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なにかがはじまる
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夏休みが明け、初日。
ハロルド様とともに教室に入ると、ロゼリア様が近づいてきた。
「おはよう、セシィ」
「おはよう、ロゼ」
この休み中に、わたしとロゼリア様はとても仲良くなった。アデル様とともに、大親友と言っていい。
ロゼリア様が懸念していたことは、アデル様の一件でエイサン殿下が消えたことに伴い消失したため、肩の荷がおりたのか朗らかに笑うようになった。嬉しいことだ。
「セシィ。ヒル家のおふたり、学園を辞めたのですって」
「…え?」
慌ててハロルド様を見上げると、コクリと頷いた。
「伯爵に降格したことが、プライドが高いヒル家には耐えられなかったんだろうな。夏休みに入るとすぐ、陛下に届け出がきてね。ヒル家の奥方の生家であるクリミア皇国に移ったんだよ。もうヒル家は我が国には存在しない」
「…そんなことに、…クリミア皇国?エイサン殿下が行かれた国ですよね?」
ハロルド様はニヤリとすると、
「どちらにとっても、平坦な道ではないだろうね」
「おはよう、ハロルド。セシリア様、ロゼリア様も。元気そうでなにより」
「コンラッド様、おはようございます」
「結婚式以来ですね、わたくしまでご招待いただいてありがとうございました。アデル様、お綺麗でしたね」
コンラッド様はニッコリすると、「ありがとうございます」と頬を染めた。
夏休み中に、コンラッド様とアデル様は式を挙げ、夫婦になられた。そこには、
「…まさかエイサン殿下までご招待なさるとは思いませんでしたわ」
「当てつけです。あいつに、アデルはもう俺のモノだと見せつけてやるために。あの悔しそうな顔を見たら、溜飲が下がりました」
爽やかに毒を吐くコンラッド様は、やはりイーストウェル公爵閣下のご子息なのだろう。
「エイサンも、すぐに結婚させられたからな」
「まぁ、…クリミア皇国の皇女が30だからなぁ。後継ぎも作らなくちゃだし。一応エイサンが一番身分が高いから王配候補だけど、愛人も3人くらいいるらしいからな、あの皇女は。これからのエイサン次第で、王配になれるかどうかも怪しいところだな」
淡々と告げるハロルド様の言葉に、エイサン様のご気質では苦労なさるだろうな、と嘆息する。アデル様から離れてくださって本当に良かった。
「ところでロゼリア様、昨日我が家にクリストファーが来ましてね。ロゼリア様に変な虫がつかないように見張れと。まったく、心配性だ、あいつは」
「…申し訳ありません」
「いや、むしろこちらが申し訳ない。従兄弟として謝罪する。あんなめんどくさい男を引き受け教育してくれて、ありがたさしかない。なぁ、ハロルド」
「その通りだ。ありがとう、ロゼリア様」
ロゼリア様は真っ赤な顔になると俯いてしまった。可愛らしい。
あの日、ロゼリア様にばっさりと切り捨てられたクリストファー様は、人が変わったようになったとハロルド様が笑いながら教えてくれた。
「侯爵家がひとつ空いたから、一代限りと言わず爵位を与えてもいいと陛下も仰ってる。ロゼリア様は手綱の締め方が素晴らしくうまい。あんなに努力できる男だったとは、初めて知ったよ」
「とんでも…ない…です…」
消え入りそうに答えるロゼリア様。私は知っている。この夏休み中に、ロゼリア様はクリストファー様に純潔を奪われてしまったのだ。とんでもない手でクリストファー様は周囲に認めさせてしまい、ロゼリア様も仕方ないと諦めたようだ。
怖くなかったのか尋ねる私に、真っ赤な顔でロゼリア様は、「…大丈夫でした」とだけ答えた。それ以降も定期的になさっているらしく、それが糧となりクリストファー様はメキメキと力をつけているらしい。
「まさかコンラッドだけでなくクリスにまで出し抜かれるとはな」
