中学生溺愛王子はお化粧男子 777文字小説

15 れずびあんに

「先輩が僕だと気づかないなら僕は安心できるからだよ。僕のままでは道を歩くのも嫌だ。先輩は今頃のうのうと自由を謳歌しているのだろうけれど、もしもメイクしてても近づいて来たら、シネって言ってやろうと思って……」

語気が荒くなる。

「お前、お父さんが忠告したことを覚えているか。メイクしたお前に男がおかしな考えを持ったらどうするって」

お父さんは真剣だ。

「蹴るよ。僕はニューハーフじゃない。ただの化粧男子だ。子供の頃からこの顔がコンプレックスだったから、チョコちゃんにメイクしてもらって変身したら面白くなったんだ。お母さんだって可愛いと思ったでしょ」

「うん、思った。でも複雑なのよね。波流には自由に好きなことをさせてあげたいと思う気持ちと、もっと男らしくって思う気持ちがあって、男らしさって何だろうね。あのね、少し、思ったのは、波流のメイクした顔を見たら、メイクしてない今の波流は十分男の子らしいなぁって思う」

チョコちゃんママも頷いた。

「そうね、私もそう思う。波流君は女の子みたいな顔だと思ったけど、割と男の子らしいと思う。やっぱり音理とは違うなって。私は波流君と音理のことで来たんだけれど、私が思っていたようなことではなかったのかな。すごくエッチな付き合いをしていると思っていたけれど」

「お母さん、私が波流君をリードするから口出ししないで。でも、エッチまでは百年先だよ。まだまだいろんなメイクして遊びたいんだもの」

「メイクしてどうするの」

「どうするって……」

チョコちゃんと僕は顔を見合わせた。

「考えていません。メイクすることが目的で、画像撮して喜んでいただけで、それでどうするとか考えていない」

「ふうん。YouTubeに出したら」

「お母さん、波流君は私のモデルだから、そんなことは二人で決める問題だよ。お母さんが口出ししたらモデルが逃げて、れずびあんになれないよ」