3 / 29
第3話 犬の石像
しおりを挟む
結局、ジョシュア・ハートフィリアが屋敷に帰ってきたのは、3日後の昼になってからだった。
鉱山で発見されたダンジョンは予想以上に深く、強力だった。
先行して潜ったBランク冒険者パーティーは全滅してしまった為、ジョシュアは仕方なく大金を叩いて、Aランク冒険者パーティーである紅の剣を雇った。
ダンジョンは、邪神エキドナの力が関与していたらしく、上位種のウェアウルフやヘルハウンドなどの非常に強力な魔犬が多く生息していた為、紅の剣も苦戦を強いられた。
だが、ダンジョンが強いという事は、それだけ強大な魔力を有している証拠であり、発掘される宝や魔導具も強力な物が多かった。
なんとか、ダンジョンの破壊に成功したジョシュアは、娘に知らせる為に、寝る間も惜しんで急いで屋敷に帰ってきた。
「お土産は喜んでくれるだろうか?」
ジョシュアが手にしているのは、犬の形をした石像だった。
ダンジョンの最奥の部屋に置かれていた物らしいが、何故か持ち帰りたくなり、クロエへのお土産に持って帰ってきた。
何か文字が刻まれているが、古代語なので読めないが、特段、魔力は込められていないらしいので、害は無いだろうとの事だった。
「確か、クロエは古代語も勉強していたから、興味があると良いんだが」
屋敷のドアが開くと、愛しい娘のクロエが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お父様」
可愛らしい娘の笑顔を見た瞬間、ジョシュアの溜まっていた疲れが吹き飛んだ。
「ああ、ただいま」
「ダンジョンの問題は無事に解決した様ですね」
クロエは、安堵した表情で頬を掻きながら、ジョシュアを見つめていた。
「ああ、私がいない間に何か問題は無かったかい?」
既に執事に確認しているので、特に問題がない事は分かっていたが、ジョシュアは敢えてクロエに聞いた。
クロエが、頬を掻く時は、何か大事な話がある時だからだ。
恐らく、ロイドとの婚約に関する話だろうとは予想が付いていた。
「実は、お話したい事が有りますので、夕食の時に宜しいですか?」
クロエの真剣な瞳を見て、ジョシュアは唾を飲んだ。
どうやら、予想以上に本気の様だと察したジョシュアは、覚悟が必要だと腹を括った。
「分かった、あっ、それとコレはお土産だ」
ジョシュアに手渡された犬の石像を見て、クロエは、首を傾げる。
「何ですかコレは?」
「ダンジョンで発見した物だ、古代語で何か書かれているみたいだから、クロエなら読めるかと思ってな」
「ダンジョンの!?」
ダンジョンで取れた物だと聞いたクロエは、エメラルドグリーンの瞳を輝かせて犬の石像を見つめた。
ダンジョンはまだまだ未知な部分が多く、魔導具などの製造方法なども不明な点が多い。
刺激を求めているクロエには、最高のお土産だった。
「ありがとうございます!」
クロエは、急いで石像を抱えて自分の部屋に戻って行った。
「やれやれ、16歳とは言え、まだ子供だな」
ジョシュアは、クロエの後ろ姿を見送り、微笑むと、自室に戻り、仮眠を取る事にした。
クロエは、自室に戻ると直ぐに石像に書かれた古代語の解読に集中した。
古代語は、神々の時代に使われた文字であり、今では殆ど読む事ができない失われた文字だ。
クロエは、魔術の勉強の一環で古代語を勉強していたので、簡単な文字なら読めるようになっていた。
「この石像を・・し者は、・・・の呪いを受ける、汝・・を愛する様になり・・・の・・になるだろう?」
大事な部分は殆ど読めないが、あまり良い意味では無い事が分かる。
「何よコレ、呪いのアイテムじゃないよね?」
楽しみにしていたダンジョンのアイテムが呪いのアイテムだと知ったクロエは、ガッカリして、犬の石像をポイっとクローゼットに投げ入れた。
バキッ!
