上 下
3 / 92

3 ずっと一緒

しおりを挟む

豆屋の仕入れは朝早くから馬車で田舎道を行く。

まだ日の上りきらない六時頃から馬車を出す。今日はメガンサも連れていくことにした。河南は自分の馬車をライラに任せて、幌屋根の下で算盤を弾く。ポックリポックリと長閑のどかに歩く馬車の歩みに欠伸の出たメガンサは、その日は揺られて河南の横でうとうとと微睡んで過ごした。

初めて訪問した農家の子供が、メガンサとライラを見て驚いた。どうしてお兄さんお姉さんは白いのかと聞く。日に焼けて褐色の遺伝子で出来上がった村人たちも、二人の白さに驚いている。

「神様が白く生まれなさいと言ったからだよ。海を越えた遠い国にもたくさんいるんだよ」

ポックリポックリと揺られて気がつけばもう日暮れの帰り道、西の空が赤く燃えている。東は既に暗くなって、町に近づく馬車を追うように迫る。

町に入った。暫くすると、明かりの灯り始めた繁華街に差しかかった。


「美形男子、一軒だけ先に行くから待っていてくれるか」

「ぇ……私を道端に放って行くの……」

「美形男子が守る。大丈夫だろ。俺様は上得意が出来たんだ。早速仕入れ立ての豆を届けたいのさ」

「私も行く」

「うん。売れっ子間違いなしだ、メガンサ」

「わ、わかった。大人しく待っているよ」


ライラは御者席から降りた。メガンサと肩をくっつけて荷台に座る。河南は、繁華街のワンブロックを占める提灯で一際眩しい華燭の屋敷『十六夜』へと踏み込んで消えた。 



「エロい女の関係か……ジュリの店だよね」

「単なる料亭だよ、メガンサ」

「何を言っている。私が知らないとでも思ったか。私は何を隠そう耳年増なのだ。台所のカメから聞いた。此の島の料亭がジュリの宿だということは知っている」

白い頭がライラの肩から離れて、顔を覗いてくる。

「……ライラ、念のために訊くけど、ジュリ関係はないよね」

「何を言うんだメガンサ。まさか……」

「ライラの其の顔は信じられない。顔の造りが信じられない。特にマッチョでもないのに強くてモテモテの奴は本当に信じられない。何でにっこり笑うだけで女の子が悲鳴をあげるのか……私のものって皆が知ってるはずなのに」

「僕はメガンサのものなの……」

メガンサは再びライラの肩に頭を凭れた。

「そうでしょ。ライラは子供の頃から私を守る為にいてくれたじゃないか。ずっとそうやって傍にいてくれるんだ。私が嫁に行くときも一緒に来てくれる。でなきゃ、死なす。ふふ」

    











    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

最高ランクの御曹司との甘い生活にすっかりハマってます

けいこ
恋愛
ホテルマンとして、大好きなあなたと毎日一緒に仕事が出来ることに幸せを感じていた。 あなたは、グレースホテル東京の総支配人。 今や、世界中に点在する最高級ホテルの創始者の孫。 つまりは、最高ランクの御曹司。 おまけに、容姿端麗、頭脳明晰。 総支配人と、同じホテルで働く地味で大人しめのコンシェルジュの私とは、明らかに身分違い。 私は、ただ、あなたを遠くから見つめているだけで良かったのに… それなのに、突然、あなたから頼まれた偽装結婚の相手役。 こんな私に、どうしてそんなことを? 『なぜ普通以下なんて自分をさげすむんだ。一花は…そんなに可愛いのに…』 そう言って、私を抱きしめるのはなぜ? 告白されたわけじゃないのに、気がづけば一緒に住むことになって… 仕事では見ることが出来ない、私だけに向けられるその笑顔と優しさ、そして、あなたの甘い囁きに、毎日胸がキュンキュンしてしまう。 親友からのキツイ言葉に深く傷ついたり、ホテルに長期滞在しているお客様や、同僚からのアプローチにも翻弄されて… 私、一体、この先どうなっていくのかな?

【完結】辺境の白百合と帝国の黒鷲

もわゆぬ
恋愛
美しく可憐な白百合は、 強く凛々しい帝国の黒鷲に恋をする。 黒鷲を強く望んだ白百合は、運良く黒鷲と夫婦となる。 白百合(男)と黒鷲(女)の男女逆転?の恋模様。 これは、そんな二人が本当の夫婦になる迄のお話し。 ※小説家になろう、ノベルアップ+様にも投稿しています。

絶対零度の王子さま(アルファポリス版)

みきかなた
恋愛
「お前は友達なんかじゃねーよ。」 高校の卒業式、人生最大の勇気を振り絞り告白したのに、待っていたのは彼の冷たい一言でした。 ビビりでチキンな山城七海と、『絶対零度』とあだ名される藤原一佳(いちか)の、高校二年生から社会人まで、まったりのんびりジレジレのラブコメディです。 ムーンライトノベルズからの転載です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

【完結】私が見る、空の色〜いじめられてた私が龍の娘って本当ですか?〜

近藤アリス
恋愛
 家庭にも学校にも居場所がない女子高生の花梨は、ある日夢で男の子に出会う。  その日から毎晩夢で男の子と会うが、時間のペースが違うようで1ヶ月で立派な青年に?  ある日、龍の娘として治癒の力と共に、成長した青年がいる世界へ行くことに! 「ヴィラ(青年)に会いたいけど、会いに行ったら龍の娘としての責任が!なんなら言葉もわからない!」  混乱しながらも花梨が龍の娘とした覚悟を決めて、進んでいくお話。 ※こちらの作品は2007年自サイトにて連載、完結した小説です。

処理中です...