6 / 7
第六話 脱税するほど儲けてないのに
しおりを挟む「これ、うちのホテルよ。この前、警察に調べられたわよね。砂川三千綱のセスナ観光は麻薬密売が絡んでいるんじゃないかって。その時の捜索の様子……何でユーレイさんのシイッターにっ……」
確かにそんなことあった。それに、税務署はうちがメニューにピンドン十五万円って明記してあるのに出納簿では七万円で計上してるから脱税じゃないかと疑って、税理士寄越してまで調べられた。
調べてもらって、何にも怪しいところはないと分かっても税務署と警察は繋がっているのか、地検とかの関わりなのか、セスナ観光の提携先の中村奈利子社長にまで捜査が及んで、まさかの麻薬騒ぎになったのよね。どこから麻薬よ、全く。
で、うちにはメイジャーントレロのカリカリしか食べない猫がいるじゃない。今も、この家のお気に入りの場所で気楽にしているはずだけど、その猫を総毛立つほど怒らせてまで麻薬犬が家中嗅ぎ回って大変だったのよね。
客は激減
麻薬密売やってる店なんて
やってないけどさぁ
誰が来るの
ボロクソ言うオンナシャチョーと
センロさんとぉ
あとは数人のお客さんくらいよ
なんならその数名の貴重な常連さんは神棚にでも祭り上げるくらい持ち上げておこうかって精神でさ、神様を信じていれば私は司祭級よねってくらいね、お世辞くらいは頑張ってみるか。妄想よ。兎に角、こんな状態には私も辟易させられているけど、常連さんには感謝よぉ。
だから、今夜は歩けなくなるくらい飲み倒してよね、死活問題だからさ。
私も画面見せて貰った。
「はあっ、これっ、私の店のトイレっ。あっ、嫌だ。玄関からお店の中とか、廊下も映ってるじゃないの。いつのよこれ」
「これね、上の画像って所を選択すると画像だけ出てくるのよ。いつのかな。最近のよ」
「ここだけではないみたいよ。町並みとか、ここ、コンビニみたい。それに……」
雛塚センロさんが吹き出す。
「嫌だわ。あはは。コンビニ弁当まで……これさぁ、今日のだ」
笑ったくせに日にちを確認して青ざめた。
「あの人、様子がおかしかったのよ。こっちが挨拶しているのに知らん顔で」
「本人に間違いないのね」
「シイッターに証拠があるじゃないの。これが、コンビニにいた時間よ。あ、もう二時間ちかく経つの」
中村奈利子社長が「わたしも十五分以上は待ってたからね。雨だし、ここの玄関は濡れないから良かったけど、あんたがネオン点けたまま出掛けるオーナーだと分かったら、他の人だったらもう来ないわよ」とぼやく。
「がばがば飲み干さなくても……」
「面白くないわよ。プライバシーの侵害だから。あれが宣伝になるならまだしも……」
「訴える。中村社長ならできるでしょ。勝手に画像アップするなって」
「できるわ。早速明日にでも手配するか」
カララン……
雨の音が大きくなる。玄関ドアが開いて、優麗さんが現れた。
「「えっ」」「あっ」
おごえー……驚いた
「いらっしゃいませ。どうぞどうぞカウンターへ」
うちの店カウンターしかない。四人で一杯のカウンターバー。でも、世界にはもっとちっさなお店はたくさんあるんですってさ。
「朴優麗さん、お久しぶりね」
雛塚センロさんが挨拶する。
あれ、雛塚さんたら
コンビニでも挨拶したって
言ってなかった
「あ、雛塚先生。お久しぶりです」
朴優麗さんは破顔して頭を軽く下げた。となりの中村社長にも笑顔を向けて「お久しぶりです」と腰を下ろす。
「朴さん、私のこと先生って呼ばないで。趣味でWebに発表しているだけなんですから。しかも底辺作家だし」
中村社長はタヌキだから、雛塚さんの返事に急に目を細めて「朴さん、一緒に飲みましょう」と誘う。そして私をチラリと見た。
怖い、オンナシャチョー……
この手の女の口車に乗ると火傷する。
でも、私たち三人はこっそり同盟を結ぶ立場に立って、互いにタヌキの笑顔に引き擦られて微笑む。
「ミッチャンママ、ぼさっとしてないでグラス頂戴。ビンドンも出して」
中村タヌキがチーママだったらオーナーは酷き使われる。いや、どっちがオーナーかわからない。私はおしぼり出してオーダーを待ってたのに。
「有り難うございまあすっ」
跳び跳ねてピンドンを出す。昨日、五本仕入れて十五万円使ったけど、今夜二本出たからあと一万円で仕入れチャラになる。自転車創業の悲しさよ。儲けなしの在庫有りで在庫は財産。
グラスと新しいドンペリピンクを出す。中村奈利子社長が自分でボトルを開けるつもりらしいから、私はオデンをよそうことにする。
「あなたのことを話していたのよ」
ギクリとした。
シャチョー、何てこと言うのっ
今かよ、早すぎるっ
「実はね、小説に興味があって。今度、うちの会社の宣伝のために書いてくれる人がいないかと思って、ミッチャンママに相談していたの」
まあ、この女
いきなりピストル突きだす
あ、グラス差し出した
乾杯するのね
待って待って
三人のグラスにちょっと遅れて私もグラスを合わせる。ノメノメグラスはガッシリ作られているから乾杯してチンと鳴らしても割れたりしない。
「あはは。だったらうちの従姉の方が良いかも。あ、それで雛塚先生が……」
呼ばれているのかと聞きたかったらしい。雛塚センロさんが横に首をふる。
「だから、先生って呼ばないで。互いにWeb投稿作家としては気恥ずかしいじゃない」
雛塚センロさんを遮って中村社長が「小説はご自身が書いていらっしゃるのでしょう」と、馬鹿丁寧に尋ねる。
この高飛車女がめずらしく下手に出ているのは見ものだけど、ターゲットにピストルの照準わ合わせたのがわかるだけにワクワクするも怖い。
「ええ、はい。お恥ずかしいですが」
「じゃあ、シイッターもあなたが」
いよいよ追い詰めるのかタヌキ
仕事が早いね
これが億単位商売をしている
タイムイズマネー精神かも
ああ
寝ている間に
株が値上がりして
一億でも良いから
稼ぎたいわ
五千万でも
二千万でもいい
死活問題なのっ
株は持ってないけど
WebでCM出てる
FXやりませんかって
買おうかな
五百円からできるやつ
百口で五万円……
神様ぁ
稼がせてくださったら
あなたが私の神様です
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ピアノ教室~先輩の家のお尻たたき~
鞭尻
大衆娯楽
「お尻をたたかれたい」と想い続けてきた理沙。
ある日、憧れの先輩の家が家でお尻をたたかれていること、さらに先輩の家で開かれているピアノ教室では「お尻たたきのお仕置き」があることを知る。
早速、ピアノ教室に通い始めた理沙は、先輩の母親から念願のお尻たたきを受けたり同じくお尻をたたかれている先輩とお尻たたきの話をしたりと「お尻たたきのある日常」を満喫するようになって……
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる