14 / 29
第14話 影
しおりを挟む
朝の森は清々しい空気に満たされていた。
小鳥達が歌う様に囀り、陽の光を浴びて気持ち良さそうに飛び立った。
「・・・いつの間に寝てたのかな?」
クロエは、木の幹の側で全裸で目を覚ました。
まるで、昨日の事が夢だったのでは無いかと思ってしまうくらい清々しい気分だ。
起き上がって周りを見渡してみるが、既にガルムは何処かに消えてしまった後だった。
「取り敢えず、食べられなかったから良かったのかな」
服従のポーズは、今思い出しても恥ずかしくて顔が熱くなるが、自分の気持ちが伝わったのは、少し嬉しかった。
少しだけ摘み食いされた気分だが、気持ち良かったので、良しとする。
出来れば、最後まで・・・
「はぁ~、ダメね、私、どんどんおかしくなってるわ」
クロエは頭を横に振り、邪念を振り払う。
自分の獣の部分が日に日に増している。
そして、その分だけ人間性を失っている気がした。
「犬と交尾なんて・・・絶対おかしいんだから」
自分はそんな変態では無い。
自分は人間だ。
自分は・・・
クロエは、自分の顔をバシッと叩いて、気を取り直した。
「クヨクヨ悩むのはやめね!」
クロエは立ち上がると、落ちていたシャツとホットパンツに着替えた。
「うわぁ、全身ベトベト、また水浴びしないと・・・」
ガルムの唾液やオシッコに自分の体液で身体がベタベタになっていた。
匂いも気になるし、マーキングの香りが残っていると、また暴走しかねない。
仕方ないので、再び小川の流れている方向を目指して歩き始めた。
その瞬間、クロエの影がゆらりと不自然に揺れた事に、クロエは気付かなかった。
その頃、クロイツェル家に、ジョシュア・ハートフィリアが訪れていた。
「一体、どういう事ですかな?」
応接室に案内されたジョシュアは、ロイド・クロイツェルを睨む。
クロエが行方不明になり、婚約式を中止してから、ジョシュアはクロイツェル家に対して婚約破棄の申し入れをした。
しかし、書面で正式に出したのにも関わらず、2ヶ月近く放置されているので、わざわざクロイツェル家に訪問したのだった。
「何の事でしょうか?」
ロイドは、冷たい視線をジョシュアに向ける。
若干17歳とは言え、ソードマスターの称号は伊達では無い。
鋭い目つきに、ジョシュアは、気圧されそうになるのをグッと堪えた。
「しらばっくれないで貰いたい、クロエとの婚約破棄の申し入れをしたのに、何故無視するのですか?」
本来なら、婚約式を前に娘が家出したハートフィリア家に責任が有り、クロイツェル家の方から婚約破棄の申し入れをしてくるのが当然だ。
だが、何故かクロイツェル家は、いつまで経っても、クロエとの婚約を解消する気配が無い。
クロエが家出をした原因がクロイツェル家との婚約だと考えたジョシュアは、痺れを切らして、ハートフィリア家の方から婚約破棄を申し入れた。
本来なら格下の家門から婚約破棄を申し込むのは、マナーに反する行為だが、少しでもクロエがハートフィリア家に戻って来やすい様に、一刻も早く婚約破棄の知らせを国中に知らしめる必要があった。
ロイドとの婚約が解消すれば、きっとクロエも帰って来てくれるはずだ。
ジョシュアは、そう信じていた。
「僕はクロエとの婚約を破棄するつもりはない」
ロイドは、冷たく言い放つ。
「なっ、何故ですか!?ロイド殿には、いくらでもお相手がいるではありませんか!?」
ロイド・クロイツェルは、王国唯一の公爵家であり、絶世の美男子だ。
クロエは確かに美少女だし、出来た娘だが、逃げ出した娘にそこまで執着する意図が分からない。
クロエが行方不明になった事は既に社交界で噂になっており、令嬢を持つ有力家門の多くは、いつ婚約破棄を発表するのかを今か今かと待ち望んでいる状況だ。
「クロエじゃなきゃダメなんだ、ハートフィリア家の当主なら、分かりますよね?」
ジョシュアは、ロイドがハートフィリア家の持つ資産に執着しているのだと判断して、歯を食いしばる。
「良いでしょう、婚約破棄の慰謝料として、ハートフィリア家の保有する資産の半分を差し上げます、だから、婚約破棄を・・・」
「そんなモノは必要有りません」
ロイドは、間髪入れずにジョシュアの提案を拒否した。
「ならば、何が目的なんだ?」
ジョシュアは、ロイドの目的が分からず、困惑する。
「まあ、もう少し待って下さい、必ず僕がクロエを連れ戻して見せます」
ロイドは、ニヤリと笑みを浮かべた。
その狂気じみた表情を見て、ジョシュアは、不安が込み上げる。
やはり、この男に嫁がせるべきでは無かったのかも知れないと、ジョシュアは後悔していた。
小鳥達が歌う様に囀り、陽の光を浴びて気持ち良さそうに飛び立った。
「・・・いつの間に寝てたのかな?」
クロエは、木の幹の側で全裸で目を覚ました。
まるで、昨日の事が夢だったのでは無いかと思ってしまうくらい清々しい気分だ。
起き上がって周りを見渡してみるが、既にガルムは何処かに消えてしまった後だった。
「取り敢えず、食べられなかったから良かったのかな」
服従のポーズは、今思い出しても恥ずかしくて顔が熱くなるが、自分の気持ちが伝わったのは、少し嬉しかった。
少しだけ摘み食いされた気分だが、気持ち良かったので、良しとする。
