逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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なにかがはじまる

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嵐のような週末が明けて月曜日。いつものようにハロルド様と登園すると、教室内がざわついていた。

「…何かあったのですか?」

先にいらしたロゼリア様に声をかけると、「あれが」と視線を黒板に向ける。そこには、貼り紙がしてある。

ハロルド様と見に行くと、イーサン様がいらした。

「おはようございます、殿下、セシリア様」

「おはよう、イーサン。…これは?」

イーサン様はため息をつくと、「父が怒り狂ってまして」と露骨に嫌そうな顔になった。

「『紋章のない馬車の学園への乗り入れを禁ず』…あからさまだな」

「一応、イーストウェル閣下にはお許しをいただいております。…どうせすぐにわかることだと」

「…まぁ。ジルコニア侯爵の気持ちもわからんではない」

「怒り狂っていると見せかけて、内心は喜び悶えていると思いますがね、俺は」

「言ってやるなよ」

「わかっております」

ふたりの話を聞くとはなしに聞いていると、「おはよう」と後ろから声をかけられた。

「コンラッド様」

「おはようございます、セシリア様。あの、今日の放課後、何かご予定はありますか」

「俺もシアも空いてる」

「…おまえには聞いてないんだが、まあ、おまえにも来てもらいたいからいいか。今日、我が家にいらしていただけませんか。アデルが、セシリア様にお会いしたいと」

「…よろしいのですか?」

コンラッド様はニコリ、とすると「もちろんです。お願いします」

ハロルド様に視線を移すとコクリと頷くので、昨日の今日でという思いはあったがお邪魔することにした。

「良かった。アデルも喜びます」

思っていたよりコンラッド様がお元気そうで、なんとなく拍子抜けする。そもそも今日はお休みになるのでは、と勝手に考えていたのだが、…いつも通りにすることが周りの目への牽制にもなるということだろうか。

「では、放課後に」

そう言って席に戻るコンラッド様を見るとはなしに見ていると、入り口からクレイグ様が入ってくるのが視界に入った。こちらは驚くほど顔色が悪い。コンラッド様を見て、カラダが跳ね上がっている。当のコンラッド様は、「おはよう、クレイグ」と何事もないように挨拶をされていた。

「…おはよう、コンラッド、」

「…何も言うな」

そのまま席に座ると、コンラッド様は本を読み始めた。こちらに視線を移したクレイグ様は、ばつの悪そうな顔になった。

「シア、俺たちも座ろう」

ハロルド様に手を引かれ、着席する。クレイグ様は何か言いたそうにこちらを見ていたが、珍しく一日中ハロルド様が離れずにいたため近づいてくることはなかった。

(…降格のこと、御存知なのかしら)

まだ公にしていないとハロルド様は仰っていたが…爵位の入れ替えを行うならば、アデル様の件も公にするということだろう。イーストウェル侯爵は王弟という難しい立場だ。そこをあえて公爵にするとなれば、周りが納得する理由がなければならないだろう。

…アデル様は大丈夫だろうか。

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