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3 ずっと一緒
しおりを挟む豆屋の仕入れは朝早くから馬車で田舎道を行く。
まだ日の上りきらない六時頃から馬車を出す。今日はメガンサも連れていくことにした。河南は自分の馬車をライラに任せて、幌屋根の下で算盤を弾く。ポックリポックリと長閑に歩く馬車の歩みに欠伸の出たメガンサは、その日は揺られて河南の横でうとうとと微睡んで過ごした。
初めて訪問した農家の子供が、メガンサとライラを見て驚いた。どうしてお兄さんお姉さんは白いのかと聞く。日に焼けて褐色の遺伝子で出来上がった村人たちも、二人の白さに驚いている。
「神様が白く生まれなさいと言ったからだよ。海を越えた遠い国にもたくさんいるんだよ」
ポックリポックリと揺られて気がつけばもう日暮れの帰り道、西の空が赤く燃えている。東は既に暗くなって、町に近づく馬車を追うように迫る。
町に入った。暫くすると、明かりの灯り始めた繁華街に差しかかった。
「美形男子、一軒だけ先に行くから待っていてくれるか」
「ぇ……私を道端に放って行くの……」
「美形男子が守る。大丈夫だろ。俺様は上得意が出来たんだ。早速仕入れ立ての豆を届けたいのさ」
「私も行く」
「うん。売れっ子間違いなしだ、メガンサ」
「わ、わかった。大人しく待っているよ」
ライラは御者席から降りた。メガンサと肩をくっつけて荷台に座る。河南は、繁華街のワンブロックを占める提灯で一際眩しい華燭の屋敷『十六夜』へと踏み込んで消えた。
「エロい女の関係か……ジュリの店だよね」
「単なる料亭だよ、メガンサ」
「何を言っている。私が知らないとでも思ったか。私は何を隠そう耳年増なのだ。台所のカメから聞いた。此の島の料亭がジュリの宿だということは知っている」
白い頭がライラの肩から離れて、顔を覗いてくる。
「……ライラ、念のために訊くけど、ジュリ関係はないよね」
「何を言うんだメガンサ。まさか……」
「ライラの其の顔は信じられない。顔の造りが信じられない。特にマッチョでもないのに強くてモテモテの奴は本当に信じられない。何でにっこり笑うだけで女の子が悲鳴をあげるのか……私のものって皆が知ってるはずなのに」
「僕はメガンサのものなの……」
メガンサは再びライラの肩に頭を凭れた。
「そうでしょ。ライラは子供の頃から私を守る為にいてくれたじゃないか。ずっとそうやって傍にいてくれるんだ。私が嫁に行くときも一緒に来てくれる。でなきゃ、死なす。ふふ」
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