出来れば、最後まで・・・
「はぁ~、ダメね、私、どんどんおかしくなってるわ」
クロエは頭を横に振り、邪念を振り払う。
自分の獣の部分が日に日に増している。
そして、その分だけ人間性を失っている気がした。
「犬と交尾なんて・・・絶対おかしいんだから」
自分はそんな変態では無い。
自分は人間だ。
自分は・・・
クロエは、自分の顔をバシッと叩いて、気を取り直した。
「クヨクヨ悩むのはやめね!」
クロエは立ち上がると、落ちていたシャツとホットパンツに着替えた。
「うわぁ、全身ベトベト、また水浴びしないと・・・」
ガルムの唾液やオシッコに自分の体液で身体がベタベタになっていた。
匂いも気になるし、マーキングの香りが残っていると、また暴走しかねない。
仕方ないので、再び小川の流れている方向を目指して歩き始めた。
その瞬間、クロエの影がゆらりと不自然に揺れた事に、クロエは気付かなかった。
その頃、クロイツェル家に、ジョシュア・ハートフィリアが訪れていた。
「一体、どういう事ですかな?」
応接室に案内されたジョシュアは、ロイド・クロイツェルを睨む。
クロエが行方不明になり、婚約式を中止してから、ジョシュアはクロイツェル家に対して婚約破棄の申し入れをした。
しかし、書面で正式に出したのにも関わらず、2ヶ月近く放置されているので、わざわざクロイツェル家に訪問したのだった。
「何の事でしょうか?」
ロイドは、冷たい視線をジョシュアに向ける。
若干17歳とは言え、ソードマスターの称号は伊達では無い。
鋭い目つきに、ジョシュアは、気圧されそうになるのをグッと堪えた。
「しらばっくれないで貰いたい、クロエとの婚約破棄の申し入れをしたのに、何故無視するのですか?」
本来なら、婚約式を前に娘が家出したハートフィリア家に責任が有り、クロイツェル家の方から婚約破棄の申し入れをしてくるのが当然だ。
だが、何故かクロイツェル家は、いつまで経っても、クロエとの婚約を解消する気配が無い。
クロエが家出をした原因がクロイツェル家との婚約だと考えたジョシュアは、痺れを切らして、ハートフィリア家の方から婚約破棄を申し入れた。
本来なら格下の家門から婚約破棄を申し込むのは、マナーに反する行為だが、少しでもクロエがハートフィリア家に戻って来やすい様に、一刻も早く婚約破棄の知らせを国中に知らしめる必要があった。
ロイドとの婚約が解消すれば、きっとクロエも帰って来てくれるはずだ。
ジョシュアは、そう信じていた。
「僕はクロエとの婚約を破棄するつもりはない」
ロイドは、冷たく言い放つ。
「なっ、何故ですか!?ロイド殿には、いくらでもお相手がいるではありませんか!?」
ロイド・クロイツェルは、王国唯一の公爵家であり、絶世の美男子だ。
クロエは確かに美少女だし、出来た娘だが、逃げ出した娘にそこまで執着する意図が分からない。
クロエが行方不明になった事は既に社交界で噂になっており、令嬢を持つ有力家門の多くは、いつ婚約破棄を発表するのかを今か今かと待ち望んでいる状況だ。
「クロエじゃなきゃダメなんだ、ハートフィリア家の当主なら、分かりますよね?」
ジョシュアは、ロイドがハートフィリア家の持つ資産に執着しているのだと判断して、歯を食いしばる。
「良いでしょう、婚約破棄の慰謝料として、ハートフィリア家の保有する資産の半分を差し上げます、だから、婚約破棄を・・・」
「そんなモノは必要有りません」
ロイドは、間髪入れずにジョシュアの提案を拒否した。
「ならば、何が目的なんだ?」
ジョシュアは、ロイドの目的が分からず、困惑する。
「まあ、もう少し待って下さい、必ず僕がクロエを連れ戻して見せます」
ロイドは、ニヤリと笑みを浮かべた。
その狂気じみた表情を見て、ジョシュアは、不安が込み上げる。
やはり、この男に嫁がせるべきでは無かったのかも知れないと、ジョシュアは後悔していた。
10
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説

会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。


強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。

憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

身体強化って、何気にチートじゃないですか!?
ルーグイウル
ファンタジー
病弱で寝たきりの少年「立原隆人」はある日他界する。そんな彼の意志に残ったのは『もっと強い体が欲しい』。
そんな彼の意志と強靭な魂は世界の壁を越え異世界へとたどり着く。でも目覚めたのは真っ暗なダンジョンの奥地で…?
これは異世界で新たな肉体を得た立原隆人-リュートがパワーレベリングして得たぶっ飛んだレベルとチートっぽいスキルをひっさげアヴァロンを王道ルートまっしぐら、テンプレート通りに謳歌する物語。
初投稿作品です。つたない文章だと思いますが温かい目で見ていただけたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる