呪われた令嬢の辺境スローライフ

文字の大きさ
上 下
4 / 29

第4話 王都脱出

しおりを挟む
全ての準備が整った。後は静かに眠っている役者達を起こすだけだ。
俺は二人を強引に揺する。
「......お兄ちゃん、どうしたの」
 寝ぼけた『八人目』が、俺の正体に気がついたのかと、一瞬ドキリとしたが、どうやらそうではないようだ。
「......え? なに? 私縛られてる? お兄ちゃん助けて!!」
 完全に目が覚めた『八人目』は、目の前の俺を無視し、俺を探している。その叫び声で、『七人目』も目が覚めたようだ。
『......お前は誰だ。泥棒か?』
 いつものように、冷静な『七人目』は質問してくる。
「僕は泥棒ではありません。ただ、あなたたちにショーに出演して欲しいだけです」
 ボイスチェンジャーで変えた声は、まるで他人の話を聞いている気分になる。
「......それで、何をすればいいんだ」
 俺をじっと睨み付けながら、『八人目』は聞いてきた。
「ちょっと待ってください。今ショーの内容を説明します。まず僕は、脚本家兼観客です。家族愛の美しさを題材にした、感動の物語。ああ! 素晴らしい!」
 俺は両手を広げ、拍手が起きるのを待った。しかし、『八人目』の啜り泣くような泣き声以外なにも聞こえない。残念だ。
 俺はため息をつき、説明を始める。
「とりあえず、あなた達二人以外の方には、人質として拘束させてもらってます。もし反抗するようなら、人質は殺します」
 俺はそう言うと、ボイスレコーダーのスイッチをオンにする。
『......俺と母さんは、誘拐されたらしい。見張りの男も数人いるみたいだ――』
 そこまで再生すると、俺はスイッチをオフにした。自前に俺の声を録音しておいた。もしかしたら俺も、役者としての才能があるのかもしれない。
「お兄ちゃんとお母さんは無事なんですか!」
 突然、泣いていた『八人目』が叫ぶように聞いてきた。
「大丈夫です。脚本通りに動きさえすれば、無事に解放します」
 俺がそう言うと、安心したようにため息をついた。
「それで、何をさせるつもりだ」
『七人目』が、冷静に尋ねてくる。
 いつもこうだ。俺の父はどんな時でも冷静だ。慌てず、落ち着いている。
「それでは、第一幕の始まりです」
 俺がそう言うと、二人の顔を順に見つめた。恐怖と驚きの表情が張り付いている。
「昔々あるところに、家族を人質に取られた父と妹がいました。そして家族を誘拐した犯人は言いました。人質を解放して欲しければ、家族の愛を示せと。父は、少し考え言いました。分かった。何よりも深い愛情表現をお見せしよう」
 俺は言葉を切り、無言で拳銃と包丁を取り出した。『七人目』と『八人目』が恐怖の表情のまま、固まる。
 俺は二人に近づいていき、手足を固定していたタイラップを切った。
『七人目』、いや、父は、恐怖を堪えるように唇を噛み締めていた。
『八人目』である妹のあおいはしゃくりあげながら、ぶるぶると震えている。
 二人の拘束を解き、目の前に戻ってきた俺は拳銃を構えながら命令する。
「今すぐに最高の愛情表現、つまりお前達二人で性交しろ。神ですら近親相姦しているんだ。何の問題も無い。拒否すれば人質は殺す。やれ」
 俺はそう言うと、銃口を向けた。

