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第一章
ジェライト君(アキラさん視点)
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セグレタリー国は、海に囲まれた島国で、小さい島々がたくさんある。その島々でダイヤモンドが産出されるのだが、その場所に必ずと言っていいほど魔物が出るのだそうだ。
そんな話をジェライト君から聞いたが、怖くて魔物は見れなかった。
「ごめんね、ジェライト君。キミが命がけで戦っている相手を見ることもできなくて。意気地無しでごめん」
「アキラさん、俺はアキラさんに魔物を見せたくてセグレタリー国に来たんじゃないんだよ。アキラさんと、お揃いの指輪を買いたくてきたの。ここはダイヤモンドの産出国だから、ダイヤの指輪とかどうかなって。アキラさんが気にいったのがあれば何でもいいし、時間かけて見てみよう、ね、」
ジェライト君はあちこちのお店に連れて行ってくれて、その中でダイヤが埋め込まれているペアリングに決めた。なんだか新婚みたいだな。
セグレタリー国は同性婚を認めている国で、僕たちがペアリングを買うのもなんの違和感もなく受け入れられていた。僕自身、まさか男性と付き合うことになるとは思わなかったからなぁ。僕は同性同士の恋愛に拒絶感はなかったし、日本でもそういうマンガが奥さんの趣味でたくさんあって特に思うことなく普通に読んでいたけど、まさか、自分がねぇ。
そんなことを思いながらジェライト君を見ると、「どうしたの、アキラさん」と甘い瞳を向けられた。美しすぎて心臓に悪い。
「ジェライト君、このあとはどうするの」
「宿泊先に戻ろう。ごはんも、そこでいいかな。中にレストランがあるから」
「うん」
「飛べば早いけど、アキラさんと手を繋いで歩きたい。アキラさん、疲れてない?大丈夫かな」
「大丈夫だよ、ジェライト君」
ジェライト君はクシャリと笑うと、僕の手を繋いで歩き出した。
こんなにキレイな顔の子が、なんで僕を選んだのかイマイチわからない。若返らせてまで付き合いたいと思わせるなにかが僕にあるとは思えないんだけどなぁ。
宿泊先でごはんを食べて部屋に行くと、「アキラさん」とジェライト君が抱きついてきた。
「アキラさん、昨日、城で決めてきたこと、話してもいい?」
「あぁ、ジェライト君がやりたいって言ってたことだね。どうぞ」
ジェライト君はソファに座ると僕を膝に横抱きにした。
「あのね、アキラさん…アキラさんは、父上が母上に誓約魔法をかけてるの知ってる?」
「中身を説明しないで無理矢理かけた魔法でしょ」
「あれは、一度お祖父様の立ち会いの元で解除したの」
「そうなんだ。でも、それが正解だよね、だってルヴィアさんは誓約魔法の内容がわからなかったんだから」
「その、解除した日に、もう一度かけたの、父上」
「え!?」
「それも、母上は、18歳になるまで気付かなかったの。父上が言わなかったから」
「…さすが犯罪者はやることが違うね」
するとジェライト君は途端に悲しそうな顔になって僕を見た。
「どうしたの、ジェライト君。あ、ごめん、ジーク君の」
「隊長、だよ、アキラさん」
「隊長のこと悪く言っちゃったから怒っちゃった?ごめんね、でも本当のことだから」
「ううん、父上は別にどうでもいいんだけど。…アキラさん」
「なんだい」
「…俺も、アキラさんに誓約魔法をかけたいの」
「…え?」
「ちゃんと、中身は説明するよ!」
「ジェライト君、なんで僕にかけたいの」
「アキラさんを守りたいから」
「…守る?」
「うん。今回、テオドールがアキラさんに触ったでしょ。今回は俺がいたからいいけど見てないところで何かあったらイヤだから…誓約魔法で、アキラさんを守りたいんだよ」
「具体的にはどうするの」
「本当は、アキラさんに誰も触ってほしくないんだけど」
出た。ジーク君の血を反映する変態発言が出た。
「でも、仕事とかで意識しなくても触れたりするでしょ。その度に相手が痛い思いしたらアキラさんの仕事がやりづらくなっちゃうから、今回みたいに下心がある人間、アキラさんを性的な意味で襲ったりとか、何か目的があって例えばアキラさんを誘拐するとか、そういうアキラさんに対して邪な気持ちがある人間がアキラさんに触れたら、指輪から雷撃の走る蔦を出して相手を拘束する」
