逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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なにかがはじまる

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「セシリア、アデル様が見つかったそうだ。私とハロルド殿下は王宮に行く。おまえは母上といなさい。けして、家から出るな。たとえ王宮からの使いと言われても出るな。私か、ハロルド殿下が来ない限り出てはならない。わかったな」

「あなた、大丈夫ですから…わたくしが着いております」

「ロザンナ、おまえも出るな…出ないでくれ、頼む。私の名前で文書が来ても、絶対だ、絶対に出るな…」

お父様はお母様をギュ、と抱き寄せる。

「…おまえを喪ったら、生きていけない」

「あなた、…お約束します。あなたがいらっしゃらない限り、たとえハロルド殿下がいらしても、どこにも参りません。ね…?」

「ロザンナ、…こっちに。ハロルド殿下、少しだけ、お待ちください」

そういうと、お父様はお母様を抱き上げ部屋から出て行った。

「…あなた!」

お母様の顔が真っ赤に染まるが、お父様は気にすることなくスタスタ出ていく。呆然と見送る私を、ハロルド様が抱き寄せた。

「シア、シアもだよ。絶対に出ないで…」

「ハ、ハルさ、ま、」

「…ね?約束して…?」

耳元で囁かれてカラダがビクリと反応する。

「わ、わかりました、」

「じゃ、キスして」

「…え?」

グッ、と更に抱き寄せられ、唇が重なる。容赦なく舌が入ってきて、…ハロルド様の、気持ちが…

思わず、舌を絡めて応えてしまう自分を恥ずかしく思いながらも、私を思ってくれるハロルド様を安心させたい気持ちが勝った。

「…シアっ」

首筋に、ジュウッと吸い付かれる。ハロルド様のその唇の熱さに頭がクラクラする。

「シア、シアは俺のだ。絶対に誰にも渡さない。シア、愛してる…シア、シア、」

「ハ、ル、さま、」

「シア、」

抱きついた背中をそっとさする。幼い時から共に育ってきたアデル様が心配で仕方ないのだろう。もしかして、私まで喪うのではないかと。

「ハル様がいらっしゃるまで、ここから出ません」

「シア」

「大丈夫です。お約束します」

ハロルド様の頬に触れるとひんやりと冷たい。その頬を温めるよう、唇をのせた。

「ハル様、大好きです。私、ここでハル様を待ってます。どこにも、」

「シア、愛してる」

また唇を重ね、ハロルド様は私を抱き締めた。

「…行ってくる」

「はい。お帰りをお待ちしています」

ハロルド様はぎこちなく微笑むと、振り返ることなく部屋を出て行った。
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