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「あの時、ユリアーナは近くの川から水を汲んできて、傷を洗い流してくれた。だいじょうぶ、いたくないよ、って、薬草を貼ってくれたんだ。同じくらいの年なのに、こんなことができるなんてすごい、って…。俺はそれまで、自分が望んだわけでもないのにジルコニアの嫡男だからと痛い思いやツラいことばかりで、なんでこんなことしなくちゃならないんだ、ってしか思ってなかった。でも、ユリアーナ、キミに会って、あの時俺は気持ちが変わったんだ。俺もこんな風になりたい、って。今の俺があるのはユリアーナ、キミのおかげなんだ。キミと出逢えたから、ここまで頑張れた。あの時からキミは、俺の最愛の女性なんだ」
フェルナンド様は私をじっと見つめ、繋いでいる手にまた口づけた。その瞳の熱に、もう倒れそうだ。無理。こんなこと、無理。フェルナンド様、無理です、もう少し手加減してください…!
「あの時、名前を教えてくれたから、探して探して、ようやく見つけて…両親に、ユリアーナと結婚したい、ってお願いして、ようやく婚約を申し込んでもらえたんだよ。政略、なんて言ったけど、俺がユリアーナを望んで結婚してもらったんだ」
また愛おしげに指で手の甲をスルリとされる。その久しぶりの感覚に、手が痺れたようになる。
「ユリアーナ、あの、…ホランド家のご家族には説明してあるんだけど、キミは知ってるのかな、その…ジルコニア侯爵家が影の一族だということを」
「…影?」
さっき言ってた、
「訓練の一環での毒、って、なんのことなんだろうと思っていたのですが、そういう、」
フェルナンド様は困ったような顔になると、
「…俺、もうユリアーナのこと離せないよ。ヤダって言われても、もう離さない」
スッと立ち上がったフェルナンド様は私を抱き上げると、そのまま横抱きにしてベンチに座り膝に乗せた。
「フェルナンド様っ!?」
み、密着度合いが、激しすぎる!なんで予告なしにこういうことするの!
私の心の叫びなどお構いなしにフェルナンド様は私の髪の毛に顔を埋めた。
「ユリアーナ…やっぱり、違う匂いだ」
「…え?」
「髪の毛。今夜は一緒の香りになるな、俺もこちらで風呂に入らせてもらうから。早くユリアーナとお揃いになりたい」
「お、お風呂…っ!?」
顔を上げたフェルナンド様は私を覗き込むようにすると、
「大丈夫だよ、今夜は一緒に入ったりしないから。家に帰るまでは我慢する」
とニコリとした。…え?
「家に帰るまでは…?」
「うん。家に帰ったら、毎日一緒に入る。ユリアーナと」
「え!?」
あ、と声をあげたフェルナンド様は、
「でも、俺、これからは仕事で帰れない時もあるだろうから…あの性悪夫婦がこれからはまた面白がって俺とユリアーナを邪魔しにかかるだろうし…あの腐れがいなくなったから」
「いなくなった…?アマンダ様が、」
「ユリアーナ、ダメ」
突然フェルナンド様に唇を塞がれる。さっきみたいに軽く触れるだけの口づけではなく、ムニュ、と強く押しつけられる。
「あの女の名前、言っちゃダメ。ユリアーナのキレイな唇が腐る」
…腐りません。
「あの、ジルコニアご夫妻は、どうして私をあんなに歓待してくださったのでしょう?」
「まずね…母親…あの人は、俺の本当の母親なんだよ。さっき言ったようにジルコニアは影の一族なんだけど、その中でいろいろあって顔を変える必要性が出て、別人になって戻ってきたの。あの二人は、正真正銘血の繋がった俺の両親で…俺がユリアーナと結婚したい、絶対に探しだしてみせるから、って言った時に、勝手に見に行ってたんだ。俺が探してるのを知りながらまったく教えてはくれず、自分たちは毎日のように見に行ってさ…」
「…え?」
「その時からもう両親の中では、ユリアーナを俺の妻にする、って決めてたらしいよ。ユリアーナの可愛さとか聡明さとか芯の強さとかそういうところに惚れこんじゃったの。俺の両親も。あ、一番ユリアーナを愛してるのは俺だからな!誰にも負けないから、絶対に。…ユリアーナを抱けるのも、俺だけだから」
抱ける、という言葉の意味が頭で繋がって顔が赤くなる。そうだ、私、
「ユリアーナ、」
「ひゃいっ!?」
フェルナンド様は一瞬驚いたような顔になると、その後ブハ、と吹き出した。
「ク…、なに、その返事…面白い…かわい…」
そう言ってフェルナンド様は私の頬に手を当てた。まだほんのり冷たいその手が、私の顔をフェルナンド様に向けさせ目がバッチリ合ってしまう。みるみる顔が熱くなるのを感じ、思わず目を閉じると、またチュ、と唇が触れた。
「ユリアーナ…リア、目、開けて」
リア…?
恐る恐る目を開けると、優しく微笑むフェルナンド様が、
「これから、リアって呼ぶ。いい?リア。…いい、って言って」
耳元で囁かれ、背中がゾクゾクッとする。思わず跳ねた私のカラダをフェルナンド様がキュッと抱き締める。もう、やめて、もうちょっと手加減してぇ!