なにその蔦。
「…ダメかな」
「いや、ダメって言うか、うーん…僕を利用したりする人いるのかな」
「いるよ。変質者がいっぱいいるんだよ」
キミはその筆頭候補だよ、ジェライト君。
「ジェライト君が、僕を守ってくれようとしてることはわかった。以前言ったように、僕はジェライト君がしたいことは受け入れたい。かけてくれていいよ」
「アキラさん、無理してない?」
「無理?」
「だって…俺がしたいことは、って」
「あのね、ジェライト君。僕は、言ったように人付き合いがあまりないのと、気持ちが枯れてるから何かをしたいっていう気持ちがあまりないんだよ。でも、ジェライト君が僕に言ってくれるから、いろんなことを体験できて嬉しいんだよ。ありがとう、ジェライト君。だから、かけて。イヤじゃないよ、嬉しいよ、ジェライト君の気持ちが」
「…アキラさん!」
「待って!まだ、待って!ね、落ち着いて、ジェライト君!」
「…はい」
僕はジェライト君の狼くん変身スイッチを無意識に押してしまうようだ。気を付けよう。まず、自分のために。
「僕は、何を誓約すればいいのかな」
「アキラさんは、俺に何を望む?」
「何を…」
ジェライト君の緑の瞳をじっと見る。この子は、なんで僕に囚われちゃったんだろう。ジーク君が前回、ルヴィアさんを殺されて自殺したように、ジェライト君ももし僕が死んだりしたら…そう考えると悲しくなった。
「ジェライト君」
「なぁに、アキラさん」
「僕が死んだら、ジェライト君が僕を忘れるようにしてほしい」
「…え?」
「ジェライト君が、」
そう言った瞬間、ジェライト君が僕をギュウッと抱き込んだ。
「ジェライト君、苦しい、」
「ねぇ。アキラさん」
今まで聞いたことのないような冷たいジェライト君の声に驚き、顔を見ようとしたが離してもらえない。
「ジェライト君、」
「なんで?なんで、そんなこと言うの?俺が、アキラさんを忘れて生きていけると思うの?もう、俺のすべてにアキラさんが染み込んでるんだよ。アキラさんを取り去ったら、俺は壊れるよ。アキラさんを忘れるなんて絶対にないんだよ。ねぇ、アキラさん、アキラさんは、俺がアキラさんを忘れて生きて行ってもいいの?アキラさんを忘れて、他の人間を好きになるかもしれないんだよ!」
「ジェライト君、」
「やだ!絶対やだ、絶対やだ、…っ」
髪の毛に温かなものがポタポタ染み込む。
「ジェライト君、泣かないで」
「アキラさんが…っ、意地悪言うから…っ」
「あのね、ジェライト君。僕は、キミに生きて欲しいの」
「アキラさんがいないのに生きていたくない」
「ジェライト君、僕は先に死んじゃうかもしれないでしょ、その時に僕を追いかけてもらいたくないんだよ」
「なんで?なんで?だって、アキラさんがいないのに、どうやって生きていけばいいの?イヤだ、絶対イヤだ、そんな誓約しないでよ、アキラさん!イヤだ!」
ジェライト君はそう叫ぶと声をあげて泣き出した。やっぱりこの子は、ジーク君の息子なんだな。僕はジーク君がかけた誓約魔法の中身はわからないけど、どんなことをしてもルヴィアさんを手放す気はないってことなんだろう。
僕が死んだ後、僕を忘れられずにいるジェライト君はどうなってしまうのかな。こんなに魔力が高いのに、そのときジーク君やナディール様がいなくてジェライト君を抑えきれなかったら?ルヴィアさんを喪ったと思ったジーク君のように国を焼いてしまうかもしれない。ジェライト君には炎の特性はないけど。
ジェライト君を受け入れた。だから最期まで一緒にいる。死んで欲しくない気持ちに変わりはないけど、ジーク君がルヴィアさんに囚われたように、僕に囚われてしまったジェライト君を手放してはいけないのかもしれない。
可哀想だな、ジェライト君。
もっと、自由になれれば良かったのにね。
キミは、僕を逃がさないって言ったけど、僕がキミを囚えてしまったんだね。
それなら。僕もキミを逃がさないよ。
「ジェライト君」
「イヤだ、アキラさん、もう聞きたくない。言わないで、やだ、アキラさん、」
「ジェライト君、ごめんね。僕が間違ってたよ。僕が死んだ後も生きて欲しいなんて、我儘を言って悪かった。ごめん」
「…アキラさん」
真っ赤な目のジェライト君は、ようやく僕を離してくれた。この子は本当に…可愛いなぁ。
