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115 親の前でチョコちゃんをハグした
しおりを挟むチョコちゃんは何気なさを装っていたんた。
「疑似婚約。あはは。お父さんは契約結婚みたいなものだって。偽物の婚約って意味だよね。だから、チョコとは釣り合わないから、波流君が本当に恋愛するような年になるまでの遊び……」
笑いながらチョコちゃんがいきなりぶるっと震えて涙を溢した。お父さんとお母さんが慌てる。
「泣かないで」
僕はお箸を置いてハグした。
お父さんとお母さんが益々慌ててどちらもお箸を置く。
「こらこら、待て待て。ハグは取り敢えずやめろ。チョコちゃんも泣くとこはない。まだまだ先のことだろう。今からそんな悲観的な考えでどうするんだ」
お母さんがティッシュの箱を差し出す。
「チョコちゃん、涙拭いて。僕のお家ってそんなに良いお家なんだ。有り難う。お父さんとお母さんに感謝しなくちゃ」
お父さんとお母さんはばつの悪そうな顔をした。内心ではチョコちゃんの言ったことを肯定していたんだな。
お父さんがお箸を持ち直して咳払いをする。
「波流。釣り合う釣り合わないという話が今のうちから出るほどの関係なのか」
僕ははっきり答えるつもりなのに「多分」と言った。
「多分、ずっと付き合うからいずれはそうなるよ。僕は女の子に興味のある年頃みたいだけど、それを気づかせてくれたのはチョコちゃんだよ。キストラウマで、女の子にも興味が持てなくなっていたんだ。怖くて、気持ち悪くて、外に出るのも嫌で。一生ニートかもしれないくらい」
お父さんが「ハグ長い」と呟く。
僕は苦笑いして腕を離した。
「お前がチョコちゃんを可愛いと思う気持ちはわかる。お父さんもチョコちゃんは良い子だと思う。しかし、思春期の感情は様々な学習を経て、大概は大人になるまでは変わってしまうものだ。二人にも、今のうちから人生を決めずに、もっと子どもらしい付き合いを望むよ。偽装結婚なんて考えていないことはわかったけどな」
「偽装結婚……」
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