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なにかがはじまる
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夏休みに入ると同時にヒル家の降格が理由とともに発布され、イーストウェル家は公爵家になった。
「…驚きましたわ。セシリア様は御存知でしたの?」
約束通り我が家に泊まりに来てくれたロゼリア様は開口一番にそう言ってため息をついた。今日も今日とてお美しい。その所作にこちらもため息が洩れそうだ。
「ええ…我が家は、イーストウェル家と懇意にさせていただいていますから」
「そうでしたわね。それにしても、コンラッド様は男気のある方ですね」
「…ロゼリア、他の男の名前を呼ばないで」
突然聞こえてきた声にふたりでビクリとなる。入り口を見るとそこには、
「…クリス。挨拶もせず、なんだその態度は」
しかめっ面のハロルド様と、クリストファー第三王子が立っていた。ふたつ年下のクリストファー様は、ハロルド様より少し背が低いもののカラダつきはやはりがっしりとしている。そのクリストファー様は、無表情でロゼリア様をじっと見ている。視線が怖い。
「そもそもおまえ、ロゼリア嬢を呼び捨てにするなんて、」
ハロルド様の言葉など耳に入っていないかのように、クリストファー様はこちらに近づいてくると突然ロゼリア様を抱き上げた。
「…な、なにを…っ。殿下、」
「クリス」
「殿下、御離しくださ」
「クリスだってば、ロゼリア」
「でん、んぅっ!?」
クリストファー様はいきなりロゼリア様に口付けた。あまりのことに動けずにいると、ハロルド様がロゼリア様を引き剥がし私とともに背中に隠すようにした。ロゼリア様は真っ赤な顔で涙目になっている。今にも倒れそうで、そっと背中を支えた。フルフルと震える様が可愛らしすぎる。
「おまえは!勝手についてきた上に、何をしているんだ!」
「…兄上、いま、僕のロゼリアに触れましたね。赦せない」
「話を聞け!」
「ロゼリア、おいで。僕が消毒してあげるから」
ブンブンと首を横に振るロゼリア様は、顔が真っ青になっていた。…クリストファー殿下って、こんな方なの?あれ?でも、ロゼリア様にそっけなかった、って、
「ロゼリア、僕、王位継承権放棄したから。妃教育は、もう受けなくていい。ホワイト家に婿入りするからね」
またブンブンと首を横に振るロゼリア様に、クリストファー様の瞳がスッと細くなる。
「…なに?僕以外に好きな男がいるの?」
「僕以外に、っていう前提が間違ってるぞクリス。そもそもおまえはロゼリア嬢と接点がなかっただろう。おまえの婚約者になったが、形だけで」
「僕はロゼリアが好きだよ。ずっと見てきたんだ。バカなエイサン兄上のおかげで手に入れることができてそれだけは感謝してる。形だけ?僕はロゼリアの婚約者だ。僕が成人したらすぐに結婚して夫婦になる。さぁ、ロゼリア、おいで」
ずっと見てきた、といわれたからか、さらに顔色が悪くなるロゼリア様。恐怖からかカラダもガタガタ震え始める。
「…セシリア様、わ、わたくし、」
「ロゼリア様…っ」
倒れこむようにカラダを預けられ、一緒に倒れそうになったところをハロルド様が助けてくれた。
「兄上!殺しますよ!」
「うるさい、帰れ!これ以上ロゼリア嬢に嫌われたいのか!」
「ロゼリア、まさかコンラッドが好きなの?さっき、コンラッドを男気があるって…あいつ…殺す」
クリストファー様はクルリと踵をかえすと、ものすごい速さで消えた。いま、コンラッド様を殺すって、
「ハ、ハル様、」
「…大丈夫だと信じよう」
ロゼリア様は青い顔でぐったりとしていた。
「…驚きましたわ。セシリア様は御存知でしたの?」
約束通り我が家に泊まりに来てくれたロゼリア様は開口一番にそう言ってため息をついた。今日も今日とてお美しい。その所作にこちらもため息が洩れそうだ。
「ええ…我が家は、イーストウェル家と懇意にさせていただいていますから」
「そうでしたわね。それにしても、コンラッド様は男気のある方ですね」
「…ロゼリア、他の男の名前を呼ばないで」
突然聞こえてきた声にふたりでビクリとなる。入り口を見るとそこには、
「…クリス。挨拶もせず、なんだその態度は」
しかめっ面のハロルド様と、クリストファー第三王子が立っていた。ふたつ年下のクリストファー様は、ハロルド様より少し背が低いもののカラダつきはやはりがっしりとしている。そのクリストファー様は、無表情でロゼリア様をじっと見ている。視線が怖い。
「そもそもおまえ、ロゼリア嬢を呼び捨てにするなんて、」
ハロルド様の言葉など耳に入っていないかのように、クリストファー様はこちらに近づいてくると突然ロゼリア様を抱き上げた。
「…な、なにを…っ。殿下、」
「クリス」
「殿下、御離しくださ」
「クリスだってば、ロゼリア」
「でん、んぅっ!?」
クリストファー様はいきなりロゼリア様に口付けた。あまりのことに動けずにいると、ハロルド様がロゼリア様を引き剥がし私とともに背中に隠すようにした。ロゼリア様は真っ赤な顔で涙目になっている。今にも倒れそうで、そっと背中を支えた。フルフルと震える様が可愛らしすぎる。
「おまえは!勝手についてきた上に、何をしているんだ!」
「…兄上、いま、僕のロゼリアに触れましたね。赦せない」
「話を聞け!」
「ロゼリア、おいで。僕が消毒してあげるから」
ブンブンと首を横に振るロゼリア様は、顔が真っ青になっていた。…クリストファー殿下って、こんな方なの?あれ?でも、ロゼリア様にそっけなかった、って、
「ロゼリア、僕、王位継承権放棄したから。妃教育は、もう受けなくていい。ホワイト家に婿入りするからね」
またブンブンと首を横に振るロゼリア様に、クリストファー様の瞳がスッと細くなる。
「…なに?僕以外に好きな男がいるの?」
「僕以外に、っていう前提が間違ってるぞクリス。そもそもおまえはロゼリア嬢と接点がなかっただろう。おまえの婚約者になったが、形だけで」
「僕はロゼリアが好きだよ。ずっと見てきたんだ。バカなエイサン兄上のおかげで手に入れることができてそれだけは感謝してる。形だけ?僕はロゼリアの婚約者だ。僕が成人したらすぐに結婚して夫婦になる。さぁ、ロゼリア、おいで」
ずっと見てきた、といわれたからか、さらに顔色が悪くなるロゼリア様。恐怖からかカラダもガタガタ震え始める。
「…セシリア様、わ、わたくし、」
「ロゼリア様…っ」
倒れこむようにカラダを預けられ、一緒に倒れそうになったところをハロルド様が助けてくれた。
「兄上!殺しますよ!」
「うるさい、帰れ!これ以上ロゼリア嬢に嫌われたいのか!」
「ロゼリア、まさかコンラッドが好きなの?さっき、コンラッドを男気があるって…あいつ…殺す」
クリストファー様はクルリと踵をかえすと、ものすごい速さで消えた。いま、コンラッド様を殺すって、
「ハ、ハル様、」
「…大丈夫だと信じよう」
ロゼリア様は青い顔でぐったりとしていた。
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