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ある出来事
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放課後になり、教室を出ようとしたところでコンラッド様に声を掛けられた。
「セシリア様、少しお時間をいただけますか…バカ王子は、イーサンが連れて帰りましたので今日は俺が責任を持ってセシリア様をお送りします」
「ハロルド様はなにか、」
「いえ、俺がセシリア様と話をしたくて…でもあいつがいると、邪魔されたりすぐにヤキモチやくからうざくて…おっと、本音が出てしまいました、失礼」
ニコ、と微笑んだコンラッド様からは、言葉とは裏腹に嫌悪感などはまったく感じられない。それだけハロルド様といい関係を築けているということだろう。
「…実は。ヒル公爵家の成人の祝いにアデルも行かねばならなくなりまして」
「お聞きしました。…その、」
「…馬車の、中で。お話します」
チラリ、とコンラッド様が視線を向けた先にクレイグ様が立っている。クレイグ様もこちらをじっと見ていた。
「バカ王子がいないのをいいことに、たぶんセシリア様に話かけたいのでしょうが…そんなことになったら俺がハロルドに殺されかねないので阻止します。…セシリア様が、クレイグに用があれば別ですが」
「いいえ、…大丈夫です」
ハロルド様に何かが伝わってしまったら、クレイグ様もコンラッド様もどんな目に遭わされるかわからない。軽はずみな行動は控えなくては。
(…ハロルド様は、あんなに悋気の激しい方だったのかしら。前回は、私にまったく興味も関心もなかったからわからなかっただけなのかしら)
そう考えて、今の考えを振り落とすように頭を軽く振る。前回は、今回は、そう考えるのはやめるのよ。前回のことをあれこれ考えてみたところで、あの時のハロルド様を知ることはできないのだから、…もう、できないのだから。
クレイグ様の何か言いたげな視線を感じながらも、コンラッド様とそのまま脇を通り抜ける。
「ご機嫌よう、クレイグ様」
「…ご機嫌よう、セシリア様。また明日」
馬車に乗り込むと、向かいに座ったコンラッド様が話し始めた。
「入学式以来、アデルはエイサンと顔を合わせていないんです。家から出るときは基本俺か、もしくは父が必ず付き添うようにしていますし、王宮での一件以来、エイサンも我が家に足を運ぶのを自重しているようで…このまま諦めてくれるかも、なんて淡い期待を抱いていたところに招待を受けてしまって…ドレスも、装飾品も一緒に届いてしまって断れない状況にされてしまいまして」
「まぁ…」
「せっかく健康的になってきて、よく笑うようになってくれたのにまた塞ぎ込むように逆戻りです。…どうしたら、諦めてくれるのか」
「エイサン殿下は王太子のままでいらっしゃるのに、まだアデル様を妃になさるおつもりなのでしょうか?」
コンラッド様の眉間がギュッ、としかめられる。
「…あの王宮の一件で、むしろ開き直ったようで。王太子として認められていないのだから、いつ外れたっていい。ハロルドのように継承権も放棄する、その代わりアデルは絶対に妻にする、王族から外れるのだから犯罪者の娘であっても文句はないだろうと」
…ハロルド様が危惧していたことが現実になってしまったようだ。
「セシリア様、少しお時間をいただけますか…バカ王子は、イーサンが連れて帰りましたので今日は俺が責任を持ってセシリア様をお送りします」
「ハロルド様はなにか、」
「いえ、俺がセシリア様と話をしたくて…でもあいつがいると、邪魔されたりすぐにヤキモチやくからうざくて…おっと、本音が出てしまいました、失礼」
ニコ、と微笑んだコンラッド様からは、言葉とは裏腹に嫌悪感などはまったく感じられない。それだけハロルド様といい関係を築けているということだろう。
「…実は。ヒル公爵家の成人の祝いにアデルも行かねばならなくなりまして」
「お聞きしました。…その、」
「…馬車の、中で。お話します」
チラリ、とコンラッド様が視線を向けた先にクレイグ様が立っている。クレイグ様もこちらをじっと見ていた。
「バカ王子がいないのをいいことに、たぶんセシリア様に話かけたいのでしょうが…そんなことになったら俺がハロルドに殺されかねないので阻止します。…セシリア様が、クレイグに用があれば別ですが」
「いいえ、…大丈夫です」
ハロルド様に何かが伝わってしまったら、クレイグ様もコンラッド様もどんな目に遭わされるかわからない。軽はずみな行動は控えなくては。
(…ハロルド様は、あんなに悋気の激しい方だったのかしら。前回は、私にまったく興味も関心もなかったからわからなかっただけなのかしら)
そう考えて、今の考えを振り落とすように頭を軽く振る。前回は、今回は、そう考えるのはやめるのよ。前回のことをあれこれ考えてみたところで、あの時のハロルド様を知ることはできないのだから、…もう、できないのだから。
クレイグ様の何か言いたげな視線を感じながらも、コンラッド様とそのまま脇を通り抜ける。
「ご機嫌よう、クレイグ様」
「…ご機嫌よう、セシリア様。また明日」
馬車に乗り込むと、向かいに座ったコンラッド様が話し始めた。
「入学式以来、アデルはエイサンと顔を合わせていないんです。家から出るときは基本俺か、もしくは父が必ず付き添うようにしていますし、王宮での一件以来、エイサンも我が家に足を運ぶのを自重しているようで…このまま諦めてくれるかも、なんて淡い期待を抱いていたところに招待を受けてしまって…ドレスも、装飾品も一緒に届いてしまって断れない状況にされてしまいまして」
「まぁ…」
「せっかく健康的になってきて、よく笑うようになってくれたのにまた塞ぎ込むように逆戻りです。…どうしたら、諦めてくれるのか」
「エイサン殿下は王太子のままでいらっしゃるのに、まだアデル様を妃になさるおつもりなのでしょうか?」
コンラッド様の眉間がギュッ、としかめられる。
「…あの王宮の一件で、むしろ開き直ったようで。王太子として認められていないのだから、いつ外れたっていい。ハロルドのように継承権も放棄する、その代わりアデルは絶対に妻にする、王族から外れるのだから犯罪者の娘であっても文句はないだろうと」
…ハロルド様が危惧していたことが現実になってしまったようだ。
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