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26 いないのと同じ
しおりを挟むメガンサは目を輝かせた。
「カメ、それはどういう意味か。私はライラと結婚できるのか。そういう意味なのか」
カメは畳に膝をついてお盆を膝の上に乗せた。
「お嬢様、お嬢様ももう十七才です。ここら辺では遅いくらいです。女の子は十五才にもなれば亭主を持って二十才くらいにはもう子供の親になります。皆、お嬢様は女神だから結婚しないと思っているかも知れませんが、お嬢様だって見かけが違うだけで中身は普通の女の子ですよ。お嬢様が結婚しなければ誰がこの家屋敷を継ぐのですか」
メガンサはきょとんとした。
「お父さんが……」
「いつまでもお父さんですか。お父さんは年を取っていつかおじいちゃんになるんですよ。そのうちにライラもいなくなりますよ。お嬢様よりも若い女の子がライラの周りに集まりますからね」
カメがダチ瓶から酒を注ぐ。三分が酒で七が水。
「嫌だ。それはならん。そんなことは許さない」
「大丈夫だよ、メガンサ」
ライラはメガンサに笑顔を向けた。カメも笑顔でメガンサに湯呑みを手渡す。
「お嬢様、今なら大丈夫。ライラもだよ。何で旦那様がお前とお嬢様がお酒を飲むのを許したのか……」
カメはライラに考えを促した。そして答えを待たずに言った。
「なるようになってほしいと思ってくださっているんだよ。じゃあ、カメは台所におりますから、肴が足りなかったら声かけてください」
立ち上がってから「ダチ瓶足りないはず、持ってくるさ」と出ていった。
「ライラ、聞いたか。私は嫁入り先にお前を連れて行くよりも、この家で一緒になる方が良い」
ライラは逡巡して怖くなる。
「僕は、他の子と夫婦になろうと思っていた」
「誰がいるのか」
「いないよ」
毛遊びで新しい彼女ができたばかりだが、思わず口を突いて出た言葉は本心だった。それに気づいて、ライラは驚いた。
「い、いるかも」
「いるかも……ふふ、ライラ、私の他にいるかもしれないって、そんなあやふやなことはいないのと同じだ。乾杯しよう」
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