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35) 気紛れに好条件 ?
しおりを挟む冬菜は身体中の力が抜けていくような疲労感にどっぷり浸かって放心していた。
まだ書きたいことはあるのに
念じる力が出ない
疲れた……
眠い……
気持ちはあっても肉体は弱い
聖書の言葉ね
まさしく今の私じゃないの
疲れたよぉ……
「しっかりするんだ、エクストラ。君はこの小説が実現することを知っているじゃないか。中途半端で終わらせる気か。人類淘汰のチャンスをクルダッタゲに与えてはならない」
「わかってる。わかってるけど……」
「なんじゃ。もう終わりかの、おほっほ。つまらんのぉ」
緋芙美が妖艶な姿で現れた。真っ赤なキャミソールのベビードールに赤い打ち掛けをしどけなく羽織って肩を丸出しにしている。光り物の付いたミュールのナマ足が内股で仁王立ちになった。
「緋芙美っ」
璃人が防衛の構えを取る。
「おほっ。なんじゃその構えは。我を侮っておるのかの、リ・ヒ・ト。我に言わせればお前のその面構えなぞ、当世流行りのBLマンガのウケじゃからの、ほおっほ。チ○コに毛がはえたばかりで背伸びするとは可愛いらしいものぞ」
「チ……」
赤面する璃人の手が震える。
冬菜も赤くなった。
「こら、妖怪っ。あんたは人間のクセに何でクルダッタゲの奴隷になり下がってるのよっ」
「エクストラ、緋芙美は任せて。君は書くんだ」
「わかった。でも、なるべく先に攻撃しないでね」
「エクストラ、何故。攻撃は最大の防御だと言うのに……」
「おほっほ、ほ、ほ、ほ。痴れ者どもは何をごちゃごちゃぬかしておるのかの。この緋芙美様の百年ぶりの気紛れになぁんとなんと好条件取引をぶら下げて参ったと言うに、この痴れ者どもは聞く耳持たぬのか。残念な人生じゃの」
「騙すんじゃないよね。取引ってなによ」
「ほおっほ。陥没間際のペチャパイは、我の気紛れに応じる気があると見えるの」
冬菜は璃人の手を離してペチャパイを隠した。
「私が見えるの、緋芙美。垂れパイウプンマガじゃなくてっ」
手を振りほどかれて驚くも、璃人は思わず耳を塞いだ。
僕も緋芙美に
チン毛が生えたばかりと
言われたけど
ウプンマガが垂れパイだなんて
何てことを言うんだよ
女同士で舌戦かよ
取引云々もさることながら、羞恥心が拒否反応を示す。
「エクストラ、妖怪の戯れ言に耳を貸すな。ペチャパイが気になるなら現実逃避するんだ」
「なっ、現実って。璃人さんまでっ」
「大丈夫だよ。僕に見えているのは君の姿ではない。ウプンマガだよ、エクストラ」
「じゃあ見えているのは垂れパイじゃん。ヒドイ。現実って……」
「こりゃこりゃ、そこの痴れ者ども。何のネタでイチャイチャしとるのじゃ。緋芙美を放っぽっていいのかの」
仁王立ちの緋芙美が腰に手を当てて呆れている。
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