逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

ハロルドの独白

６

そして、８歳のうちに俺は早々に王位継承権を放棄した。セシリアと絶対に結婚して幸せにしたい。こんな、窮屈なところで仕事ばかりなんてまっぴらだ。決まったことをするより新しいことに取り組みたい。セシリアの薫りをイメージして、新種の薔薇を育てることにする。婚約を申し込むため、ウッドベル侯爵とも交流を持つことにした。領地や、手掛ける事業について話を聞く。前回はあまり話をしなかったが、妻と娘を深く愛していることを知った。…俺の仕打ちに、憤っただろう。今回は間違えない。

婚約を打診したが、始めは断られ続けた。継承権の放棄を知ったときは、心底呆れた顔をしていた。だが、俺の努力を影で見てくれていたらしく、交流を絶とうとはしなかったのが嬉しかった。

継承権を放棄したことでコンラッドはさらに軟化し、アデルも懐いてくれるようになった。お互いに好意を抱いていることがバレバレなのに、水をさすような真似をする輩が現れた。エイサンだ。

こいつは、自分が王太子になる、将来の国王だ、だから自分と結婚したら王妃になれる、とアデルに囁いたらしいが、前回とうって変わってアデルは靡かなかった。イーストウェル侯爵夫妻の堅実な教育の賜物だろう。しつこいエイサンをいやがり、

「ハロルドお兄様、なんとかしてくださいませ！」

と泣き付いてきたことも一度や二度ではない。

しかし、コンラッドと違い自律しないエイサンはどんどんアデルに執着していった。