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3話 初デートで問題発生

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──「す、好きです」



 花蓮が匠にそう伝えた時だった……



「え?嘘……」



 そのやり取りに出くわした、というか、正式に言うと出くわした訳ではなく、屋上の扉の前で隠れていたのは、学校一の美少女、伊藤花であった。

 彼女は、毎日放課後屋上に行って、風に吹かれているので、今日も、その為に行こうとしたら、扉が開いており、ビックリして隠れていたのだが…。



「俺も、気になってた」



 盗み聞きするつもりではなかった、でも、聞いてしまった。



「早野くん……」



 彼女は、涙をぐっとこらえて、階段を駆け下りた。



 次の日、彼女は学校に来なかった。





「お、おはよう匠君」

「お、おはよう花蓮」

「…………」

「…………」



 や、やべー、普通に話せないはー。嬉しすぎて、恥ずかしすぎて、やばいやばい。てか、こんなこと学校でしてたら絶対…………





「なぁ匠、お前本気でどうしたんだ?」



 学校が終わり、帰宅中の話なのだが……やっぱりだ。康晴にかんぐられてる。まぁ、隠す気はないからいいんだけど……



「うん、実は──」



 俺は、昨日の出来事を全て康晴に話した。



「ま、思った通りだったけど……お前それでいいのか?」

「は?どういう事?」

「いやさ、お前はもっと選べたのに花蓮ちゃんを選んだのか?ってこと」

「おい、それどういう意味だよ!りせならもうフッたっていっただろ?」

「花ちゃんだよ」

「へ?」



 こいつ何を言い出すかと思えば花が俺のことが好きだと?こいつは、面白くない冗談を言うやつだな~。

 でも、言われてみると……今日、休んでたもんな花。もしかして聞かれてた?でも、それで休んだのならやっぱりそういう事なんじゃ……



「なーんてな」

「へ??」

「いや、お前が浮かれすぎてたから少し意地悪してやろうと思っただけだよ。あ、もしかして花ちゃんがお前のこと好きだったらそっち選んでたのか?」

「んなわけねぇだろ!ったく、茶化すんじゃねぇよ」

「悪い悪い」



 でも、先に花に告られてたら本当に花蓮を選べたのかな……いや、選べたはずだ。





 一方こちらはとある街のとあるマンションの一室である



「花~、大丈夫~」

「う、うん大丈夫だよ陽菜ちゃん」



 欠席した花の様子を、陽菜が代表してみにきていた。



「なんでまた休んだことない花が休んだん?」

「ちょっとしんどくて……」

「40℃でも来てた花が?」

「……」

「花蓮と早野が付き合いだしたんだって」

「そ、そうなんだ。へー」

「ほんまにそれだけ?」

「…………」

「このままでいいん?引き下がっていいん?」

「…………」

「好きなんでしょ、だったらなんで引き下がるん?」

「だって……」

「ん?」

「だって、付き合っちゃったらもうどうしようも無いじゃん!もう諦めるしか無いじゃん!」

「でも、諦めきれてないから今日休んだんでしょ?」

「………………」

「相手に彼女がいるからって、アタックしちゃいけないなんて、そんなん誰が決めたん?」

「え?」

「今からでも遅くないと思うで、奪ってしまえばいいだけの話やん!」

「そ、そうなのかな?」

「ま、ぶっちゃけ私が花蓮にいけって言っといてなんだけどね………」

「……そうだね」





 その日の夜



「ピロンッ♪」



 ん?誰かだろう。こんな時間にLINEしてくるやつなんていたっけ?



──こんな時間にごめんね。

 明後日の日曜日って暇かな?

 どこか一緒に行きたいんだけど、どう?



 花蓮か、誰かと思ったは。えーと、「暇だよ!俺も出かけたいと思ってた」と……ん?まてよ、これって……。

 まじでデートなんじゃね?うわぁー、めっちゃ楽しみなんだけど。





「ピロンッ♪」



 匠君だ!良かった、行けるんだ。デート、初デートだ。緊張するな~。そうだ!陽菜ちゃんにも伝えとこっと。「明後日の日曜日に匠君とデートに行く!」と。これでよし。あ~ほんとに緊張するー。





「ピロンッ♪」



「ん?お、花蓮からだ。なになに、フムフム、なるほど。これはチャンスかもしれないな~」

「どうかしたの?」

「ん?花さ、尾行する気ってある?」

「え?陽菜ちゃん本気なの?」

「だってさ……楽しそうだし」

「…………気は乗らないけど、してみたいっていう気持ちもある」

「決まりだね!」





 時は経ち、日曜日の朝。



「おはよう匠君」

「おはよう花蓮」

「遅れてごめんね、まった?」

「いや、俺も今来たところ」

「そっか、じゃあ行こっ!」



「………ターゲット接触。これより尾行を開始します」

「了解です……ってそんなに本格的にするの!?」



 ここは七宮モール、やっぱり駅近なのが非常に便利で、何より色々あるからデートにはピッタリだ。ただ……。少し心が痛い。



「花蓮はどっか行きたいとこあるか?」

「うん、えーと、基本的に服屋かな。ここっていいお店いっぱいだから」

「よし、じゃあ回れるだけまわろっか」

「匠君はア〇〇〇ト行かなくていいの?」

「え?ナンデソレシッテンノ?」

「割と有名だよ?」

「え?まじで……」

「ほらだってさ、いっつも門田くんと話してるし。しかも楽しそうにというか、意気投合してさ」



 門田正午《かどたしょうご》。同じクラスのやつで、俺ととても仲がいい。何故なら……正午はとんでもない程のオタクだからだ。そんなやつと毎日のように話してたら、そりゃそうだよな。広まるのも無理はないか。