「ジェライト君、決めたよ」
「イヤだ、さっきのはイヤだ!」
「聞いて、ジェライト君、僕が間違ってた。ね、ごめん。聞いてくれるかい」
「さっきのこと、言わないで」
「うん、言わないよ。約束するから」
「…じゃあ聞く」
「ジェライト君、僕が死んだら、」
「アキラさん、約束したでしょ!」
「続きを聞いて、ジェライト君」
「…」
「僕が死んだら、ジェライト君も死ぬようにして」
「え…?」
「ジェライト君が先にもし死んでしまったときも、僕を死ぬようにして。一緒に死ぬ。ね、ずっと一緒だよ。ジェライト君」
ジェライト君は目を見開くと、ボタボタと涙をこぼした。
「いいの、アキラさん、」
「いいよ」
「本当にいいの、俺、離してあげられないよ」
「もう逃がさないんでしょ。離す気ないじゃない。いいんだよ、ジェライト君。僕はキミから逃げないよ。ね。一緒にいよう」
「うん…っ」
ジェライト君はそこから一時間、僕を抱き締めて離さなかった。ずっとずっと離さなかった。
「アキラさん」
「ん?」
「俺、もうひとつ、要求通したの」
「え?」
「王家に認めさせるって言ったこと」
「あぁ、そう言ってたね、」
「アズライト様に…陛下に、同性婚を認める法律を制定してもらう。なるべく早く」
「…同性婚」
「うん。もう、制定は決まったの。するって。陛下、してくれるって」
どのくらい脅したのかな。
「やっぱり、アキラさんと手を繋いで歩きたい、カーディナルでも。キスもしたいし、抱き締めたりもしたい。変な目で見られても、法律で認められればそういう目で見る人ばかりじゃなくなるかもしれないから。アキラさん、」
ジェライト君は僕をじっと見つめて言った。
「アキラさん、俺と結婚して」
「ありがとう、ジェライト君」
「…いいの」
「いいよ、当たり前じゃない」
「本当に?」
「あのさ、ジェライト君、自分が言い出したのになんで僕が受け入れたことを認めないの」
「…だって、」
「ジェライト君、僕もキミが好きだよ。結婚しよう。ずっと一緒にいよう」
「…うん!」
その夜、ジェライト君が誓約魔法をかけた。その輪っかの上にお互いの指輪を嵌める。
「法律が制定されたら、結婚式しよう、アキラさん」
「うん、そうだね。みんなに、お祝いしてもらおうね」
「うん。大好き、アキラさん」
「僕も大好きだよ、ジェライト君」
そんな話をジェライト君から聞いたが、怖くて魔物は見れなかった。
「ごめんね、ジェライト君。キミが命がけで戦っている相手を見ることもできなくて。意気地無しでごめん」
「アキラさん、俺はアキラさんに魔物を見せたくてセグレタリー国に来たんじゃないんだよ。アキラさんと、お揃いの指輪を買いたくてきたの。ここはダイヤモンドの産出国だから、ダイヤの指輪とかどうかなって。アキラさんが気にいったのがあれば何でもいいし、時間かけて見てみよう、ね、」
ジェライト君はあちこちのお店に連れて行ってくれて、その中でダイヤが埋め込まれているペアリングに決めた。なんだか新婚みたいだな。
セグレタリー国は同性婚を認めている国で、僕たちがペアリングを買うのもなんの違和感もなく受け入れられていた。僕自身、まさか男性と付き合うことになるとは思わなかったからなぁ。僕は同性同士の恋愛に拒絶感はなかったし、日本でもそういうマンガが奥さんの趣味でたくさんあって特に思うことなく普通に読んでいたけど、まさか、自分がねぇ。
そんなことを思いながらジェライト君を見ると、「どうしたの、アキラさん」と甘い瞳を向けられた。美しすぎて心臓に悪い。
「ジェライト君、このあとはどうするの」
「宿泊先に戻ろう。ごはんも、そこでいいかな。中にレストランがあるから」
「うん」
「飛べば早いけど、アキラさんと手を繋いで歩きたい。アキラさん、疲れてない?大丈夫かな」
「大丈夫だよ、ジェライト君」
ジェライト君はクシャリと笑うと、僕の手を繋いで歩き出した。
こんなにキレイな顔の子が、なんで僕を選んだのかイマイチわからない。若返らせてまで付き合いたいと思わせるなにかが僕にあるとは思えないんだけどなぁ。
宿泊先でごはんを食べて部屋に行くと、「アキラさん」とジェライト君が抱きついてきた。
「アキラさん、昨日、城で決めてきたこと、話してもいい?」
「あぁ、ジェライト君がやりたいって言ってたことだね。どうぞ」
