17 / 29
第17話 新しい家
しおりを挟む
ミレイから鍵と権利書を受け取ったクロエは、地図を見ながら、購入した幽霊屋敷に来ていた。
「確か、この辺のはずだよね?」
屋敷はイステリアの街から歩いて30分くらいの森の中にあった。
一応、道はあるが、長らく整備されていないので、ほぼ獣道に近い状態だ。
長く伸び切った草を掻き分けながら進んで行くと、大きな門の前に辿り着いた。
「かなり立派な門構えね」
全体的に年季が入っているが、基の作りが良いので、全然劣化していない。
金属の門は魔鉱石で出来ており、魔力の力で錆びる事は無い。
「この魔鉱石だけでもかなりの値打ちね」
やはり買って正解だったと、クロエはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、ミレイから受け取った金色の鍵をポケットから取り出して、鍵穴に差した。
ガチャッと音を立てて、鍵が開く。
門を押すと、軋み音を上げながら、ゆっくりと開いた。
「うわぁ!」
クロエは、思わず感嘆の声を上げてしまう。
門の向こう側には、広大な庭があった。
手入れされていないので、草は伸び切っており、噴水やプールには苔が生えている。
それでも、かつての荘厳さを感じる美しさと迫力があった。
「しっかり手入れし直せば立派な畑になりそうね!」
普通の令嬢なら、薔薇やチューリップなどを植えるのだろうが、クロエは実用的なタイプだった。
これだけの土地があるのなら、野菜や果物を植え放題だ。
地下水があるので、水にも困らないので、自給自足にはもってこいの庭だ。
「そしてあれが、幽霊屋敷ね!」
庭の向こうには、立派な3階建の屋敷が建っていた。
石と木で建てられた屋敷は、やはり、長らく放置されていたせいか、壁には蔦が巻き付いている。
「幽霊屋敷って聞いていたから、もっとボロボロなのを想像していたけど、思ったより綺麗じゃない!」
窓ガラスも割れていないし、屋根に穴も空いていない。
住む分には問題は無さそうだ。
「これが金貨500枚で手に入るなんて、ラッキーね!」
クロエは、嬉しそうにカバンを持って、屋敷に向かって歩き始めた。
「ごめんくださーい!」
屋敷の正面玄関の扉を開けると、外の空気と光が差し込み、中の埃が舞う。
誰も居ない事は分かっているが、何となく声を掛けてみる。
ミレイの話では、黒い影が出るって話だ。
しかし、夜に黒い影と言われても、単なる見間違いの可能性も十分ある。
それに、街の子供が忍び込んだだけかも知れない。
「・・・誰も居ませんか~?」
クロエは、もう一度声を上げてみる。
屋敷の中は暗く、窓から差し込んだ光で微かに見えるくらいだ。
反応が無い事を確認したクロエは、ふぅっと安堵の溜息を吐いて、屋敷の中に入った。
バタンッ!
その瞬間、後ろの扉が勝手に閉まり、大きな音が屋敷に響き渡る。
「ひゃあっ!?」
音に驚いて、クロエの肩がビクッと震えた。
慌てて、背後を振り返るが、特に何も居ない。
「何よ、ビックリさせないでよね」
ミレイの言葉をそれほど信じていたわけでは無いが、やはり内心幽霊は怖い。
クロエの肌は鳥肌が立っていた。
「よし!今日からここが私の家よ!」
クロエは気を取り直して屋敷の探索を始めた。
「概ね把握できたわね!」
クロエが王都で住んでいた屋敷ほどでは無いが、ここもかなり広い屋敷だ。
「ベッドや棚みたいな大型家具は残っているみたいだし、掃除すれば活用できそうね!」
中身は殆ど空っぽだったが、生活するには問題無い。
これから少しずつ必要な物を増やしていけば良い。
「問題は人手ね」
王都の屋敷では使用人が100人以上居たので、掃除や片付けに困る事は無かった。
しかし、ここではクロエ1人だ。
流石にこの屋敷を1人で使いこなすのは無理があった。
「まあ、間取りは把握してるし、使う部屋だけ綺麗にすれば良いよね!」
ザックリな間取りはこんな感じだ。
1階:食堂、キッチン、倉庫、浴場
2階:客室、応接室、書庫、保管庫、空き部屋
3階:寝室、執務室、空き部屋
クロエは、3階の寝室を自分の部屋にする事にした。
部屋の中はかなり広く、ベッドも落ちる心配が無いくらい広い。
「ちょっと埃っぽいけど、野宿よりは全然マシよね!」
クロエは、仮面とローブを脱いで、クローゼットにしまった。
「よし!早速お掃除ね!」
クロエは尻尾をブンブン振りながら、気合を入れて、掃除を開始した。
「確か、この辺のはずだよね?」
屋敷はイステリアの街から歩いて30分くらいの森の中にあった。
一応、道はあるが、長らく整備されていないので、ほぼ獣道に近い状態だ。
長く伸び切った草を掻き分けながら進んで行くと、大きな門の前に辿り着いた。
「かなり立派な門構えね」
全体的に年季が入っているが、基の作りが良いので、全然劣化していない。
金属の門は魔鉱石で出来ており、魔力の力で錆びる事は無い。
「この魔鉱石だけでもかなりの値打ちね」
やはり買って正解だったと、クロエはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、ミレイから受け取った金色の鍵をポケットから取り出して、鍵穴に差した。
ガチャッと音を立てて、鍵が開く。