とぼやくハロルド様の言葉は聞き流すことにした。
ハロルド様とともに教室に入ると、ロゼリア様が近づいてきた。
「おはよう、セシィ」
「おはよう、ロゼ」
この休み中に、わたしとロゼリア様はとても仲良くなった。アデル様とともに、大親友と言っていい。
ロゼリア様が懸念していたことは、アデル様の一件でエイサン殿下が消えたことに伴い消失したため、肩の荷がおりたのか朗らかに笑うようになった。嬉しいことだ。
「セシィ。ヒル家のおふたり、学園を辞めたのですって」
「…え?」
慌ててハロルド様を見上げると、コクリと頷いた。
「伯爵に降格したことが、プライドが高いヒル家には耐えられなかったんだろうな。夏休みに入るとすぐ、陛下に届け出がきてね。ヒル家の奥方の生家であるクリミア皇国に移ったんだよ。もうヒル家は我が国には存在しない」
「…そんなことに、…クリミア皇国?エイサン殿下が行かれた国ですよね?」
ハロルド様はニヤリとすると、
「どちらにとっても、平坦な道ではないだろうね」
「おはよう、ハロルド。セシリア様、ロゼリア様も。元気そうでなにより」
「コンラッド様、おはようございます」
「結婚式以来ですね、わたくしまでご招待いただいてありがとうございました。アデル様、お綺麗でしたね」
コンラッド様はニッコリすると、「ありがとうございます」と頬を染めた。
夏休み中に、コンラッド様とアデル様は式を挙げ、夫婦になられた。そこには、
「…まさかエイサン殿下までご招待なさるとは思いませんでしたわ」
「当てつけです。あいつに、アデルはもう俺のモノだと見せつけてやるために。あの悔しそうな顔を見たら、溜飲が下がりました」
爽やかに毒を吐くコンラッド様は、やはりイーストウェル公爵閣下のご子息なのだろう。
「エイサンも、すぐに結婚させられたからな」
「まぁ、…クリミア皇国の皇女が30だからなぁ。後継ぎも作らなくちゃだし。一応エイサンが一番身分が高いから王配候補だけど、愛人も3人くらいいるらしいからな、あの皇女は。これからのエイサン次第で、王配になれるかどうかも怪しいところだな」
淡々と告げるハロルド様の言葉に、エイサン様のご気質では苦労なさるだろうな、と嘆息する。アデル様から離れてくださって本当に良かった。
「ところでロゼリア様、昨日我が家にクリストファーが来ましてね。ロゼリア様に変な虫がつかないように見張れと。まったく、心配性だ、あいつは」
「…申し訳ありません」
「いや、むしろこちらが申し訳ない。従兄弟として謝罪する。あんなめんどくさい男を引き受け教育してくれて、ありがたさしかない。なぁ、ハロルド」
「その通りだ。ありがとう、ロゼリア様」
ロゼリア様は真っ赤な顔になると俯いてしまった。可愛らしい。
あの日、ロゼリア様にばっさりと切り捨てられたクリストファー様は、人が変わったようになったとハロルド様が笑いながら教えてくれた。
「侯爵家がひとつ空いたから、一代限りと言わず爵位を与えてもいいと陛下も仰ってる。ロゼリア様は手綱の締め方が素晴らしくうまい。あんなに努力できる男だったとは、初めて知ったよ」
「とんでも…ない…です…」
消え入りそうに答えるロゼリア様。私は知っている。この夏休み中に、ロゼリア様はクリストファー様に純潔を奪われてしまったのだ。とんでもない手でクリストファー様は周囲に認めさせてしまい、ロゼリア様も仕方ないと諦めたようだ。
怖くなかったのか尋ねる私に、真っ赤な顔でロゼリア様は、「…大丈夫でした」とだけ答えた。それ以降も定期的になさっているらしく、それが糧となりクリストファー様はメキメキと力をつけているらしい。
「まさかコンラッドだけでなくクリスにまで出し抜かれるとはな」
とぼやくハロルド様の言葉は聞き流すことにした。
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