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27)翡翠と
しおりを挟む「アディウィズ、その霊刀を我に……」
緋芙美を無視して窓を開け放つ。アディウィズの青く染めた髪の毛がそよ風に揺れる。空色と日の色のオッドアイは、カラーコンタクトだ。人形のように見える血の気の薄い肌も、白めのファンデーションとその下の薄緑のコンシーラーに依る。
しかし、メイクの顔がアディウィズの真実の姿であり、メイクを落とし軍服を脱いだ現実の姿は、この世の仮の姿だと思っている。
「緋芙美殿、空の向こうから何やらやって来るぞ」
「おほっ、何やらとは何じゃの」
可愛い演技は得意な妖怪。助けてもらった礼は言わないが笑顔は振り撒く。
「あれは……」
アディウィズのサーベルで指し示す空に、不気味な魔物が踊る。様々な色の呪詛文言の紐が、巨大なドラゴンにも似て狂暴にうねり、叢雲を突き破り天空を翔っていた。
「ウプンマガと我らの奉ずる神の御言葉よ、全地を覆え。源からの精霊よ、集いて力となれ。神は我らと共にある」
修行者団が和唱する呪詛文言は、自在な生き物に見える。
「死に・損・ない・めがっ」
緋芙美は窓から離れ部屋を振り向く。緋芙美の霊視スクリーンが立ち上がり、ウプンマガと璃人が手を繋ぐ様子が見えた。祈祷はそのスクリーンからも聞こえる。
「忌々しい奴らじゃ。あの呪詛文言さえぶった斬ることができれば……しかし、奴らは空に」
霊視スクリーンの端に異国の巫女たちが映る。世界の主だった亜空間を視る者たちが挙って祈祷に加わり、その数はスクリーンからは知れない。
「ウプンマガ恐るべし。世界と手を組んだか。緋芙美殿、対抗措置は無いのか。実際にウプンマガを拘束できぬのか」
「ほおっほ。アディウィズ殿はまだお若いからの。知らないのも当然じゃが、ミレニアムの戦いでもそのように言った者がおっての。死におったのじゃ。あれは120番ボンクラ翡翠の魔力封じのために行った思念返しだったのじゃが、全ての者が倒れ、多くが死に、我も暫くは記憶を失ったのじゃ」
しかし、翡翠にやられた死人の吐いた緑色の血が、ナリウム・U・グリーンの精製の核となって、一過性の免疫抑制剤ではなく、風邪でも擦り傷でも悪化させて死に至らしめる毒が完成した。
緋芙美の記憶を遡れば、翡翠の死に様が明らかになる。
「翡翠は瑠璃子を護って死んだのじゃが、それも緋芙美がウプンマガを継がなかったからの故にじゃ。忌々しいことよの。瑠璃子め、若輩者の癖に我より先にウプンマガを襲名するとは……」
「緋芙美殿は個人の恨みで世界を変えるのか」
「ほおっほ。左様なこともなければこの世にはなんの不満もないぞ。一体、他の何を動機にするのじゃ。まさかアディウィズ殿はこの緋芙美様が瑠璃子をモノに出来なかったからと言って世界を滅ぼそうとしているとは言いますまいの。ほおっほっほっほ」
アディウィズは自分なりに理解する。
「それが答えか。だが、兎に角、あの紐を断ち斬らなければなるまい」
「待つのじゃ、アディウィズ殿。此処はクルダッタゲ族と呪文ドラゴンの交戦を見物してみようではないかの」
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