ジェライト君はソファに座ると僕を膝に横抱きにした。
「あのね、アキラさん…アキラさんは、父上が母上に誓約魔法をかけてるの知ってる?」
「中身を説明しないで無理矢理かけた魔法でしょ」
「あれは、一度お祖父様の立ち会いの元で解除したの」
「そうなんだ。でも、それが正解だよね、だってルヴィアさんは誓約魔法の内容がわからなかったんだから」
「その、解除した日に、もう一度かけたの、父上」
「え!?」
「それも、母上は、18歳になるまで気付かなかったの。父上が言わなかったから」
「…さすが犯罪者はやることが違うね」
するとジェライト君は途端に悲しそうな顔になって僕を見た。
「どうしたの、ジェライト君。あ、ごめん、ジーク君の」
「隊長、だよ、アキラさん」
「隊長のこと悪く言っちゃったから怒っちゃった?ごめんね、でも本当のことだから」
「ううん、父上は別にどうでもいいんだけど。…アキラさん」
「なんだい」
「…俺も、アキラさんに誓約魔法をかけたいの」
「…え?」
「ちゃんと、中身は説明するよ!」
「ジェライト君、なんで僕にかけたいの」
「アキラさんを守りたいから」
「…守る?」
「うん。今回、テオドールがアキラさんに触ったでしょ。今回は俺がいたからいいけど見てないところで何かあったらイヤだから…誓約魔法で、アキラさんを守りたいんだよ」
「具体的にはどうするの」
「本当は、アキラさんに誰も触ってほしくないんだけど」
出た。ジーク君の血を反映する変態発言が出た。
「でも、仕事とかで意識しなくても触れたりするでしょ。その度に相手が痛い思いしたらアキラさんの仕事がやりづらくなっちゃうから、今回みたいに下心がある人間、アキラさんを性的な意味で襲ったりとか、何か目的があって例えばアキラさんを誘拐するとか、そういうアキラさんに対して邪な気持ちがある人間がアキラさんに触れたら、指輪から雷撃の走る蔦を出して相手を拘束する」
なにその蔦。
「…ダメかな」
「いや、ダメって言うか、うーん…僕を利用したりする人いるのかな」
「いるよ。変質者がいっぱいいるんだよ」
キミはその筆頭候補だよ、ジェライト君。
「ジェライト君が、僕を守ってくれようとしてることはわかった。以前言ったように、僕はジェライト君がしたいことは受け入れたい。かけてくれていいよ」
「アキラさん、無理してない?」
「無理?」
「だって…俺がしたいことは、って」
「あのね、ジェライト君。僕は、言ったように人付き合いがあまりないのと、気持ちが枯れてるから何かをしたいっていう気持ちがあまりないんだよ。でも、ジェライト君が僕に言ってくれるから、いろんなことを体験できて嬉しいんだよ。ありがとう、ジェライト君。だから、かけて。イヤじゃないよ、嬉しいよ、ジェライト君の気持ちが」
「…アキラさん!」
「待って!まだ、待って!ね、落ち着いて、ジェライト君!」
「…はい」
僕はジェライト君の狼くん変身スイッチを無意識に押してしまうようだ。気を付けよう。まず、自分のために。
「僕は、何を誓約すればいいのかな」
「アキラさんは、俺に何を望む?」
「何を…」
ジェライト君の緑の瞳をじっと見る。この子は、なんで僕に囚われちゃったんだろう。ジーク君が前回、ルヴィアさんを殺されて自殺したように、ジェライト君ももし僕が死んだりしたら…そう考えると悲しくなった。
「ジェライト君」
「なぁに、アキラさん」
「僕が死んだら、ジェライト君が僕を忘れるようにしてほしい」
「…え?」
「ジェライト君が、」
そう言った瞬間、ジェライト君が僕をギュウッと抱き込んだ。
「ジェライト君、苦しい、」
「ねぇ。アキラさん」
今まで聞いたことのないような冷たいジェライト君の声に驚き、顔を見ようとしたが離してもらえない。
「ジェライト君、」
「なんで?なんで、そんなこと言うの?俺が、アキラさんを忘れて生きていけると思うの?もう、俺のすべてにアキラさんが染み込んでるんだよ。アキラさんを取り去ったら、俺は壊れるよ。アキラさんを忘れるなんて絶対にないんだよ。ねぇ、アキラさん、アキラさんは、俺がアキラさんを忘れて生きて行ってもいいの?アキラさんを忘れて、他の人間を好きになるかもしれないんだよ!」
「ジェライト君、」
「やだ!絶対やだ、絶対やだ、…っ」
髪の毛に温かなものがポタポタ染み込む。
「ジェライト君、泣かないで」
