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第17話 新しい家
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ミレイから鍵と権利書を受け取ったクロエは、地図を見ながら、購入した幽霊屋敷に来ていた。
「確か、この辺のはずだよね?」
屋敷はイステリアの街から歩いて30分くらいの森の中にあった。
一応、道はあるが、長らく整備されていないので、ほぼ獣道に近い状態だ。
長く伸び切った草を掻き分けながら進んで行くと、大きな門の前に辿り着いた。
「かなり立派な門構えね」
全体的に年季が入っているが、基の作りが良いので、全然劣化していない。
金属の門は魔鉱石で出来ており、魔力の力で錆びる事は無い。
「この魔鉱石だけでもかなりの値打ちね」
やはり買って正解だったと、クロエはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、ミレイから受け取った金色の鍵をポケットから取り出して、鍵穴に差した。
ガチャッと音を立てて、鍵が開く。
門を押すと、軋み音を上げながら、ゆっくりと開いた。
「うわぁ!」
クロエは、思わず感嘆の声を上げてしまう。
門の向こう側には、広大な庭があった。
手入れされていないので、草は伸び切っており、噴水やプールには苔が生えている。
それでも、かつての荘厳さを感じる美しさと迫力があった。
「しっかり手入れし直せば立派な畑になりそうね!」
普通の令嬢なら、薔薇やチューリップなどを植えるのだろうが、クロエは実用的なタイプだった。
これだけの土地があるのなら、野菜や果物を植え放題だ。
地下水があるので、水にも困らないので、自給自足にはもってこいの庭だ。
「そしてあれが、幽霊屋敷ね!」
庭の向こうには、立派な3階建の屋敷が建っていた。
石と木で建てられた屋敷は、やはり、長らく放置されていたせいか、壁には蔦が巻き付いている。
「幽霊屋敷って聞いていたから、もっとボロボロなのを想像していたけど、思ったより綺麗じゃない!」
窓ガラスも割れていないし、屋根に穴も空いていない。
住む分には問題は無さそうだ。
「これが金貨500枚で手に入るなんて、ラッキーね!」
クロエは、嬉しそうにカバンを持って、屋敷に向かって歩き始めた。
「ごめんくださーい!」
屋敷の正面玄関の扉を開けると、外の空気と光が差し込み、中の埃が舞う。
誰も居ない事は分かっているが、何となく声を掛けてみる。
ミレイの話では、黒い影が出るって話だ。
しかし、夜に黒い影と言われても、単なる見間違いの可能性も十分ある。
それに、街の子供が忍び込んだだけかも知れない。
「・・・誰も居ませんか~?」
クロエは、もう一度声を上げてみる。
屋敷の中は暗く、窓から差し込んだ光で微かに見えるくらいだ。
反応が無い事を確認したクロエは、ふぅっと安堵の溜息を吐いて、屋敷の中に入った。
バタンッ!
その瞬間、後ろの扉が勝手に閉まり、大きな音が屋敷に響き渡る。
「ひゃあっ!?」
音に驚いて、クロエの肩がビクッと震えた。
慌てて、背後を振り返るが、特に何も居ない。
「何よ、ビックリさせないでよね」
ミレイの言葉をそれほど信じていたわけでは無いが、やはり内心幽霊は怖い。
クロエの肌は鳥肌が立っていた。
「よし!今日からここが私の家よ!」
クロエは気を取り直して屋敷の探索を始めた。
「概ね把握できたわね!」
クロエが王都で住んでいた屋敷ほどでは無いが、ここもかなり広い屋敷だ。
「ベッドや棚みたいな大型家具は残っているみたいだし、掃除すれば活用できそうね!」
中身は殆ど空っぽだったが、生活するには問題無い。
これから少しずつ必要な物を増やしていけば良い。
「問題は人手ね」
王都の屋敷では使用人が100人以上居たので、掃除や片付けに困る事は無かった。
しかし、ここではクロエ1人だ。
流石にこの屋敷を1人で使いこなすのは無理があった。
「まあ、間取りは把握してるし、使う部屋だけ綺麗にすれば良いよね!」
ザックリな間取りはこんな感じだ。
1階:食堂、キッチン、倉庫、浴場
2階:客室、応接室、書庫、保管庫、空き部屋
3階:寝室、執務室、空き部屋
クロエは、3階の寝室を自分の部屋にする事にした。
部屋の中はかなり広く、ベッドも落ちる心配が無いくらい広い。