「フェ、フェルナンド、さまっ!あのっ!私、…ひゃあっ!?」
今度は耳をハムッとされた。その唇の熱さに動悸が激しくなる。胸が苦しい。
「ねぇ…リア、いい?」
「いい、いいでしゅっ!」
またブハ、と吹き出すフェルナンド様。なんなの…!ひどい…!
フェルナンド様は私をじっと見つめ、繋いでいる手にまた口づけた。その瞳の熱に、もう倒れそうだ。無理。こんなこと、無理。フェルナンド様、無理です、もう少し手加減してください…!
「あの時、名前を教えてくれたから、探して探して、ようやく見つけて…両親に、ユリアーナと結婚したい、ってお願いして、ようやく婚約を申し込んでもらえたんだよ。政略、なんて言ったけど、俺がユリアーナを望んで結婚してもらったんだ」
また愛おしげに指で手の甲をスルリとされる。その久しぶりの感覚に、手が痺れたようになる。
「ユリアーナ、あの、…ホランド家のご家族には説明してあるんだけど、キミは知ってるのかな、その…ジルコニア侯爵家が影の一族だということを」
「…影?」
さっき言ってた、
「訓練の一環での毒、って、なんのことなんだろうと思っていたのですが、そういう、」
フェルナンド様は困ったような顔になると、
「…俺、もうユリアーナのこと離せないよ。ヤダって言われても、もう離さない」
スッと立ち上がったフェルナンド様は私を抱き上げると、そのまま横抱きにしてベンチに座り膝に乗せた。
「フェルナンド様っ!?」
み、密着度合いが、激しすぎる!なんで予告なしにこういうことするの!
私の心の叫びなどお構いなしにフェルナンド様は私の髪の毛に顔を埋めた。
「ユリアーナ…やっぱり、違う匂いだ」
「…え?」
「髪の毛。今夜は一緒の香りになるな、俺もこちらで風呂に入らせてもらうから。早くユリアーナとお揃いになりたい」
「お、お風呂…っ!?」
顔を上げたフェルナンド様は私を覗き込むようにすると、
「大丈夫だよ、今夜は一緒に入ったりしないから。家に帰るまでは我慢する」
とニコリとした。…え?
「家に帰るまでは…?」
「うん。家に帰ったら、毎日一緒に入る。ユリアーナと」
「え!?」
あ、と声をあげたフェルナンド様は、
「でも、俺、これからは仕事で帰れない時もあるだろうから…あの性悪夫婦がこれからはまた面白がって俺とユリアーナを邪魔しにかかるだろうし…あの腐れがいなくなったから」
「いなくなった…?アマンダ様が、」
「ユリアーナ、ダメ」
突然フェルナンド様に唇を塞がれる。さっきみたいに軽く触れるだけの口づけではなく、ムニュ、と強く押しつけられる。
「あの女の名前、言っちゃダメ。ユリアーナのキレイな唇が腐る」
…腐りません。
「あの、ジルコニアご夫妻は、どうして私をあんなに歓待してくださったのでしょう?」
「まずね…母親…あの人は、俺の本当の母親なんだよ。さっき言ったようにジルコニアは影の一族なんだけど、その中でいろいろあって顔を変える必要性が出て、別人になって戻ってきたの。あの二人は、正真正銘血の繋がった俺の両親で…俺がユリアーナと結婚したい、絶対に探しだしてみせるから、って言った時に、勝手に見に行ってたんだ。俺が探してるのを知りながらまったく教えてはくれず、自分たちは毎日のように見に行ってさ…」
「…え?」
「その時からもう両親の中では、ユリアーナを俺の妻にする、って決めてたらしいよ。ユリアーナの可愛さとか聡明さとか芯の強さとかそういうところに惚れこんじゃったの。俺の両親も。あ、一番ユリアーナを愛してるのは俺だからな!誰にも負けないから、絶対に。…ユリアーナを抱けるのも、俺だけだから」
抱ける、という言葉の意味が頭で繋がって顔が赤くなる。そうだ、私、
「ユリアーナ、」
「ひゃいっ!?」
フェルナンド様は一瞬驚いたような顔になると、その後ブハ、と吹き出した。
「ク…、なに、その返事…面白い…かわい…」
そう言ってフェルナンド様は私の頬に手を当てた。まだほんのり冷たいその手が、私の顔をフェルナンド様に向けさせ目がバッチリ合ってしまう。みるみる顔が熱くなるのを感じ、思わず目を閉じると、またチュ、と唇が触れた。
「ユリアーナ…リア、目、開けて」
リア…?
恐る恐る目を開けると、優しく微笑むフェルナンド様が、
「これから、リアって呼ぶ。いい?リア。…いい、って言って」
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「フェ、フェルナンド、さまっ!あのっ!私、…ひゃあっ!?」
今度は耳をハムッとされた。その唇の熱さに動悸が激しくなる。胸が苦しい。
「ねぇ…リア、いい?」
「いい、いいでしゅっ!」
またブハ、と吹き出すフェルナンド様。なんなの…!ひどい…!
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