「アキラさんが…っ、意地悪言うから…っ」
「あのね、ジェライト君。僕は、キミに生きて欲しいの」
「アキラさんがいないのに生きていたくない」
「ジェライト君、僕は先に死んじゃうかもしれないでしょ、その時に僕を追いかけてもらいたくないんだよ」
「なんで?なんで?だって、アキラさんがいないのに、どうやって生きていけばいいの?イヤだ、絶対イヤだ、そんな誓約しないでよ、アキラさん!イヤだ!」
ジェライト君はそう叫ぶと声をあげて泣き出した。やっぱりこの子は、ジーク君の息子なんだな。僕はジーク君がかけた誓約魔法の中身はわからないけど、どんなことをしてもルヴィアさんを手放す気はないってことなんだろう。
僕が死んだ後、僕を忘れられずにいるジェライト君はどうなってしまうのかな。こんなに魔力が高いのに、そのときジーク君やナディール様がいなくてジェライト君を抑えきれなかったら?ルヴィアさんを喪ったと思ったジーク君のように国を焼いてしまうかもしれない。ジェライト君には炎の特性はないけど。
ジェライト君を受け入れた。だから最期まで一緒にいる。死んで欲しくない気持ちに変わりはないけど、ジーク君がルヴィアさんに囚われたように、僕に囚われてしまったジェライト君を手放してはいけないのかもしれない。
可哀想だな、ジェライト君。
もっと、自由になれれば良かったのにね。
キミは、僕を逃がさないって言ったけど、僕がキミを囚えてしまったんだね。
それなら。僕もキミを逃がさないよ。
「ジェライト君」
「イヤだ、アキラさん、もう聞きたくない。言わないで、やだ、アキラさん、」
「ジェライト君、ごめんね。僕が間違ってたよ。僕が死んだ後も生きて欲しいなんて、我儘を言って悪かった。ごめん」
「…アキラさん」
真っ赤な目のジェライト君は、ようやく僕を離してくれた。この子は本当に…可愛いなぁ。
「ジェライト君、決めたよ」
「イヤだ、さっきのはイヤだ!」
「聞いて、ジェライト君、僕が間違ってた。ね、ごめん。聞いてくれるかい」
「さっきのこと、言わないで」
「うん、言わないよ。約束するから」
「…じゃあ聞く」
「ジェライト君、僕が死んだら、」
「アキラさん、約束したでしょ!」
「続きを聞いて、ジェライト君」
「…」
「僕が死んだら、ジェライト君も死ぬようにして」
「え…?」
「ジェライト君が先にもし死んでしまったときも、僕を死ぬようにして。一緒に死ぬ。ね、ずっと一緒だよ。ジェライト君」
ジェライト君は目を見開くと、ボタボタと涙をこぼした。
「いいの、アキラさん、」
「いいよ」
「本当にいいの、俺、離してあげられないよ」
「もう逃がさないんでしょ。離す気ないじゃない。いいんだよ、ジェライト君。僕はキミから逃げないよ。ね。一緒にいよう」
「うん…っ」
ジェライト君はそこから一時間、僕を抱き締めて離さなかった。ずっとずっと離さなかった。
「アキラさん」
「ん?」
「俺、もうひとつ、要求通したの」
「え?」
「王家に認めさせるって言ったこと」
「あぁ、そう言ってたね、」
「アズライト様に…陛下に、同性婚を認める法律を制定してもらう。なるべく早く」
「…同性婚」
「うん。もう、制定は決まったの。するって。陛下、してくれるって」
どのくらい脅したのかな。
「やっぱり、アキラさんと手を繋いで歩きたい、カーディナルでも。キスもしたいし、抱き締めたりもしたい。変な目で見られても、法律で認められればそういう目で見る人ばかりじゃなくなるかもしれないから。アキラさん、」
ジェライト君は僕をじっと見つめて言った。
「アキラさん、俺と結婚して」
「ありがとう、ジェライト君」
「…いいの」
「いいよ、当たり前じゃない」
「本当に?」
「あのさ、ジェライト君、自分が言い出したのになんで僕が受け入れたことを認めないの」
「…だって、」
「ジェライト君、僕もキミが好きだよ。結婚しよう。ずっと一緒にいよう」
「…うん!」
その夜、ジェライト君が誓約魔法をかけた。その輪っかの上にお互いの指輪を嵌める。
「法律が制定されたら、結婚式しよう、アキラさん」
「うん、そうだね。みんなに、お祝いしてもらおうね」
「うん。大好き、アキラさん」
「僕も大好きだよ、ジェライト君」
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