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第14話 影
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朝の森は清々しい空気に満たされていた。
小鳥達が歌う様に囀り、陽の光を浴びて気持ち良さそうに飛び立った。
「・・・いつの間に寝てたのかな?」
クロエは、木の幹の側で全裸で目を覚ました。
まるで、昨日の事が夢だったのでは無いかと思ってしまうくらい清々しい気分だ。
起き上がって周りを見渡してみるが、既にガルムは何処かに消えてしまった後だった。
「取り敢えず、食べられなかったから良かったのかな」
服従のポーズは、今思い出しても恥ずかしくて顔が熱くなるが、自分の気持ちが伝わったのは、少し嬉しかった。
少しだけ摘み食いされた気分だが、気持ち良かったので、良しとする。
出来れば、最後まで・・・
「はぁ~、ダメね、私、どんどんおかしくなってるわ」
クロエは頭を横に振り、邪念を振り払う。
自分の獣の部分が日に日に増している。
そして、その分だけ人間性を失っている気がした。
「犬と交尾なんて・・・絶対おかしいんだから」
自分はそんな変態では無い。
自分は人間だ。
自分は・・・
クロエは、自分の顔をバシッと叩いて、気を取り直した。
「クヨクヨ悩むのはやめね!」
クロエは立ち上がると、落ちていたシャツとホットパンツに着替えた。
「うわぁ、全身ベトベト、また水浴びしないと・・・」
ガルムの唾液やオシッコに自分の体液で身体がベタベタになっていた。
匂いも気になるし、マーキングの香りが残っていると、また暴走しかねない。
仕方ないので、再び小川の流れている方向を目指して歩き始めた。
その瞬間、クロエの影がゆらりと不自然に揺れた事に、クロエは気付かなかった。
その頃、クロイツェル家に、ジョシュア・ハートフィリアが訪れていた。
「一体、どういう事ですかな?」
応接室に案内されたジョシュアは、ロイド・クロイツェルを睨む。
クロエが行方不明になり、婚約式を中止してから、ジョシュアはクロイツェル家に対して婚約破棄の申し入れをした。
しかし、書面で正式に出したのにも関わらず、2ヶ月近く放置されているので、わざわざクロイツェル家に訪問したのだった。
「何の事でしょうか?」
ロイドは、冷たい視線をジョシュアに向ける。
若干17歳とは言え、ソードマスターの称号は伊達では無い。
鋭い目つきに、ジョシュアは、気圧されそうになるのをグッと堪えた。
「しらばっくれないで貰いたい、クロエとの婚約破棄の申し入れをしたのに、何故無視するのですか?」
本来なら、婚約式を前に娘が家出したハートフィリア家に責任が有り、クロイツェル家の方から婚約破棄の申し入れをしてくるのが当然だ。
だが、何故かクロイツェル家は、いつまで経っても、クロエとの婚約を解消する気配が無い。
クロエが家出をした原因がクロイツェル家との婚約だと考えたジョシュアは、痺れを切らして、ハートフィリア家の方から婚約破棄を申し入れた。
本来なら格下の家門から婚約破棄を申し込むのは、マナーに反する行為だが、少しでもクロエがハートフィリア家に戻って来やすい様に、一刻も早く婚約破棄の知らせを国中に知らしめる必要があった。
ロイドとの婚約が解消すれば、きっとクロエも帰って来てくれるはずだ。
ジョシュアは、そう信じていた。
「僕はクロエとの婚約を破棄するつもりはない」
ロイドは、冷たく言い放つ。
「なっ、何故ですか!?ロイド殿には、いくらでもお相手がいるではありませんか!?」
ロイド・クロイツェルは、王国唯一の公爵家であり、絶世の美男子だ。
クロエは確かに美少女だし、出来た娘だが、逃げ出した娘にそこまで執着する意図が分からない。
クロエが行方不明になった事は既に社交界で噂になっており、令嬢を持つ有力家門の多くは、いつ婚約破棄を発表するのかを今か今かと待ち望んでいる状況だ。
「クロエじゃなきゃダメなんだ、ハートフィリア家の当主なら、分かりますよね?」
ジョシュアは、ロイドがハートフィリア家の持つ資産に執着しているのだと判断して、歯を食いしばる。
「良いでしょう、婚約破棄の慰謝料として、ハートフィリア家の保有する資産の半分を差し上げます、だから、婚約破棄を・・・」
「そんなモノは必要有りません」
ロイドは、間髪入れずにジョシュアの提案を拒否した。
「ならば、何が目的なんだ?」
ジョシュアは、ロイドの目的が分からず、困惑する。
「まあ、もう少し待って下さい、必ず僕がクロエを連れ戻して見せます」
ロイドは、ニヤリと笑みを浮かべた。
その狂気じみた表情を見て、ジョシュアは、不安が込み上げる。