犬の石像が他の物に当たり、亀裂が生じた。
「あっ、壊しちゃった」
少しだけ勿体無いが、たいした物でも無いので、クロエは、割れた石像を拾い上げると、念の為、中身を確認しようと、亀裂を剥がしてみる。
「もしかしたら、中に何か面白い物が入って、いる・・・かも?」
その瞬間、中から黒い霧の様な物が噴き出した。
「いや、何!?」
黒い霧に包まれたクロエは、激しい眩暈と脱力感に襲われて、ベッドに倒れ込んだ。
全身が燃えるように熱くなり、汗が噴き出る。
一瞬、毒かと思ったが、直ぐに意識が遠のき、闇の中に沈んでいった。
鉱山で発見されたダンジョンは予想以上に深く、強力だった。
先行して潜ったBランク冒険者パーティーは全滅してしまった為、ジョシュアは仕方なく大金を叩いて、Aランク冒険者パーティーである紅の剣を雇った。
ダンジョンは、邪神エキドナの力が関与していたらしく、上位種のウェアウルフやヘルハウンドなどの非常に強力な魔犬が多く生息していた為、紅の剣も苦戦を強いられた。
だが、ダンジョンが強いという事は、それだけ強大な魔力を有している証拠であり、発掘される宝や魔導具も強力な物が多かった。
なんとか、ダンジョンの破壊に成功したジョシュアは、娘に知らせる為に、寝る間も惜しんで急いで屋敷に帰ってきた。
「お土産は喜んでくれるだろうか?」
ジョシュアが手にしているのは、犬の形をした石像だった。
ダンジョンの最奥の部屋に置かれていた物らしいが、何故か持ち帰りたくなり、クロエへのお土産に持って帰ってきた。
何か文字が刻まれているが、古代語なので読めないが、特段、魔力は込められていないらしいので、害は無いだろうとの事だった。
「確か、クロエは古代語も勉強していたから、興味があると良いんだが」
屋敷のドアが開くと、愛しい娘のクロエが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ、お父様」
可愛らしい娘の笑顔を見た瞬間、ジョシュアの溜まっていた疲れが吹き飛んだ。
「ああ、ただいま」
「ダンジョンの問題は無事に解決した様ですね」
クロエは、安堵した表情で頬を掻きながら、ジョシュアを見つめていた。
「ああ、私がいない間に何か問題は無かったかい?」
既に執事に確認しているので、特に問題がない事は分かっていたが、ジョシュアは敢えてクロエに聞いた。
クロエが、頬を掻く時は、何か大事な話がある時だからだ。
恐らく、ロイドとの婚約に関する話だろうとは予想が付いていた。
「実は、お話したい事が有りますので、夕食の時に宜しいですか?」
クロエの真剣な瞳を見て、ジョシュアは唾を飲んだ。
どうやら、予想以上に本気の様だと察したジョシュアは、覚悟が必要だと腹を括った。
「分かった、あっ、それとコレはお土産だ」
ジョシュアに手渡された犬の石像を見て、クロエは、首を傾げる。
「何ですかコレは?」
「ダンジョンで発見した物だ、古代語で何か書かれているみたいだから、クロエなら読めるかと思ってな」
「ダンジョンの!?」
ダンジョンで取れた物だと聞いたクロエは、エメラルドグリーンの瞳を輝かせて犬の石像を見つめた。
ダンジョンはまだまだ未知な部分が多く、魔導具などの製造方法なども不明な点が多い。
刺激を求めているクロエには、最高のお土産だった。
「ありがとうございます!」
クロエは、急いで石像を抱えて自分の部屋に戻って行った。
「やれやれ、16歳とは言え、まだ子供だな」
ジョシュアは、クロエの後ろ姿を見送り、微笑むと、自室に戻り、仮眠を取る事にした。
クロエは、自室に戻ると直ぐに石像に書かれた古代語の解読に集中した。
古代語は、神々の時代に使われた文字であり、今では殆ど読む事ができない失われた文字だ。
クロエは、魔術の勉強の一環で古代語を勉強していたので、簡単な文字なら読めるようになっていた。
「この石像を・・し者は、・・・の呪いを受ける、汝・・を愛する様になり・・・の・・になるだろう?」
大事な部分は殆ど読めないが、あまり良い意味では無い事が分かる。
「何よコレ、呪いのアイテムじゃないよね?」
楽しみにしていたダンジョンのアイテムが呪いのアイテムだと知ったクロエは、ガッカリして、犬の石像をポイっとクローゼットに投げ入れた。
バキッ!
犬の石像が他の物に当たり、亀裂が生じた。
「あっ、壊しちゃった」
少しだけ勿体無いが、たいした物でも無いので、クロエは、割れた石像を拾い上げると、念の為、中身を確認しようと、亀裂を剥がしてみる。
「もしかしたら、中に何か面白い物が入って、いる・・・かも?」
その瞬間、中から黒い霧の様な物が噴き出した。
「いや、何!?」
黒い霧に包まれたクロエは、激しい眩暈と脱力感に襲われて、ベッドに倒れ込んだ。
全身が燃えるように熱くなり、汗が噴き出る。
一瞬、毒かと思ったが、直ぐに意識が遠のき、闇の中に沈んでいった。
10
お気に入りに追加
96
あなたにおすすめの小説
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる