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第二章

リアム②(ジェライト視点)

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リアムの変態発言に危機感を覚えた俺は昼で早退させてもらい、ナディール大叔父上に相談に行った。第一部隊隊長に預けてきたから18時までは大丈夫だろうが、そのあとあいつが何をするかわからない。

「…というわけなんです」

「リアム君がエイベル家の男みたい。なんか、オーウェン兄さんと同じ匂いがする。昨日城に入ってきたってほんとなの?警備どうなってんの、僕の可愛いテオドール君を…」

大叔父上の体から炎が立ち上る。

「僕も今日から、テオ君て呼ぶ。リアム君に負けたくない」

いや、勝ち負けの問題ではないような。

「テオ君が張ったシールドは外せなかったんだよね」

「はい。でも、夜は熱がありましたし…基本、シールド張って寝たりしませんから」

「そうだよね。リアム君、なんなんだろ。あの子、副隊長になるくらいだから身元もしっかりしてるし。仕事も真面目だよね、ただ、魔力についてうるさすぎて人の顔認識してないだけで」

「そうですね。魔力で誰なのか認識してますから」

「変態の要素はあったってことだね。テオ君の貞操が危ない。テオ君の運命の香りがする男であっても、熱を出してる相手を襲うのはダメ、絶対」

ナディール大叔父上は、「城にテオ君の魔力あるから、僕迎えに行ってくるよ」と言って消えた。

しばらくしてテオも一緒にやってきた。

「ナディール叔父上が、話があるっていうんだけど」

「テオ君、とりあえず座りなさい」

「…?はい」

いきなりテオ君呼びになってることに面食らったようだが、テオは大人しく座った。ナディール大叔父上が紅茶とケーキを出してくれる。

「あの、そういえばナディール叔父上、俺もお話がありまして」

「なんだい」

「昨日言っていただいた件なんですが、俺、海軍に、」

「よく言った。すぐにサヴィオン兄さんを連れてくる。ケーキを食べてゆっくりしてなさい。エライよ、テオ君。本当に成長したね」

ナディール大叔父上はサッと消えてしまった。

「…何があったんだろうか、」

「…まぁ、食え」

「いただきます」

テオとふたりでケーキを食べているとサヴィオンお祖父様もやってきた。

「ナディール、俺もケーキ欲しい。5個」

「食べ過ぎ」

「訓練してきたから大丈夫だ」

目の前に出されたケーキをあっという間に平らげたお祖父様は紅茶を飲みながら、「で?話ってなんだ?」

「テオ君を、海軍に入れて。いますぐ」

「いますぐって、」

「テオ君に危険が迫ってるんだよ」

「え?ジークが帰ってくるからか?でもあいつ、仕返しなんてしないだろ。したら最後、ルヴィアが何するかわからないぞ」

「ジークハルト様、帰ってくるんですか」

「おう、明日な。ルヴィアからようやくお許しが出たらしい」

「父上、本当にアホですよね」

「俺に何回もクレームの手紙を寄越してた。全部見る前に燃やしたけど、怨念が籠ってて気持ち悪い。さすが変質者は違う。で、テオドールに迫る危険ってなんだ」

「テオ君、恥ずかしいと思うけど、吐射の話するよ」

「は、」

「テオ、とりあえず必要なことなんだ。な、」

「…わかった」

「兄さん、テオ君は一年前に運命の香りを嗅いで無意識に2回も射精しちゃったんだって」

「…は?無意識に、って、おまえ、不感症なの?」

「よくわからないです」

「相手、誰なんだよ」

「第一部隊副隊長の、リアム・ロブソンです、お祖父様」

「副隊長…ジークのとこにいたオレンジの瞳の男か?あいつ、変なヤツだよな。俺の顔見て、『あ、色持ちだからこんなにすごい魔力なんだ、羨ましい、隊長と同じ色味だ』って。人の顔じゃなくて、魔力見てんだぜ」

「そのリアム君が、昨日城に忍び込んでテオ君の子種を飲んだらしい」

「は?」

「え?」

「テオ、おまえ、熱高すぎて朦朧としてたからわかんなかったんだろうけど、パジャマ脱がせたの、あいつだぞ」

「え、え、なんで、なんでリアムさんが、っていうか、子種飲んだってなに、え、まさか、」

「口に含んだ発言してた」

「うわーっ!!!!!!!」

「大丈夫か、おい、テオ、しっかりしろ!」

「無理だ、ジェライト、もうリアムさんに会えない」

「…会いたくないの間違いだろ」

「知らないうちに咥えられてるとか、…俺、キャパオーバーだ。また熱出そう」

「テオ君、咥えられただけじゃなくて、飲まれちゃったんだよ」

「ナディール大叔父上、ジワジワとダメージ与えるのやめてやってください」

「今日、ライト君に、『テオ君と一緒に住む、お風呂も入る、家に閉じ込めて誰にも見せない』宣言したんだって」

「ジークじゃねぇか。部下だからうつっちまったのか、あいつの変質者が」

「だから、兄さん、早めにテオ君を隔離したいんだよ。海軍は、独身者は寮生活でしょ、警備もしっかりしてるし」

「夜は当直がシールド張るからな。昼間は昼間で、絶対門通らなきゃ入れねぇし」

「団長室と同じ仕組みにしてるんですよね?」

「そうだ。飛んで入ることはできねぇ」

「海軍は、訓練で出港もあるし。心配がないと思うんだよ、テオ君」

「俺は海軍に入りたいと希望しますが、よろしいんでしょうか、サヴィオン叔父上」

「いいよ。おまえ、いい面構えになったな。魔力もずいぶん変わったな。頑張ってきたのがわかるよ」

「…ありがとうございます」

「まぁでも、今日からはいくらなんでも早すぎだろ。リッツにも言わねぇと。海軍の入隊試験は3月初めだから、それ受けて、4月から入れ。な。その間は、ここに住めよ。ナディールがいるし、ナディールの部下に守らせればいいじゃねぇか」

「でも、俺なんかに時間をかけていただくわけには、」

「いいんだよテオ君。この家は常時10人体制で守ってるんだから、キミひとりじゃないの。気に病むことないから。ね」

「…わかりました、よろしくお願いします」

「じゃ、今すぐライト君と城に戻って、必要な物を運びなさい。あちらの自室は空っぽにしておきなさい。忍び込まれて何か持っていかれたりしたら大変だよ。相手は変質者なんだから、どんな行動をとるかわからないよ」

「わかりました。ありがとうございます」

「来たついでだから、俺も手伝う。その代わりナディール、俺にも飯食わせてくれ」

「もちろんだよ、サヴィオン兄さん。僕はリッツ君に話してくるから。ライト君、18時になったらリアム君に、『テオ君はエイベル家に住む。諜報部の影がいるから、死にたければ来い。テオ君は常時俺かナディール大叔父上と行動するから接触も無理だ。エイベル家にケンカを売りたければ来い』と伝えて来なさい」

「わかりました」

「え、でも、そんなわけには、」

「テオ君、相手は変質者なんだよ」

「…すみません」


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