7 / 34
7)吸血鬼はジジイの血でも生き延びる
しおりを挟む「会いに来たぞ……違った。血を吸いに来たぞ」
執事シアノの目が覚めた。夕べ一晩中悪夢に魘された。見知らぬ青白い男に、首筋に噛みつかれ目を回したような記憶がある。それも夢なのだろうか。
ふっと笑う。
こんなジジイの血など
吸血鬼ドラクロエが
欲しがるわけがない
ふふふ、わたしも耄碌したものだ
ああ、でもなんだか倦怠い
執事はふらつきながらベッドから出ようとして、隣に人が寝ていることに気づいた。
「はっ、あっ、あ……」
驚愕した執事の声に、振り向いた男は青白い顔でにっこり笑う。
「お早う。目が覚めたかい、ジジイ」
強い力で執事を押さえ込み首筋に口を付ける。
「あっ、お止めください。あなたはどちら様ですか」
執事は伯爵家の七男だ。目も舌も肥えたかなり良い育ちをしており、こんな緊急の場合にさえ言葉使いも振る舞いも慇懃美麗だ。
眩暈がした。
見知らぬ男に首筋を噛まれてちゅぷちゅぷされている。女のように抱き締められながらも血を吸われているとは知らない執事は眩暈を圧して抵抗したが、ちゅぷちゅぷで筋肉がだらけて力が入らない。
「旨い血だ。ご馳走様。ふふふ、お前はとても可愛い。夕べはかなり腹が空いていたものだからお前を噛んでしまったが、体調は心配無さそうだな」
「あああ、こんなジジイに何をしたのですか。あなたは一体何者なのですか」
気が遠くなる。
「私か、私は吸血マシャールだ。お前は私の恋人になった。毎夜、お前の血を吸いに来る」
「吸血鬼……こ、恋人……め、滅相もない……」
恋人って何のことだっけ
余りにも歳を取りすぎて意味がわからない
吸血鬼の恋人って血を吸われる餌のこと……
エサ……エサですか、私……
「ふふふ、可愛い。年寄りなのにお前の血は甘い。何を食って育ったのだ、ジジイ。その年で童貞か」
「あああ……め、眩暈が……」
グガッ……
大きな音がした。
ノエビアとシェルリナはその音に魂消た。
朝食のワゴンを押す小間使いを尾行して、ヴェルナールの部屋に入り込んだノエビアとシェルリナだ。
「今日のお昼には出立するので、もうお会いできる機会がありません。不躾でお恥ずかしいのですが……」
シェルリナがもじもじと恥ずかしそうに身を揉む。
悪霊が傍らで「その調子その調子」と励ます。
小間使いが部屋を出た後で、ノエビアはドアノブが動かないようにサイドテーブルに書籍を重ねて載せ、ドアノブの下に差し込んだ。
「流石だぞ、ノエビア」と悪霊が誉めた。
これでドアは開かない
さあ可愛い領主ヴェルナール
思う存分可愛いがってやろう
そう思って安心仕切ってヴェルナールのベッドに飛び込んだのだ。二人がかりでヴェルナールを襲って口づけの嵐をお見舞いして下の可愛いモノをしごきながら衣服を脱がせた。
悪霊はニタニタ笑いながら、ヴェルナールの身体を押さえつけた。
可愛い白いお尻がポロリと出る。シェルリナは跨がるつもりでドレスを脱いだ。もとから下着は穿いていない。緩めのコルセット姿になった。
ノエビアもズボンを下げてそそりたつ一物でヴェルナールのお尻を狙う。入りやすくするためにべっとりと油を塗って来た。
「今だ、ノエビア。シェルリナが下になってヴェルナールを抱き締め、動きを封じてくれているぞ。今ならバッチリ挿入できる。早くやれ」
悪霊はワクワクして舞い上がった。
その時だ。グガッ……とあり得ない大きな音がドアの方向から聞こえ、ドアノブの下に挟まっているサイドテーブルが動いた。ドアから離れて室内に進んで来る。
「あっ。あれを見ろ。う、動いているぞ」
お尻に突き入れる瞬間だったが、音に驚いたノエビアが、ドアを指差した。
ヴェルナールの口を吸っていたシェルリナの顔が離れる。
「た、助けてっ。誰かっ、誰か、爺や、爺や、助けてっ」
ヴェルナールが叫ぶ。
ドアが開いた。剣が見える。鬼の形相の若い男が剣を手にして突進してくる。
ノエビアは、ひっくり返った。
「な、何者っ……」
その問いを無視して剣はノエビアの顔前にひと振りされた。
ヒュッ……
空を鋭く切り裂く音。
「ぎえああああ」
ノエビアの片方の睫毛が飛んだ。ノエビアはどこかを斬られたと思って顔を押さえたが、血は出ていない。
あああ、そう言えば思い出した
ザカリー領の兵士は余りにも暇だから
蠅や藪蚊を切って遊んでいると
あ、遊びでそんなものを振り回すな
こ、こっちは遊びじゃないんだ
一生がかかっている
あああ、もう終わりだ
甘い人生が崩れていく
シェルリナに絡まれて暴れていたヴェルナールは、剣に驚いたシェルリナの手を離れてお尻を露にベッドから落ちかけている。
シェルリナの鼻面に切っ先が向かう。殺気そのものがシェルリナの眉を準る。痛みも痒みもなく、すっと片方の眉がなくなった。
「いやああああ、こっ殺さないでええ」
「殺しはしない。我が主から離れろっ」
「あ、主……」
シェルリナはヴェルナールの手を離した。ヴェルナールがお尻を丸出しで転げ落ちる。
従者の殺気に圧されて、ノエビアとシェルリナは先を争いながらベッドから転がり出た。脱ぎ捨てた衣服を拾う二人に剣を向けて、従者はヴェルナールを守る。
「わ私たちは挨拶をしていただけですから……」
真っ青になったシェルリナは、片方の眉のない道化のような顔を歪めて、衣服を抱えて裸のまま走り去った。
ノエビアは腰を抜かしてその場にへたりこみ、首根っこを摘ままれて部屋の外に放り出された挙げ句、ズボンや下着を顔に投げられた。
「ダネイロォ。た、助けてくれて有り難う。本当に……嬉しい……有り難う……」
泣き声のヴェルナールが従者にすがり付くのが見えた。
「ああ、旦那様。危ない処でしたがもう、大丈夫です。このダネイロがいる限り、もう二度とあの様な真似はさせませんから」
従者の胸に抱かれてヴェルナールはそっとノエビアとシェルリナを見た。
ああ、可愛いヴェルナールが従者に抱かれて
な、なにっ、あかんべーだとぉ……
あ、あかんべーを見たか
シェルリナ、シェルリナ、着替えに夢中か
ほら、ベルナールのあの顔つき
「ダネイロォ。僕、とっても怖かったよぉ。あの二人、どうにかしてぇ」
クソガキっ、お前の方が怖いわ
ジェットマンズマニさんの友情投稿 ♥️v♥️
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる