中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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55 僕の前で

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「波流、お前、お母さんに何か言ったか」

お母さんが風呂場に向かって直ぐに、お父さんが声を潜めて聞く。

「何かって何を」

お父さんから聞いた話は僕の経験と重なる。僕はマスク越しにキスされたけれど、お父さんは誕生日に他の女性からブランド物のネクタイをプレゼントされた。それがお母さんの勘に触って家庭内離婚の原因になった。

「職場の子で、たまたまモヤイで行った居酒屋に来てて、帰りに彼氏のことで相談にのってやって、仕事も教えていたからお礼のつもりだったんだろうな、ネクタイは。
しかし、疑われたくなかったからお母さんには内緒にしていたんだ。それが、相手が何度かメールしてきて、お母さんに見られた。
まずいことに、その子はお父さんと話をしたら楽しいとか、また二人だけで会いたいとか、彼氏のことを相談したがっているだけなんだけど、お母さんは怒りまくって……それがどうしたわけか、あれだよ」

「あはは、あれね。男は好きな人を守りたくて嘘をつくんだね……ってお母さんが」

お母さんがお父さんの腕に凭れた。

「そうそう。半年以上かかった。一時は離婚かとひやひやしたけれど、何があった」

「何も。親が離婚するのは勝手だけれど、僕のせいかと思ってた」

「おっ、そういうことにして強制的にガッコいかせりゃ良かったか」

「また……。それよりお母さんとキスするの」

「何を聞くんだ」

「外国人は、子供の前でもキスするよね」

「お前、チョコちゃんを意識しすぎだろう。可愛い子が来てたとお母さんは言ってたぞ」

そのカリナちゃんとのことはお父さんにも内緒だ。

「うん、外見はね。でも、興味がない。チョコちゃんといつかはちゃんと」

「お前、凄いな。まだ十四、あ、もう十五才か、中三だもんな。大人になってから悩め。二十歳になってもキスなんてしたことないやつゴロゴロいるんだからな。今から悩むな」

「僕の前でお母さんとキスできる」
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