逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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ハロルドの独白

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「…エイサン殿下が、王太子になる可能性が高いそうですね」

珍しく不機嫌さを顕にイーサンが吐き捨てる。

「まぁ、まだ本決まりではないがな」

「俺はイヤですよ。断固拒否です」

そう言われてもな、とぼんやりしていると、

「そうでしたね。婚約発表間近の殿下に申し上げたところで、どうせ俺の話なんて聞いていませんよね」

と嫌味を言われた。ほんと、珍しいな。

「…どうした?」

「…殿下と同じで、婚約発表間近なんですよ、俺も」

「めでたいじゃないか」

「殿下のように想い人ならばめでたいですよ。俺はよりによって、想い人の姉ですよ!?」

「…交換できないのか?」

「できませんね。男なので」

「…なに?」

イーサンはため息をつくと、「俺の想い人は男なんです」と呟くように言った。

「…ジルコニア次期当主が、後継をつくらないわけにはいかないもんな」

「…そうなんですよ。でも、割りきれないんです。そのうえ、あのボンクラに仕えるなんて、絶対にイヤですよ」

ドサリ、と横になったイーサンは顔を腕で覆うと、「…すみません」と泣き出した。

「イーサン」

「…なんですか」

「当主にならなくてもいいのか。もし、ならなくてもいいなら、俺が同性婚の法律を作ってやる。おまえと想い人が結婚できるようにしてやる。ただし、当主になる道を選ぶならダメだ。どっちかを諦めろ」

「…雇ってくださるんですか」

「ああ。ウッドベル家で諜報部を作る。そこで働け。おまえみたいな優秀な人間を囲えるなら最高だ」

「…ほんと、です、か」

いつになく弱気なイーサンに、恋をするとこいつもこんなになるんだな、とほほえましかった。
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