門を押すと、軋み音を上げながら、ゆっくりと開いた。
「うわぁ!」
クロエは、思わず感嘆の声を上げてしまう。
門の向こう側には、広大な庭があった。
手入れされていないので、草は伸び切っており、噴水やプールには苔が生えている。
それでも、かつての荘厳さを感じる美しさと迫力があった。
「しっかり手入れし直せば立派な畑になりそうね!」
普通の令嬢なら、薔薇やチューリップなどを植えるのだろうが、クロエは実用的なタイプだった。
これだけの土地があるのなら、野菜や果物を植え放題だ。
地下水があるので、水にも困らないので、自給自足にはもってこいの庭だ。
「そしてあれが、幽霊屋敷ね!」
庭の向こうには、立派な3階建の屋敷が建っていた。
石と木で建てられた屋敷は、やはり、長らく放置されていたせいか、壁には蔦が巻き付いている。
「幽霊屋敷って聞いていたから、もっとボロボロなのを想像していたけど、思ったより綺麗じゃない!」
窓ガラスも割れていないし、屋根に穴も空いていない。
住む分には問題は無さそうだ。
「これが金貨500枚で手に入るなんて、ラッキーね!」
クロエは、嬉しそうにカバンを持って、屋敷に向かって歩き始めた。
「ごめんくださーい!」
屋敷の正面玄関の扉を開けると、外の空気と光が差し込み、中の埃が舞う。
誰も居ない事は分かっているが、何となく声を掛けてみる。
ミレイの話では、黒い影が出るって話だ。
しかし、夜に黒い影と言われても、単なる見間違いの可能性も十分ある。
それに、街の子供が忍び込んだだけかも知れない。
「・・・誰も居ませんか~?」
クロエは、もう一度声を上げてみる。
屋敷の中は暗く、窓から差し込んだ光で微かに見えるくらいだ。
反応が無い事を確認したクロエは、ふぅっと安堵の溜息を吐いて、屋敷の中に入った。
バタンッ!
その瞬間、後ろの扉が勝手に閉まり、大きな音が屋敷に響き渡る。
「ひゃあっ!?」
音に驚いて、クロエの肩がビクッと震えた。
慌てて、背後を振り返るが、特に何も居ない。
「何よ、ビックリさせないでよね」
ミレイの言葉をそれほど信じていたわけでは無いが、やはり内心幽霊は怖い。
クロエの肌は鳥肌が立っていた。
「よし!今日からここが私の家よ!」
クロエは気を取り直して屋敷の探索を始めた。
「概ね把握できたわね!」
クロエが王都で住んでいた屋敷ほどでは無いが、ここもかなり広い屋敷だ。
「ベッドや棚みたいな大型家具は残っているみたいだし、掃除すれば活用できそうね!」
中身は殆ど空っぽだったが、生活するには問題無い。
これから少しずつ必要な物を増やしていけば良い。
「問題は人手ね」
王都の屋敷では使用人が100人以上居たので、掃除や片付けに困る事は無かった。
しかし、ここではクロエ1人だ。
流石にこの屋敷を1人で使いこなすのは無理があった。
「まあ、間取りは把握してるし、使う部屋だけ綺麗にすれば良いよね!」
ザックリな間取りはこんな感じだ。
1階:食堂、キッチン、倉庫、浴場
2階:客室、応接室、書庫、保管庫、空き部屋
3階:寝室、執務室、空き部屋
クロエは、3階の寝室を自分の部屋にする事にした。
部屋の中はかなり広く、ベッドも落ちる心配が無いくらい広い。
「ちょっと埃っぽいけど、野宿よりは全然マシよね!」
クロエは、仮面とローブを脱いで、クローゼットにしまった。
「よし!早速お掃除ね!」
クロエは尻尾をブンブン振りながら、気合を入れて、掃除を開始した。
10
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

ダークナイトはやめました
天宮暁
ファンタジー
七剣の都セブンスソード。魔剣士たちの集うその街で、最強にして最凶と恐れられるダークナイトがいた。
その名を、ナイン。畏怖とともにその名を呼ばれる青年は、しかし、ダークナイトをやめようとしていた。
「本当に……いいんですね?」
そう慰留するダークナイト拝剣殿の代表リィンに、ナインは固い決意とともにうなずきを返す。
「守るものができたからな」
闇の魔剣は守るには不向きだ。
自らが討った聖竜ハルディヤ。彼女から託された彼女の「仔」。竜の仔として育てられた少女ルディアを守るため、ナインは闇の魔剣を手放した。
新たに握るのは、誰かを守るのに適した光の魔剣。
ナインは、ホーリーナイトに転職しようとしていた。
「でも、ナインさんはダークナイトの適正がSSSです。その分ホーリーナイトの適正は低いんじゃ?」
そう尋ねるリィンに、ナインは平然と答えた。
「Cだな」
「し、C!? そんな、もったいなさすぎます!」
「だよな。適正SSSを捨ててCなんてどうかしてる」
だが、ナインの決意は変わらない。
――最強と謳われたダークナイトは、いかにして「守る強さ」を手に入れるのか?
強さのみを求めてきた青年と、竜の仔として育てられた娘の、奇妙な共同生活が始まった。
(※ この作品はスマホでの表示に最適化しています。文中で改行が生じるかたは、ピンチインで表示を若干小さくしていただくと型崩れしないと思います。)

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる