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十六時間目 あどけない

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 まずは真城を風呂に入れ、びしゃびしゃになった制服やらを袋に詰めた。これは明日コインランドリーに持っていってなんとかしよう。真城が上がって来る前にコンビニへ行って、下着やご飯を買っておこう。朝食用におにぎり二つととサラダ、それから野菜ジュースも買ってしまって、キムチ焼そばは明日の昼に食べようと、冷蔵庫の扉を閉めた。

 籐矢がコンビニから帰ってくる頃には、真城はもう風呂から上がってきていた。タオルを巻いただけの体は、写真で見るよりもあどけなさを感じる。思わず腰にあるホクロに視線を奪われた籐矢は、本当にキスマークがないことにどこか安心していた。

「先生、俺の服ってどこ行っちゃいました?」
「あれは玄関先に置いてある。明日コインランドリーに持ってく予定だからな。ほら、パンツ買ってきたからとりあえずこれを履いておけ。あとは俺のジャージ貸すから、ちょっと待っててくれ」
「えっ、先生もジャージ着るの?」
「なんだ、いつもスーツだと思っていたのか?」
「いや、流石にそれはないけどさ……」

 寝室のクローゼットからひっぱり出してきたグレーのジャージは、昨日洗濯したばかりのものだ。それを見た真城は、今度は口を開けて笑っている。

「先生って家でもグレーなんだね。スーツもグレーしか着ないしさ、もしかしてこだわりなの?」
「まさか。グレーと紺はどんな人間にも似合うようにできているからな。服を選ぶ手間が省けるだろう」
「面倒くさがりやなのか、効率重視なのか分かんないや。だってほら、そこのゴミ袋見てよ。紙皿割り箸紙コップ! これって洗うのが面倒だから使ってんでしょ。きっと洗濯物も畳まずにハンガーにかけたままクローゼットに移すタイプの人だよ、先生は」
「おお、よく分かったな。真城は観察力が凄まじいんだな」

 キッチンに置いてある三つのゴミ袋だって、わざわざゴミ箱に入れるのが効率的ではないと、袋のまま使っているのだ。家に客を招くことがあまりない籐矢にとって、見栄えなどどうでも良かった。時間短縮、効率重視をモットーに日々を暮らしている。

「料理もほとんどしてないんじゃない? 先生、そんなんでちゃんと結婚できるのかな」
「結婚だなんて、俺には縁のない言葉だな」
「それは俺も一緒だよ」

 ジャージを身に着けた真城は、ダイニングチェアに座ってひな鳥のようにご飯を待ちわびている。そんな彼の前にレンジで温めたカツ丼を差し出してやれば、飢えた獣よろしく大口で食べ始めた。
 食事の仕方はセックスの仕方と似てるんだよ、だなんて、昔読んだBL本に書いてあったことをふと思い出してしまった。

 別に、何かを期待して真城を家に呼んだわけではないし、真城だってそんなつもりではないだろう。食べてる横に座り、テレビのスイッチを入れる。なんだかんだで、もう日付が変わる時間だった。
 

 



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