「いや、今日はいいんだ。どっちかと言うと、花蓮の行きたいとこ中心にまわりたいから」

「分かった、ありがとう」

「よし、じゃあ行こっか」



「…………ターゲット、移動開始。南西の方向に向かっています。尾行を続けます」

「了解です。っていつまでこの設定続けるの?結構恥ずかしいんだけど……」





「これどうかな?」



 花蓮が、赤色のワンピースを着て俺に問いかけてきた。綺麗な足を見せつけるように、でももったいぶったかんじで出しているのが、少し色っぽさを感じさせる。おそらく部活動で鍛えられたであろう引き締まった足は、他のやつに見せたくないようなほどに、綺麗だった。



「すげー似合ってるよ、いいんじゃないかな?」

「そう?じゃあ買っちゃおうかな」



「…………ターゲットが移動する模様。北東方面に移動中。見失わないよう、尾行をつづけます。」

「…………了解……です」





 時刻は12時を過ぎた頃。



「お腹空いたねー」

「そうだな、もうこんな時間だしお昼にしよっか」

「何食べる?」

「そうだな……このフランス料理の店とかどう?」

「うんうん、このお店いいかも」

「よし、じゃあ決まり!」

「でも……高そうじゃない?」

「大丈夫だって、俺の奢りだし」

「ほんとにいいの?」

「いいんだよ、別に今日大した買い物しないから」

「じゃあお言葉に甘えて」



「…………ターゲットが料理屋に入店、出てくるのを待機します」

「…………うん……」

「どうしたん?花、なんか元気ないよね?疲れた?ちょっと休む?」

「だ、大丈夫!気にしないで、尾行続けよ!」

「ん、了解」





 食事も終わり、買い物も終わったところで、俺たちは中庭にあるベンチに座っていた。

 それにしても、ここ広すぎんだろ。今日で2回目だけど、まだ3分の1も回れてないんだけど……てか、なんでもかんでも揃ってんな~。本屋もあるし、カフェもあるし、美容室もあれば、ゲーセンもあるしな~。まじでデートにピッタリだはな。