「............」
「............」
 二人とも、口を塞がれている訳でもないのに、一言も話さない。
 俺は、銃口を葵に向ける。縮こまっていた体がびくりと震え、心の底から恐怖が滲み出ているような表情を見せた。
「まず君が服を脱いで」
 俺は、葵が怯えないよう、できるだけ優しい声で命令した。
 しかし、葵はブルブル震えながら、胸を隠すように腕を体の前でクロスさせた。そうすることで、自分の身体からだを守っているつもりなのだろう。
 俺は、ショーを円滑に進めるため、ある提案をする。
「わかりました。服を脱がないならしょうがないですね。貴方の母と兄を殺します」
 俺は、ゆっくりと携帯電話をポケットから出すと、耳に当てた。もちろん誰かに電話をかけている訳ではない。
 葵が、自分が父から犯される屈辱と、大好きな母と兄の命を、天秤にかける時間を与えているだけだ。
「......分かりました......すぐに脱ぎますから、兄と母は殺さないでください......」
 小さな声でそう言うと、よろよろと立ち上がり、震える手でパジャマのボタンを外し始めた。しかし、震える手では上手く外すことはできない。時間をかけて、ゆっくりと五つ全てのボタンを外し終え、静かに床に脱ぎ捨てた。
 キャミソール一枚になった上半身には、成長途中のつぼみが、布越しに二つ透けて見えた。
 俺はまさか、実の妹のストリップショーを見ることになろうとは夢にも思わなかった。この背徳感は癖になりそうだ。もっとも、二回目は存在しないが。
 葵は、やはり抵抗があるのだろう。つぼみを隠しているキャミソールを脱がずに、ズボンから脱ぎ始めた。左右の足をするりと抜き取り、やはり床に脱ぎ捨てる。
 小麦色の日焼けの跡が、パンティーのすぐ下まで侵食している。健康的な足は程好い肉付きで、パンティーの下に隠されている骨盤は、まだ開ききってはいなかった。
葵の動きがここで止まる。理性では脱がなければ、母と兄が殺されてしまう事は分かっているはずだ。
 しかし、本能がこれ以上肌を他人に晒すことを、拒否しているようだった。
「あと十秒でキャミソールを脱げ。脱がなければお前の兄は死ぬ」
 俺は、助け船を出してやった。これで葵は脱ぐしかない。
 決心したようにキャミソールのすそを掴み、一気に脱ぎ捨てた。中から、つぼみがこぼれ、初めて人目に触れたかのような、ピンク色の乳首が『ピン』と立っていた。
 すると葵は突然泣き出し、しゃがみこんでしまった。
「次はパンティーを脱いでください。また十秒以内ですよ」
 俺はカウントダウンを始めた。十、九、八、七、六、五、ここまでカウントした所で、しゃがみこんだまま、器用にパンティーを脱ぎ始めた。
「よく見えません。起立してください」
 俺がそう言うと、のろのろと時間をかけ、立ち上がった。しかし、恥丘ちきゅうと乳房は頑なに見せようとせず、左右の手で必死に隠している。
「手は後ろに組んで」
 俺がそう言うと、小刻みに震え、目から大粒の涙を流し、ついに手を後ろ手に組んだ。胸のつぼみも、恥丘ちきゅうも、身体の全てをさらけ出した瞬間だった。
 そして、今だ何者も触れた事の無い恥丘ちきゅうには、一本の毛も生えていなかった。その下にあるクレバスからは、今まさに蛇を迎え入れようと涙を流していた。
 そして、涙は股を伝って落ちていく――。
 俺はその様子を観察しながら、『七人目』に命令した。
「立って」
 その簡単な命令を、父は聞き入れようとしない。その間にも、葵は涙を流し続けていた。
「立て。これが最後のチャンスだ」
 俺がそう言うと、観念したように立ち上がった。
 ――その股間には、必死に外へ出てこようとしている蛇が住んでいた。パンパンに膨れ上がり、巣穴を見つけ、今にも潜り込まんとする蛇がのたうち回っていた――。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不死の果実は誰のために!

印象に残る名前
ファンタジー
『その果実を口にしたものは、永遠の命を手に入れる』 そんな言い伝えを、誰もが知っている世界。 人より魔力が多いことだけが自慢である少年のサクヤは、ある日、『祝福者』と呼ばれる特別な力を持つ少女と出会う。 たった一人で戦場を蹂躙することさえできるその少女の口から語られるのは、自身の持つ力ついての秘密、言い伝えの裏側。 そして、少女は告げる。「あなたには私の傍にいてほしいの。私が一生面倒を見てあげるっ!」 これは、少年と少女が果たした運命の出会いから始まる、不死の果実を巡る戦いの物語。 ※なろうでも公開しています。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...