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第18話 お掃除
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クロエが屋敷に着いてから、数時間が経過していた。
陽も沈み始めており、辺りは段々と暗くなり始める。
「ふぅ~、掃除って思ったより重労働ね!」
額に汗をかきながら、クロエは浴槽を必死に磨いていた。
浴槽と言っても、大浴場であり、サイズはプール並みにあるので、掃除もブラシを使ってゴシゴシと汚れを落としている。
最初はカビと苔が凄かったが、頑張った甲斐もあって、今ではピカピカに磨かれている。
「それにしても、お風呂に魔導具が付いていたのはビックリね」
この屋敷のお風呂には、温度調整の魔導具が設置されており、蛇口からお湯を出せる様になっていた。
魔導具はかなり高価な物なので、普通は置き忘れないのだが、この屋敷のは取り外す事が出来なかったのだろう。
「益々気に入ったわ!」
クロエは、ご機嫌な笑顔で、風呂掃除を続けた。
寝室に風呂とキッチン、それに食堂の掃除を終えた頃には、既に空が暗くなっていた。
「もうこんなに暗いの?街に買い出しに行くのは明日にするしかないかぁ」
一応、カバンにはかなりの食糧が残っているので、焦って買い出しに行く必要は無い。
「取り敢えず、ご飯にしよ!」
クロエは、一階の食堂に行くと!長テーブルの席に着いた。
10人は座れるテーブルにポツンと1人でいると、何だか少し寂しく感じる。
幸い、天井からぶら下がっていたシャンデリアも魔導具らしく、スイッチを押したら明かりが付いたので、暗くは無い。
「頂きます!」
クロエは、テーブルに置いたパンと干し肉を食べる。
本当は、料理くらいしたかったが、既に掃除でクタクタなので、夜ご飯は手抜きだ。
「明日は、草むしりに買い出しに洗濯もしないとだし、やる事がいっぱいね」
忙しいのに、クロエは何故か嬉しく感じてしまう。
こんなに自分の好きな事を出来るなんて初めての事だった。
王都で過ごしていた頃もそれなりに好き勝手に生きていたが、やはり侯爵家の娘として、義務も多かった。
社交界への参加や礼儀マナーの勉強に政治や経済の勉強、そして王家や婚約者への挨拶など、やらなければならない事が多くて、自分の時間を奪われる。
だけど、今は自分の好きな時に好きな事が出来る。
「これが、自由なのかな?」
ご飯を食べ終えたクロエは、念願のお風呂タイムだ。
王都を出て、イステリアに辿り着くまで、約3ヶ月もの期間を要した。
途中、盗賊に襲われたり、魔物と戦ったりと、血や泥で汚れる事は多くても、お風呂に入る機会は無かった。
村についても、濡れた布で体を拭くだけだったし、川で水浴びが出来れば贅沢な方だ。
「お湯だ!」
浴槽には温かいお湯が溜まっており、服を脱ぎ捨てたクロエは、尻尾をブンブンと振りながら嬉しそうに湯気を見つめる。
「早く体を洗って入らないと!」
クロエは、シャワーで体の汚れを洗い流して、ゆっくりと足先からお湯に浸かる。
「はふぅ~・・・幸せ」
温かいお湯に浸かる事がどれほど幸せな事かを噛み締めながら、クロエは頬を赤くして、極楽な気分になる。
「これからはお風呂に毎日入れるなんて、最高だなぁ」
もちろん、ハートフィリア家の屋敷に居た頃は毎日お風呂に入っていたが、あの頃は、それが当たり前だったから、このありがたみが分からなかった。
人は無くしてから初めて、その価値に気付くのね。
風呂から上がったクロエは、タオルで体を拭き、髪の毛を乾かす。
脱衣所には、大きな姿鏡が壁に埋め込まれており、クロエの美しい全裸の姿が写っていた。
「前より綺麗になったかな?」
旅で運動したからか、体の締まりが良くなった気がする。
それに、呪いのせい?