「疲れたね~そろそろ帰る?」

「そうだな、いや~楽しかったな~」

「私も楽しかった!今日はありがとね」

「こちらこそ」



 俺たちは、それぞれ帰る方向が違うので駅でバイバイをした。



「じゃあまた明日」

「うんまたね匠君」



「……………ターゲット、帰宅する模様。これにて尾行を終了します」

「うん……」

「やっぱり、ちょっとショックだった?」

「……うん。なんか、私の付け入る隙もないかんじだし、やっぱり私なんかじゃ無理なんだよ、陽菜ちゃん」

「そっか。でも、いつ終わるかわかんないよ?」

「へ?」

「いつ破局するかわかんないって言ってんの!」

「そんなこと……ないと思う」

「たぶん早野は、今は好きだろうけど、花ぐらいのクラスならすぐコロッといっちゃうかもね~」

「そうなのかな?………………でも、諦めるにはまだ早いよね!よし、頑張ろう」

「うんうん、それでよし」

「今日はありがとね陽菜ちゃん、何だか元気になってきた!」

「よかったよ、このまま学校来ないんじゃないかと思ってたから」

「じゃあまたね」

「うんまた」

「いい感じでまとまってるとこ悪いんだけどさ」

「「!?」」

「お宅らストーカーって趣味悪いね」

「か、上村……」

「上村……くん?」

「冗談だよ。実は、俺も尾行してたんだよ」

「え?嘘!上村いたの?マジかー怖いはー」

「いや、同じことしてた人にむかって怖いとかブーメランすぎんだろ」

「そだね」

「あ、あのさ……」

「「ん?」」

「2人って結構仲いいんだね、陽菜ちゃんと上村くん」

「そうだな……1年の時クラス一緒だしな」

「そうだね、クラス一緒やったからかな?」

「そ、そうなんだ……なんか、羨ましい」

「え?もしかして花、上村のこと好きなの?」

「ち、違うよ!!もー、陽菜ちゃんの意地悪!」

「ごめんって、あんまり茶化すと泣き出すかもしれないしね、この辺にしとく」

「うん」

「で、上村、要件は?」

「これ以上匠に近づくな」

「!?」

「別に私たちの好き勝手やろ?上村になんの権限があるん?」

「匠の親友として、あいつの恋は守ってやりたいんだよ」

「…………」

「他のやつの入る隙を片っ端から消していくっていく寸法なわけね」

「そゆこと、話が早くて助かるよ陽菜ちゃん」

「悪いけど、却下」

「と、いいますと」

「私は花蓮を後押しした人間。だから、親友として花の気持ちも尊重したいわけで……」

「花ちゃんのことを思うなら尚更だ」

「どういう意味?」

「花ちゃんのモテ度ときたら、これまたクレオパトラや小野小町もビックリするぐらいなわけよ。実際そんじょそこらモデルとかアイドルなんかよりは遥かに顔立ちが整っていて、おまけに成績優秀、そして優しいときた。そりゃまぁモテモテのモテと言うわけよ」

「そんなことは知ってるねん、だからそれがどうしたん?ってこと」

「そんな人の恋愛なんて、暖かく見守るやつなんて数少ないぞ」

「「!?」」

「嫉妬に嫉妬を重ねて、羨ましいから憎みに変わり、挙句の果てには、自分に振り向かない花ちゃんに、復讐心が芽生える。その先は……」

「言わへんくても分かるは」

「だよな、だから、これ以上匠を深追いすんのはやめとけっていうわけ」

「それでも…………それでも私は早野くんを諦められない。危険を伴ってでも、まだ追っていたい。たとえ、その恋が報われないと分かっていても、99.9%報われないとしても、残りの0.1%に掛けてみたい!」

「花……」

「そっか、そこまでの覚悟があるんやったらどうやらいらんお世話やったみたいやな」

「違う、上村くんのおかげで私は気付かされた。自分のこと、甘く見すぎてたのかもしれない」

「そうか。ま、役に立ったのなら大万歳やは。んじゃ、俺はこの辺で帰るは」

「私たちも帰ろっか」

「うん!」





「やぁ、匠君」



 ここは、電車の中である。俺は花蓮と別れてすぐの電車に乗った。だから、確実にこいつも七宮モールに居たと言うことだ。と言うか、付けられてたのかもしれない……



「なんだよ、町田」



 町田晴也《まちだはるや》。2年1組の学級委員長で、成績優秀、スポーツ万能、イケメンで女子ウケが非常によく、ザ・リア充みたいなやつだ。だが、俺は苦手だし、嫌いだ。何故なら…



「そんな言い方しなくてもいいじゃないか、匠君」

「よそ行きの喋り方はやめろよ町田」

「君は僕とお喋りするのは嫌なんだね、とっても寂しいよ」

「心にもないこと言ってんじゃねえよ。何の用だ」

「そうだね……手っ取り早い話、花から離れろ、この2股男」

「は?花?何の話だよ」

「とぼけてんじゃねぇよ、お前彼女がいる身で花にまで手を出そうとしてんだろ」

「は?」



 こいつ何言ってんだ?俺が花を狙ってる?おかしなこと言い過ぎだろ。だいたい花から離れろってなんだよ、花はお前の所有物か?てか、相変わらず性格はクズだな。なんていうか、猫の被り方が異常だ。学校ではクールで爽やかなイケメンなのに、裏では真っ黒な性格とか、学校のやつにも見せてやりてぇよ、まじで。



「まぁ、黙秘権はあるからな。別に白状しろとまでは言わねぇよ。ただ……」

「ただ……なんだよ?」

「ただ……花を悲しませるのだけは辞めてくれ、頼む」

「へ?」



 こいつまじでどっちが本性なんか分からんくなってきたは。元々は良い奴なんだけど、少し威圧をかけ

るためにわざと悪役を演じてるってやつか?うん、そのほうがしっくりくる。というか、それなら分かる。こいつは時おり優しさが混じってくる。だから、素は優しいのかもしれないな。ただ、1つ明確なことは……町田は、花のことが好きということだろう。



「花にケジメを付けさせて上げてくれ……」

「お前まじで何言ってんだ?花のケジメに俺は関係ねぇだろ」

「お前それ……本気で言ってんのか?」

「う、うん」

「なら、そうだね……点数勝負と行こうじゃないか」

「ん?」

「1週間後の中間テスト、そこで点数勝負をしよう。僕が勝ったら、花とデートに行ってくれ。もちろん、君には彼女がいるわけだからこれは罰ゲームだ、岡田と一緒について行ってやる。ただし尾行という形でな」

「じゃあ、俺が勝ったら?」

「その時は、今後一切君に変な絡みはしないと誓う」

「なるほど、勝負内容は総合点でいいんだよな?」

「ああ、じゃあこの勝負受けてくれるかな?」

「望むところだよ」

「ただ、忘れないでね匠君。前回の期末テストは、僕は5位で、君は8位。その差は30点以上だったってことを」

「望むところだって言ってんだろ」



 謎に満ちた町田との勝負を受け、よりいっそう勉強をすることになった俺だが、勝負という駆け引きが1つに収まらないということは、今はまだ知らないのであった。
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