呪われた令嬢の辺境スローライフ

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第13話 ガルム

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 静まり返った夜の森に発情した雌犬の甘い吐息が漏れる。

「アッ、こんな事・・・ダメなのに・・・んっ」

 マーキングの匂いに当てられたクロエは、まるで媚薬を飲まされたかの様に全身が熱って、興奮していた。
 理性が吹っ飛び、性欲を抑える事が出来ない。

 クロエは、自らの手で慰めながら、顔を木の幹に近付けた。
 マーキングの強い雄の香りが鼻に付き、脳を麻痺させる。

「ハァッ、ダメ・・・我慢出来ない」

 クロエは、抑え切れない欲望に身を任せて、舌を出してマーキングを舐めた。

「ハウッ!?」

 その瞬間、全身に電気が走ったかの様に快感が突き抜けた。
 一瞬にして、絶頂を迎えたにも関わらず、クロエの身体の火照りは治る気配は無い。

「本当に、どうしようもない獣ね」

 右手の指を止められず、クロエは、自分が浅ましい獣に成り下がった事を自覚して、自己嫌悪する。
 
「グルルルル!」

 時刻も深夜になり、クロエが何度目かの絶頂を迎えた頃、闇の中から1匹の獣が姿を現した。
 艶やかな漆黒の毛皮は、闇の様に暗く、炎の様に赤く凛々しい瞳は真っ直ぐにクロエを睨んでいる。
 全長は3m以上あり、鋭い牙を剥き出しに唸り声を上げていた。

「あっ・・・ヤバ」

 自慰行為に夢中になっていたクロエは、慌てて立ちあがろうとするが、逝き過ぎて、脚が産まれたての子鹿の様に震えている。

 とてもじゃないが、戦える状態では無い。
 しかも、現れたのは、Aランクの魔犬ガルムだ。
 闇の魔力を持っており、非常に好戦的な魔物だ。
 しかも、縄張りを荒らされたと思っているのか、酷く御立腹の様子だ。

 クロエは、真面に戦っても勝ち目が無いと本能的に分かっていた。
 ガルムはAランクとは言え、実際のところは限りなくSランクに近い力を持っている。
 Sランクの魔物と言えば、ドラゴンや神獣と呼ばれる様な伝説級の魔物達であり、ガルムはドラゴンに次ぐ力があると言う事だ。

 しかし、ガルムはジリジリと距離を詰めながら、慎重に様子を伺っている。
 今のクロエは石像の呪いにより、Aランク並みの力がある。
 ガルムより劣るとは言え、警戒に値する相手であり、油断する事無く身構えていた。
 だが、それはつまり、それだけ知能が高いと言うことだ。
 人間と獣の1番の違いは頭脳だ。
 本能に従い真っ直ぐに突き進むだけの獣なら、まだどうにか出来たかも知れない。
 しかし、考える獣が相手では、肉体的にも劣る人間に勝ち目は無い。

「なるほど、このマーキングは君のだったんだね、道理で魅力的な匂いがするわけだ」

 その言葉は嘘ではなかった。
 クロエが最初にガルムを見た瞬間に思った事は、「素敵」だったからだ。
 逞しい肉体に、美しい毛並み、そして凛々しい顔付きに、胸がときめいて、心臓の音がうるさいくらいだ。
 今まで見た雄の中で、1番性的に興奮してしまったのは間違いない。

 だから、クロエは闘いたくなかった。

「ごめんなさい、敵意は無いの」
 
 クロエは、慎重に敵意がない事を示す為に、ゆっくりと仰向けに倒れた。
 ガルムの知能が高いと言うことは、互いに理解し合える可能性が残っているかも知れない。

「やっぱり、これしか無いよね?」

 犬の本能で、クロエは敵意が無い事を伝える方法を知っていた。

 服従する事だ。

「ほ、ほら!私は敵じゃ無いよ?」

 クロエは、腹を出して手を上にし、股を開いた。
 いわゆる服従のポーズだ。
 非常に恥ずかしい格好であり、大事な部分を全て曝け出した姿に、クロエは赤面した。
 余りの恥ずかしさで、穴があったら入りたいくらいだが、今は必死に耐える。

「グルル?」

 クロエの想いが伝わったのか、ガルムの警戒が少し緩んだ。
 まるで、同族の仲間か確認するかの様に、鼻をクロエの下腹部に近付けて、クンクンと匂いを嗅いでいる。
 
「アヒッ、鼻息がくすぐったいよ・・・」

 犬の荒い息が肌を撫でるので、思わず声が出てしまった。
 しかし、ガルムは、まだ納得がいかないのか、長い舌を出して、クロエの股を舐め上げた。

「ふぐぅっ!?」

 予期せぬ快感に、クロエの身体がビクンッと跳ね上がった。

「な、何を!? ひっ!?」

 ガルムは、無我夢中でクロエのアソコを舐め続ける。
 快感を強制されるクロエは、服従のポーズで抵抗する事も出来ずに、何度も絶頂してしまう。

「アッ、だめ、もう逝かせないで・・・」

 いつの間にか、クロエは頭が真っ白になり、意識を失っていた。

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