクの冒険者パーティでも死傷者がでる可能性が高い。
いくらジン・クロードが熟練の冒険者とは言え、Cランクの冒険者がソロで討伐するには無理があった。
それでも、今の冒険者ギルドにはジン・クロードよりも強い冒険者は残っていない。
殆どがDかEランクでCランクの冒険者は一握りだ。
「せめて、他の冒険者とパーティを組む様に説得するべきだったかな~」
ナーベが苦悩していると、ギルドの入口の扉が開き誰かが入ってきた。
「・・・あっ!?」
その姿を見たナーベは驚きと共に嬉しそうな表情を浮かべる。
「お帰りなさい!ジン君!」
ナーベは直ぐにジンの元へ駆け寄る。
直ぐに身体を入念にチェックするが、特に怪我らしいところは無い。
皮の鎧には緑色の体液がこびり付いているので、恐らくキラーワームの返り血だろう。
顔には少し疲れが見えるが、大丈夫そうだと安堵の溜息を吐いた。
「依頼は達成した」
ジンは、ギルドから貸与されていた指輪をナーベに返した。
「お疲れ様!じゃあ早速確認しますね!」
ナーベは指輪に魔力を流して中に保管されているキラーワームの死骸を取り出した。
ズシンッ!!
それは想像を遥かに超えるサイズのキラーワームの死骸だった。
「嘘、こんなに大きいの!?」
全長10m以上はある巨体に、凶悪な牙を持つ姿を見てギルド内に居た職員や冒険者達は背筋を凍らせた。
そして、こんな怪物をたった1人で狩るジン・クロードの実力を改めて評価する。
本来なら冒険者ランクをBに引き上げるだけの功績だが、ナーベは少し躊躇する。
Bランク以上の冒険者は全員、軍に徴兵される契約になっているからだ。
今、ジン・クロードに抜けられるとギルドの依頼が回らなくなるのは目に見えていた為、ナーベは昇級の話は極力避ける事にした。
「報酬を貰えますか?」
ジンの質問にナーベはハッとした様に思い出した。
「そうですね!キラーワームの討伐報酬が金貨300枚に死体及び魔石の買取価格で金貨200枚を追加しますので、合わせて金貨500枚ですね!」
金貨500枚と言えばギルド職員の年収分くらいの大金だ。
1つの依頼で稼げる金額としてはかなり高額だ。
しかし、それだけ危険度が高い仕事と言うことだ。
こんな依頼を何度も受けていれば命がいくつあっても足りないだろう。
「確かに受けとりました」
ジンは渡された金貨が詰まった袋の重さを確かめて頷いた。
「あと、これはサービスよ」
そう言うと、ナーベはジンに初級ポーションを手渡した。
ポーションは体力や魔力を回復させる特殊な薬で非常に高価な代物だ。
「良いんですか?」
ジンは軽く驚きながらもナーベから受け取る。
「ジン君、身体強化魔法を使ったでしょ?」
「・・・はい」
「明日は騎士学園の入学試験でしょ?頑張ってね!」
ナーベは、身体強化魔術の副作用を知っていた。
自分が依頼したせいでジンの入学試験に悪い影響が出たら悔やんでも悔みきれない。
ジン・クロードの境遇を知るナーベは、ジンの幸せを願っていた。
「ありがとうございます!」
ジンが嬉しそうに頭を下げる。
「その代わり!騎士学園に入っても、たまには冒険者ギルドに寄って下さいね?」
ナーベは上目遣いでジンに近づく。
ジンは少しだけ顔を赤らめるが、しっかりと頷いて返した。
「騎士学園でもっと強くなったら、きっと今よりも高難易度の依頼も受けられるようになりますよ」
ジンの返事にナーベは嬉しそうにはにかむ。
「期待していますね!」
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