ジジイラブ吸血鬼は悪霊と娼婦と貧乏貴族の悪巧みに立ち向かって魔王討伐

藤森馨髏 (ふじもりけいろ)

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11)恋人同士

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シェルリナは夢を見ていた。



幼い頃に決められた婚約者ノエビアの立派なお屋敷に、何でもできる申し分のない素敵な女性に育って嫁ぐ。美しく、優しく、明るく、広い知識を持ちながら謙遜で、慈悲深い、そういう女性に育つ予定だった。



ノエビアに毒を飲ませるときに含んだ成分にやられて、シェルリナは、花に囲まれた美しい結婚式の夢を見ながらも、もがき苦しむ。



「シェルリナ……毒を飲んだのか。僕と一緒に心中するつもりだったのか……何と一途な女なのだ」



佇むノエビアの青白い顔に、口だけが赤々と毒々しい。その唇から牙が覗く。



あれ……
僕は一体どうしたのだろう
不思議な力を感じる
身体中にみなぎる力
あれほど痛かったお尻も
ちっとも痛くない
シェルリナと何回でもイケそうだ
それにしても
何だか……ちょっと……
何だかちょっとだけじゃなく
変だ



「シェルリナ……苦しいのかい」



シェルリナは片方の眉の無い顔を歪めて呻いている。



一人用の狭いベッドに潜りシェルリナの身体を抱いた。真夏の夜でも外気温は一番低いときなら十度くらいに下がる。室内にいればそれほどの寒さを感じずに済むが、それにしてもシェルリナの身体は冷たい。死人のようだ。



ノエビアは温めようと思う一方で、自分の意志ではない強い力がシェルリナのうなじをじっと見つめさせるのに抗えない。



牙が勝手に首元に噛みつく。



ううっ……頭が萌える
何だ、この感覚は……



ちゅぷちゅぷと音をたてて血を吸い、喉の渇きを癒しながら「不味い……」と呟く。



若干の毒と刑罰を受けて疲れはてたどろどろの血だ。旨いわけがない。



シェルリナが薄目を開けた。ノエビアの腕のなかにいることを理解したシェルリナは怖じ気付く。



何故……
ノエビアは何故生きているの 
毒を飲ませたのに……
だから私も苦しいのに
何故ノエビアは平気なの
あの男、水車小屋で会った
見知らぬ男……何者なの……
私を殺人犯にはしないと言った
ノエビアに何かしていた
あれは何だったの
ノエビアは蘇生したの……



ノエビアの顔を見ると、いつもの優しいだけのぼんくら顔とは何処か違う。



「シェルリナ、良かった。気が付いたかい」



「ノエビア……」



シェルリナはノエビアにキスして、いきなり舌を噛んだ。



強く噛んで、噛み切って
ノエビアを殺さなきゃあ
あ……
ここでは不味いわ
どこか、森の奥で……
森の奥で殺すのよ



シェルリナの口にドロリとしょっぱいものが流れる。



ううっ、ノエビアの血……



シェルリナは血を吐き出すために離れようとしたが、ノエビアは血だらけの口でキスを続ける。



「ま、待ってノエビア……ノエビア……」



シェルリナの口は血深泥に染まり、人肉を食らったかのような形相に変貌する。目がつり上がり、乾ききった砂漠のようにノエビアの血を飲み始めた。




遠目で見るとなかなか可愛い年寄り執事シアノのつもり



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