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16)化け物

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「シェルリナ、泣くなよ。君は美しくて明るくて優しくてそして賢く強い女性だろ。前向きに考えようよ」



「ノエビア、過去の私を誉められると逆に悲しくなるわ。私、今では死人の血ですら欲しがる化け物なんですもの。ううう……」



ノエビアはシェルリナを抱き締めた。妙な格好になる。顔と顔を向き合わせるとシェルリナの身体に腕が廻らない。



かといって身体を向き合わせると顔が互いに後ろ向きになる。



背中合わせのまま不器用に腕を絡ませてキスして、ノエビアはシェルリナに舌を噛み切られたことを思い出した。



「シェルリナ、僕を殺そうとしたかい」



「え、いいえ、そんな……私はあなただけよ、ノエビア」



「シェルリナ、僕たちここにずっといるわけにはいかないよ。どうにかして出なければ」



「何故……ここにはエサがあるのよ。新しい袋が幾つも投げ込まれたのだから、当分困らないわ」



「シェルリナ、人はパンのみにて生くるにあらず、神の言葉によっても養われるのだって言うよね」



「今は、私たちはパンを食べて生きるのではない、人の血によって養われるのだ、あははは」



「ちがうよ、シェルリナ。僕たちは血によってのみ生きるのではない、社会生活も必要なのだよ」



シェルリナは叫び出したい衝動に駆られた。



「何故よ、何故……こんな姿になってもノエビアは社会生活なんて望むの」



「シェルリナ……ここに棲み続けると僕たちは本当に化け物になってしまうよ」



「もうなってるわ。私たち、れっきとした化け物よっ。化け物なのよ。誰にも見つからないように生きるしかないのよ」



「シェルリナ……医者の処に行こう」



「ノエビアのバカ……もう知らないっ。何処にでも行けば良いわ」



ノエビアとシェルリナがそっぽを向いていた時、吸血鬼は森の奥でマヌゲラの生き血を啜っていた。遠目には人間の子供に見えるマヌゲラは、下半身がナメクジのように滑っているが、顔はメガネザルに似て目が異様に大きい。



マヌゲラを誘い出すために、スープ皿にワインを注ぐ。マヌゲラは少しのワインの香りでも酔ってしまう小さな脳ミソしかないから、離れた場所で待っていれば楽に捕獲できる。



可愛いジジイ
可愛すぎだから
大事にしなきゃあ
これは浮気じゃないぞ
ジジイを大切に思えばこそ
マヌゲラを狙うのだ



その執事シアノは恐怖に震えていた。目に見えない、姿の無い者にまさぐられ、静電気で身体中の体毛が立つ感覚に目覚めて神を呼ばわった。



あれは何だったのだろうか
ちゅぷちゅぷ大魔王ではなかった
まさかとは思うが
この館に憑依とりついている悪霊……
恐ろしい伝説の 化け物……

♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️*♥️


上下のイラストは
ジェットマンズマニさんの
   友情投稿です。♥️v♥️~✨



有り難うございます🎵



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