やはり、この男に嫁がせるべきでは無かったのかも知れないと、ジョシュアは後悔していた。
小鳥達が歌う様に囀り、陽の光を浴びて気持ち良さそうに飛び立った。
「・・・いつの間に寝てたのかな?」
クロエは、木の幹の側で全裸で目を覚ました。
まるで、昨日の事が夢だったのでは無いかと思ってしまうくらい清々しい気分だ。
起き上がって周りを見渡してみるが、既にガルムは何処かに消えてしまった後だった。
「取り敢えず、食べられなかったから良かったのかな」
服従のポーズは、今思い出しても恥ずかしくて顔が熱くなるが、自分の気持ちが伝わったのは、少し嬉しかった。
少しだけ摘み食いされた気分だが、気持ち良かったので、良しとする。
出来れば、最後まで・・・
「はぁ~、ダメね、私、どんどんおかしくなってるわ」
クロエは頭を横に振り、邪念を振り払う。
自分の獣の部分が日に日に増している。
そして、その分だけ人間性を失っている気がした。
「犬と交尾なんて・・・絶対おかしいんだから」
自分はそんな変態では無い。
自分は人間だ。
自分は・・・
クロエは、自分の顔をバシッと叩いて、気を取り直した。
「クヨクヨ悩むのはやめね!」
クロエは立ち上がると、落ちていたシャツとホットパンツに着替えた。
「うわぁ、全身ベトベト、また水浴びしないと・・・」
ガルムの唾液やオシッコに自分の体液で身体がベタベタになっていた。
匂いも気になるし、マーキングの香りが残っていると、また暴走しかねない。
仕方ないので、再び小川の流れている方向を目指して歩き始めた。
その瞬間、クロエの影がゆらりと不自然に揺れた事に、クロエは気付かなかった。
その頃、クロイツェル家に、ジョシュア・ハートフィリアが訪れていた。
「一体、どういう事ですかな?」
応接室に案内されたジョシュアは、ロイド・クロイツェルを睨む。
クロエが行方不明になり、婚約式を中止してから、ジョシュアはクロイツェル家に対して婚約破棄の申し入れをした。
しかし、書面で正式に出したのにも関わらず、2ヶ月近く放置されているので、わざわざクロイツェル家に訪問したのだった。
「何の事でしょうか?」
ロイドは、冷たい視線をジョシュアに向ける。
若干17歳とは言え、ソードマスターの称号は伊達では無い。
鋭い目つきに、ジョシュアは、気圧されそうになるのをグッと堪えた。
「しらばっくれないで貰いたい、クロエとの婚約破棄の申し入れをしたのに、何故無視するのですか?」
本来なら、婚約式を前に娘が家出したハートフィリア家に責任が有り、クロイツェル家の方から婚約破棄の申し入れをしてくるのが当然だ。
だが、何故かクロイツェル家は、いつまで経っても、クロエとの婚約を解消する気配が無い。
クロエが家出をした原因がクロイツェル家との婚約だと考えたジョシュアは、痺れを切らして、ハートフィリア家の方から婚約破棄を申し入れた。
本来なら格下の家門から婚約破棄を申し込むのは、マナーに反する行為だが、少しでもクロエがハートフィリア家に戻って来やすい様に、一刻も早く婚約破棄の知らせを国中に知らしめる必要があった。
ロイドとの婚約が解消すれば、きっとクロエも帰って来てくれるはずだ。
ジョシュアは、そう信じていた。
「僕はクロエとの婚約を破棄するつもりはない」
ロイドは、冷たく言い放つ。
「なっ、何故ですか!?ロイド殿には、いくらでもお相手がいるではありませんか!?」
ロイド・クロイツェルは、王国唯一の公爵家であり、絶世の美男子だ。
クロエは確かに美少女だし、出来た娘だが、逃げ出した娘にそこまで執着する意図が分からない。
クロエが行方不明になった事は既に社交界で噂になっており、令嬢を持つ有力家門の多くは、いつ婚約破棄を発表するのかを今か今かと待ち望んでいる状況だ。
「クロエじゃなきゃダメなんだ、ハートフィリア家の当主なら、分かりますよね?」
ジョシュアは、ロイドがハートフィリア家の持つ資産に執着しているのだと判断して、歯を食いしばる。
「良いでしょう、婚約破棄の慰謝料として、ハートフィリア家の保有する資産の半分を差し上げます、だから、婚約破棄を・・・」
「そんなモノは必要有りません」
ロイドは、間髪入れずにジョシュアの提案を拒否した。
「ならば、何が目的なんだ?」
ジョシュアは、ロイドの目的が分からず、困惑する。
「まあ、もう少し待って下さい、必ず僕がクロエを連れ戻して見せます」
ロイドは、ニヤリと笑みを浮かべた。
その狂気じみた表情を見て、ジョシュアは、不安が込み上げる。
やはり、この男に嫁がせるべきでは無かったのかも知れないと、ジョシュアは後悔していた。
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