「ちょっと埃っぽいけど、野宿よりは全然マシよね!」
クロエは、仮面とローブを脱いで、クローゼットにしまった。
「よし!早速お掃除ね!」
クロエは尻尾をブンブン振りながら、気合を入れて、掃除を開始した。
「確か、この辺のはずだよね?」
屋敷はイステリアの街から歩いて30分くらいの森の中にあった。
一応、道はあるが、長らく整備されていないので、ほぼ獣道に近い状態だ。
長く伸び切った草を掻き分けながら進んで行くと、大きな門の前に辿り着いた。
「かなり立派な門構えね」
全体的に年季が入っているが、基の作りが良いので、全然劣化していない。
金属の門は魔鉱石で出来ており、魔力の力で錆びる事は無い。
「この魔鉱石だけでもかなりの値打ちね」
やはり買って正解だったと、クロエはニヤリと笑みを浮かべた。
そして、ミレイから受け取った金色の鍵をポケットから取り出して、鍵穴に差した。
ガチャッと音を立てて、鍵が開く。
門を押すと、軋み音を上げながら、ゆっくりと開いた。
「うわぁ!」
クロエは、思わず感嘆の声を上げてしまう。
門の向こう側には、広大な庭があった。
手入れされていないので、草は伸び切っており、噴水やプールには苔が生えている。
それでも、かつての荘厳さを感じる美しさと迫力があった。
「しっかり手入れし直せば立派な畑になりそうね!」
普通の令嬢なら、薔薇やチューリップなどを植えるのだろうが、クロエは実用的なタイプだった。
これだけの土地があるのなら、野菜や果物を植え放題だ。
地下水があるので、水にも困らないので、自給自足にはもってこいの庭だ。
「そしてあれが、幽霊屋敷ね!」
庭の向こうには、立派な3階建の屋敷が建っていた。
石と木で建てられた屋敷は、やはり、長らく放置されていたせいか、壁には蔦が巻き付いている。
「幽霊屋敷って聞いていたから、もっとボロボロなのを想像していたけど、思ったより綺麗じゃない!」
窓ガラスも割れていないし、屋根に穴も空いていない。
住む分には問題は無さそうだ。
「これが金貨500枚で手に入るなんて、ラッキーね!」
クロエは、嬉しそうにカバンを持って、屋敷に向かって歩き始めた。
「ごめんくださーい!」
屋敷の正面玄関の扉を開けると、外の空気と光が差し込み、中の埃が舞う。
誰も居ない事は分かっているが、何となく声を掛けてみる。
ミレイの話では、黒い影が出るって話だ。
しかし、夜に黒い影と言われても、単なる見間違いの可能性も十分ある。
それに、街の子供が忍び込んだだけかも知れない。
「・・・誰も居ませんか~?」
クロエは、もう一度声を上げてみる。
屋敷の中は暗く、窓から差し込んだ光で微かに見えるくらいだ。
反応が無い事を確認したクロエは、ふぅっと安堵の溜息を吐いて、屋敷の中に入った。
バタンッ!
その瞬間、後ろの扉が勝手に閉まり、大きな音が屋敷に響き渡る。
「ひゃあっ!?」
音に驚いて、クロエの肩がビクッと震えた。
慌てて、背後を振り返るが、特に何も居ない。
「何よ、ビックリさせないでよね」
ミレイの言葉をそれほど信じていたわけでは無いが、やはり内心幽霊は怖い。
クロエの肌は鳥肌が立っていた。
「よし!今日からここが私の家よ!」
クロエは気を取り直して屋敷の探索を始めた。
「概ね把握できたわね!」
クロエが王都で住んでいた屋敷ほどでは無いが、ここもかなり広い屋敷だ。
「ベッドや棚みたいな大型家具は残っているみたいだし、掃除すれば活用できそうね!」
中身は殆ど空っぽだったが、生活するには問題無い。
これから少しずつ必要な物を増やしていけば良い。
「問題は人手ね」
王都の屋敷では使用人が100人以上居たので、掃除や片付けに困る事は無かった。
しかし、ここではクロエ1人だ。
流石にこの屋敷を1人で使いこなすのは無理があった。
「まあ、間取りは把握してるし、使う部屋だけ綺麗にすれば良いよね!」
ザックリな間取りはこんな感じだ。
1階:食堂、キッチン、倉庫、浴場
2階:客室、応接室、書庫、保管庫、空き部屋
3階:寝室、執務室、空き部屋
クロエは、3階の寝室を自分の部屋にする事にした。
部屋の中はかなり広く、ベッドも落ちる心配が無いくらい広い。
「ちょっと埃っぽいけど、野宿よりは全然マシよね!」
クロエは、仮面とローブを脱いで、クローゼットにしまった。
「よし!早速お掃除ね!」
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