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33 雨粒
しおりを挟む鉈は河南の頬に手を当てた。一本気な眉毛を指先で撫でて、少し彫りの深い瞼の上に滑り、それから瞼をなぞって鼻筋を降りる。唇に触れて、ふふ、と笑った。
「まだ寝てる。顰めっ面して寝てる。何の夢を見ているんだろう……」
唇に自分の口を当てた。少し挟んで吸ってみる。河南の目が開いた。何に驚いたのか、大きく目を見開き、力一杯鉈を抱き締めて「鉈」と叫ぶ。
鉈は河南の力強さに「あうぅ」と返事代わりに呻いた。夢を見たらしいが、鉈にはわからない。
「お前は俺だけのものだ。もう離さない」
河南は悪夢の続きに苛まされて鉈を抱き締める。鉈は「嬉しい」と言うのがやっとで唇を塞がれた。
雨はポタポタと軒先から落ちる。止んだかと思って空を見上げるとまだ細く降り続いている。ライラはメガンサの横で窓から見える軒先の雨粒を眺めた。きら、きら、きら、と光ながら落ちる雨粒。
メガンサの日に弱い肌は滑らかで、温かい。「擽ったい」と言われても、右手で乳房を触りながらたまに髪の生え際に口を付ける。「可愛い」と囁く。ずっとこうしていたい。『擽ったい』も『可愛い』も意味を失ってただ一緒にいたい。
愛している……
「メガンサ……」
メガンサの上で腰を動かす。小さな突起を褌で擦るとメガンサは打ち奮えて白蛇のように身を捩り、それを押さえて擦り続けて褌の中で射精した。メガンサは足を突っ張らせて大きくうねり、声を上げた。
「ライラ……ああっ、ライラ……」
「メガンサ……好きだ」
「私も、ライラが好きだ」
メガンサは泥沼の眠りに落ちて白蛇になる夢を見た。ライラをぐるぐる巻きにして愛する。それから宙を飛んで毛遊びの広場に行ってライラと寝た女を打ち据えた。力一杯打ち据えて、鬼の形相で「二度とライラと会うな」と叫んだ。
目が覚めて、メガンサは泣いた。優しく抱き締めるライラが憎らしい。ライラの目も口も、声も、腕も胸も、憎らしい。
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(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
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2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
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○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
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