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ラジトバウム編

22話 デッキメイク

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 それからは、エリア<虚底(きょてい)の沼地>や<ジャングル><荒野>を駆け回って、使えそうなオド結晶やカードをかき集める日が続いた。
 時には泥だらけになって、時には傷だらけにもなるが、ハイロとフォッシャが優秀なおかげですくなくとも生活には困っていない。
 おかげで靴は直せないほどボロボロになったので、ブーツを新調した。
 
 時折、カードショップでハイロと相談しながら買うカードを物色したりもした。もちろん財布と金額との兼ね合いもあるが、どういうカードを集めようか考えるのは、なかなか楽しい。

 俺たちは荒野エリアのオド結晶が採掘できる洞窟に冒険にきていた。フラッシュの効果があるトリックカードで、暗闇を照らしながら進んでいく。
 さっそくトカモグラというモンスター4匹と出くわし戦闘態勢をとる。

「ハイロ! 俺がひきつけておくから、フォッシャと一緒に態勢をととのえて、とどめを頼む」

 俺は盾役をひきうけ、トリックカード『クロス・カウンター』を乱発して敵の攻撃を避けつつダメージを与える。

 フォッシャとハイロの魔法の準備ができたのを確認してから俺は下がり、ふたりの炎系の魔法が敵に直撃する。
 勝負がついて、トカモグラたちはあたふたと退散していった。

 すこしその場で小休止して、給水したりしてから俺たちはまた洞窟を進みだした。

「ハイロちゃんが入ってから楽でいいワヌ! とっても強いし!」

「そ、そんなことないですよ」

 フォッシャの言うとおりだ。俺の左腕の骨折にくわえて右目の負傷で苦労するかと思ったが、ハイロがチームに入ってくれたおかげでかなり助かっている。
 ハイロは優秀だ。動きに無駄がなく、敵を倒すのに最適な行動を常に取っている。武道かなにかをやっていたのだろうか、とにかく身のこなしが俺やフォッシャとは明らかに違う。

 ようやく採掘エリアにたどりつき、目当ての青のオド結晶を見つけた。
 これは赤のオド結晶とはちがうレアな代物で、フォッシャの話ではこういう辺境にだけ自然発生するらしい。だが入手に苦労する分、ハイロが言うには高く売れる上カダデルでつかえばより高価値なカードが出やすくなるそうだ。

 最後に待ち受けていたバクハツブテという炎をまとった岩のようなモンスターを難なく倒し、俺たちはオド結晶を運べるだけ採掘した。

「……どうした、ハイロ。急に動きが悪くなったけど。フォッシャにおいしいところを譲ったのか?」

 今の戦闘でモンスターにとどめをさすとき、ハイロの手が一瞬ゆるんだように見えた。
 ボーっとしていたというか、集中力を欠いていた感じだ。俺に指摘され、ハイロは慌てる。

「あ……え、ええと……」
「わかるわかる、フォッシャのあまりかっこよさに見とれちゃったんだワヌよねぇ」

 フォッシャのうぬぼれを、俺はすかさず制す。

「んなわけあるか」
「なにおう!?」

 フォッシャはおいといて、俺は青のオド結晶に手を伸ばした。
 よくみると、結晶の中に一枚カードが入っている。

「おお……カード付きか! こりゃラッキーだな」

 思わず俺は声をあげた。青のオド結晶の中には、たまにカードがはいっていることがある。
 そもそもカードというのはオドの塊だそうで、こうやって自然発生的に生まれてくるそうだ。

 カードには宝石の絵柄が描かれている。いわゆる趣味カードと呼ばれる類のもので、実戦ではあまり使えないが高く売れる。

「思いがけないお宝だな。これは高く売れる。俺たちには必要ないしな」
「エイトはカネのことばっか考えてるワヌねえ」
「む……」
「いえ、私にはわかりますよ。エイトさんは、カードが好きだってことが。触り方でわかるんです」

 ハイロに言われてどんな反応をすればいいかわからなかったが、素直に照れておいた。

「……ま、まあワクワクはしてるかな。だって、世界には、まだ誰も知らないお宝カードがたくさんあるんだろ? おもしろそうだよな」

 笑いながら言い、泥だらけの手で、俺は目の下あたりをかいた。

「はい」

 とハイロも笑顔でうなずいてくれる。
 俺はたちあがり、

「なにはともあれ、これでようやく……そろったぞ。デッキができた!」
「ダジャレワヌか」

 とそのとき、後ろで物音がした。振り返るとまださっきのモンスターが生きており、凶悪な目でこちらに近づいてきていた。

「ってとどめ刺せてねーじゃねーかぁ!!?」
 
 言い終わらないうちに魔法の爆発が起き、俺たちはもろにそれをくらった。

「あああああああ!!!!」
 
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