公爵令嬢と闇に囚われし刻印

文字の大きさ
上 下
7 / 34

第6話

しおりを挟む
第6話:見えざる試練、二重の災難

 クロエ・ハートフィリアは、駅のトイレの個室に駆け込み、背中をドアに預けると、大きく息を吐いた。

 「はぁ……はぁ……っ!!」

 全裸で不可視化したまま魔導列車に乗り、満員の人混みに揉まれ、さらにはカンチョーまでされた。
 まさかこんな屈辱を味わうことになるなんて、想像すらしていなかった。

 「……っ」

 息を整えようとしたが、どうしても意識が逸れてしまう。
 ──お尻に残る違和感。
 さっき突き刺さった時の衝撃が、まるで電流のように尾を引いていた。
 ズキズキとした感覚が残り、ムズムズと痺れるような違和感が残っている。

 「……んっ……」

 思わず手を後ろに回し、そっと撫でる。
 何かが残っているわけではないのに、まだ指がそこにあるような錯覚がする。
 違和感を払拭しようと指を押し当てるが、触れるたびに妙な感覚が背筋を駆け抜ける。

 ──何なの、この感じ……!?

 羞恥のあまり顔が火照る。
 だが、ここで立ち止まるわけにはいかない。

 クロエは、わざと深呼吸をして心を落ち着けた。
 さっきのことは忘れる。
 意識を逸らして、次の行動を考える。

 ──もう一度、魔導列車に乗らなければならない。

 躊躇う時間はない。
 ここで怖気づいていては、目的地にたどり着くことすらできない。

 「……行くしかない。」

 自分に言い聞かせるように呟くと、クロエは不可視化を維持したまま、トイレを後にし、再び魔導列車へと向かった。

 しかし、再び、満員電車に遭遇することになる。

 「……また?」

 列車の入り口から見えるのは、びっしりと埋め尽くされた車両。
 座るどころか、立っている乗客ですら身動きが取れないほどだった。

 ──また、この地獄を耐えなければならないの?

 それでも進むしかない。
 クロエは慎重に車両に入り、端の方へ移動する。

 ──密着しすぎると、また何かに触れられるかもしれない。
 だから、人の流れから少しでも距離を取れる場所を探した。

 そして、端にあった手すりのポールのそばに立つことにした。

 「ここなら、人に埋もれずに済む……」

 少し安心しかけた、その時だった。

 ガタン!!

 列車が揺れた。
 その瞬間、人々の波がクロエに押し寄せる。

 「っ……!!」

 次の瞬間、クロエの体はポールに向かって押し潰され──

 股間が、ポールに押し付けられる形になった。

 ──ヤバい!!

 全裸の状態で、冷たい金属の感触がダイレクトに伝わってくる。
 最悪のポジションだった。
 前から押される形でポールに密着し、揺れるたびにわずかに擦れる。

 ──これは耐えられない!!

 しかし、身動きが取れない。
 列車の揺れと、乗客の圧力によって、完全に固定されてしまった。
 何とか姿勢を変えようとしたが、押し寄せる人の波がそれを許さない。

 「っ……!!」

 羞恥と絶望に押し潰されそうになる。
 早く駅に着いてほしい、そう願うしかなかった。

 だが──その悪夢は、さらに悪化する。

 「ん? なんか後ろに……」

 ──後ろから、何かが突き刺さった。

 カンッ。

 「っ……!!」

 ──ま、またカンチョー!?!?

 「うわっ、なんか変なとこ刺さったぞ……」

 「え? 何かあった?」

 ──ダメ、またあの感覚が……!!

 股間がポールに押し付けられたまま、後ろから誰かの傘の先端がカンチョーのように当たる。
 ただでさえ敏感になっていたお尻に、再び衝撃が走る。

 「っ、く……!!」

 クロエは、耐えるしかなかった。
 ここで声を出したら、不可視化が解けてしまう。
 周囲の人々に、自分の存在がバレてしまう。

 でも、耐えるにはあまりにも過酷な姿勢だった。

 ──前からはポール。
 ──後ろからは傘の先。

 挟まれる形で動けず、羞恥と刺激に翻弄される。

 このまま目的地まで耐えなければならないの……!?

 心の中で叫ぶ。
 しかし、それすら口にすることは許されない。

 耐えろ、耐えろ、耐えろ……!!

 クロエは、歯を食いしばって耐えるしかなかった。

 ついに目的地の駅が近づいてきた。

 「次は、終点です。」

 ──ようやく、終わる……!!

 クロエは、心の中で安堵した。
 だが、最後の試練はまだ残っていた。

 ──降りるタイミングで、また人の波に押し流される可能性がある。

 慎重に動かなければ、また最悪の事態が起こるかもしれない。
 それだけは、絶対に避けなければならない……!!

 この地獄の終わりは、もうすぐそこだった。

次回予告

ついに駅に到着! しかし、最後の下車の瞬間、クロエは最大の試練に直面する!?
次回、「見えざる最後の関門、降りる瞬間の罠!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...