公爵令嬢と闇に囚われし刻印

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第24話

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第24話:見えざる快楽、抗えぬ支配

 ──また、負けた。

 クロエ・ハートフィリアは、魔導列車のホームに立ち尽くしていた。
 ここ数日、痴漢犯を捕まえるために囮捜査を続けてきた。
 しかし、結果は同じだった。
 満員電車の圧力に身動きを封じられ、逃げられないまま、屈辱を味わい続けている。

 ──どうして、捕まえられないの?
 ──どうして、私はまた……!?

 歯を食いしばる。
 だけど、それ以上に胸の奥で、別の感情が渦巻いていることに気づいてしまった。

 ──私は、どうなってしまったの……?

目的と手段の混同

 最初は、ただの囮捜査だった。
 痴漢犯を捕らえるため、囮になって誘い出す。
 それだけだった。

 ……なのに、今の自分は?

 気がつけば、満員電車の感覚が頭から離れなくなっている。
 ポールに押し付けられる感触、背後から忍び寄る手、耳元で囁かれる声……。

 ──もう、あの感覚がないと、落ち着かなくなっている?

 「……っ……!」

 クロエは、自分の考えに戦慄した。
 いや、違う。これは、ただの囮捜査。
 これは、痴漢を捕まえるために……!!

 そう自分に言い聞かせながら、彼女は列車に乗り込んだ。

痴漢を待つための「完全なる囮」

 今日は、さらに痴漢を確実に誘い込むため、「ポールに股間を当てながら、待つ」 という姿勢を取った。
 いつものフード付きパーカーとブーツだけ。
 下着もホットパンツも履かずに。

 ──もう、私は迷わない。

 列車が動き出す。
 クロエはゆっくりとポールに寄りかかり、痴漢を待った。
 電車の揺れに合わせて、ポールに擦れる感触が微かに伝わる。
 心臓が高鳴る。

 ──今日こそ、捕まえる……!!

魔の手、そして……異常事態

 「っ……!」

 すぐに分かった。
 背後から、魔の手が伸びる。
 静かに、しかし確実に、クロエの体を狙っている。

 ──よし、来た……!!

 クロエは身を固めた。
 しかし、その瞬間、異変が起こる。

 「……え?」

 手の数が、増えている……!?

 1本、2本、3本……。
 昨日までは確実に1人だったのに、今日は違う。

 ──ま、待って……今日は……!!

 クロエの呼吸が乱れる。
 背後から、まるで何人もの男たちが、一斉に狙っているかのような感触。

 しかも、今日もまた満員電車。
 昨日以上に、身動きが取れない状態。

 「っ……く……!!」

 クロエはパニックになった。
 逃げなければ。
 でも、動けない。

 ──これじゃ、私……!!

目的が、手段が、すべて崩れる瞬間

 背後からの手の動きが、昨日までとは違う。
 もう、単なる痴漢ではない。
 明確に、クロエを狙っている動き。

 それでも、クロエは何もできなかった。
 満員電車に閉じ込められ、ポールに固定され、背後からの魔の手を避けることもできず。

 「く……っ……!!」

 昨日までのように、反撃の意思はまだ残っていたはずなのに。
 しかし、今日は違う。

 ──これが、私の求めていたもの……?

 そんな考えが、頭をよぎった瞬間。
 クロエの中で、何かが崩れた。

 「っ……あ……!!」

 目的と手段が、完全に入れ替わる。
 もはや、何が何だか分からなくなっていく。

 電車は止まらない。
 このまま、まだ続く……!!

次回予告

クロエの中で、何かが完全に崩れ落ちる……!?
囮捜査のはずが、もはや目的と手段が混濁し、戻れない領域へ……!?
次回、「見えざる境界、堕ちる覚悟!」
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