胸も前より膨らんでいる。
「成長期かな」
鏡の前で自分の尻尾や犬耳をじっくり見つめてくるくると回転してみる。
「やっぱり、裸が1番しっくりくるんだよね」
獣の本能のせいか、服を着たく無いと思ってしまう。
「まあ、自分の家だし、良いよね?」
そのまま、クロエは着替えを置いたまま、寝室に向かった。
ベッドの布団も昼間のうちに外に干したので、今はフカフカで埃も感じない。
長旅を終えて、安心したからか、睡魔が襲ってくる。
「ふわぁ~、眠いなぁ」
クロエは口を大きく開けて欠伸をした。
お嬢様だった頃なら絶対にしない仕草だったが、旅の間に令嬢の癖は少しずつ消えていった。
「疲れたし、今日はもう寝るかな!おやすみなさい!」
そのまま、クロエはベッドにダイブして、直ぐに寝息を立て始めた。
陽も沈み始めており、辺りは段々と暗くなり始める。
「ふぅ~、掃除って思ったより重労働ね!」
額に汗をかきながら、クロエは浴槽を必死に磨いていた。
浴槽と言っても、大浴場であり、サイズはプール並みにあるので、掃除もブラシを使ってゴシゴシと汚れを落としている。
最初はカビと苔が凄かったが、頑張った甲斐もあって、今ではピカピカに磨かれている。
「それにしても、お風呂に魔導具が付いていたのはビックリね」
この屋敷のお風呂には、温度調整の魔導具が設置されており、蛇口からお湯を出せる様になっていた。
魔導具はかなり高価な物なので、普通は置き忘れないのだが、この屋敷のは取り外す事が出来なかったのだろう。
「益々気に入ったわ!」
クロエは、ご機嫌な笑顔で、風呂掃除を続けた。
寝室に風呂とキッチン、それに食堂の掃除を終えた頃には、既に空が暗くなっていた。
「もうこんなに暗いの?街に買い出しに行くのは明日にするしかないかぁ」
一応、カバンにはかなりの食糧が残っているので、焦って買い出しに行く必要は無い。
「取り敢えず、ご飯にしよ!」
クロエは、一階の食堂に行くと!長テーブルの席に着いた。
10人は座れるテーブルにポツンと1人でいると、何だか少し寂しく感じる。
幸い、天井からぶら下がっていたシャンデリアも魔導具らしく、スイッチを押したら明かりが付いたので、暗くは無い。
「頂きます!」
クロエは、テーブルに置いたパンと干し肉を食べる。
本当は、料理くらいしたかったが、既に掃除でクタクタなので、夜ご飯は手抜きだ。
「明日は、草むしりに買い出しに洗濯もしないとだし、やる事がいっぱいね」
忙しいのに、クロエは何故か嬉しく感じてしまう。
こんなに自分の好きな事を出来るなんて初めての事だった。
王都で過ごしていた頃もそれなりに好き勝手に生きていたが、やはり侯爵家の娘として、義務も多かった。
社交界への参加や礼儀マナーの勉強に政治や経済の勉強、そして王家や婚約者への挨拶など、やらなければならない事が多くて、自分の時間を奪われる。
だけど、今は自分の好きな時に好きな事が出来る。
「これが、自由なのかな?」
ご飯を食べ終えたクロエは、念願のお風呂タイムだ。
王都を出て、イステリアに辿り着くまで、約3ヶ月もの期間を要した。
途中、盗賊に襲われたり、魔物と戦ったりと、血や泥で汚れる事は多くても、お風呂に入る機会は無かった。
村についても、濡れた布で体を拭くだけだったし、川で水浴びが出来れば贅沢な方だ。
「お湯だ!」
浴槽には温かいお湯が溜まっており、服を脱ぎ捨てたクロエは、尻尾をブンブンと振りながら嬉しそうに湯気を見つめる。
「早く体を洗って入らないと!」
クロエは、シャワーで体の汚れを洗い流して、ゆっくりと足先からお湯に浸かる。
「はふぅ~・・・幸せ」
温かいお湯に浸かる事がどれほど幸せな事かを噛み締めながら、クロエは頬を赤くして、極楽な気分になる。
「これからはお風呂に毎日入れるなんて、最高だなぁ」
もちろん、ハートフィリア家の屋敷に居た頃は毎日お風呂に入っていたが、あの頃は、それが当たり前だったから、このありがたみが分からなかった。
人は無くしてから初めて、その価値に気付くのね。
風呂から上がったクロエは、タオルで体を拭き、髪の毛を乾かす。
脱衣所には、大きな姿鏡が壁に埋め込まれており、クロエの美しい全裸の姿が写っていた。
「前より綺麗になったかな?」
旅で運動したからか、体の締まりが良くなった気がする。
それに、呪いのせい?
胸も前より膨らんでいる。
「成長期かな」
鏡の前で自分の尻尾や犬耳をじっくり見つめてくるくると回転してみる。
「やっぱり、裸が1番しっくりくるんだよね」
獣の本能のせいか、服を着たく無いと思ってしまう。
「まあ、自分の家だし、良いよね?」
そのまま、クロエは着替えを置いたまま、寝室に向かった。
ベッドの布団も昼間のうちに外に干したので、今はフカフカで埃も感じない。
長旅を終えて、安心したからか、睡魔が襲ってくる。
「ふわぁ~、眠いなぁ」
クロエは口を大きく開けて欠伸をした。
お嬢様だった頃なら絶対にしない仕草だったが、旅の間に令嬢の癖は少しずつ消えていった。
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