逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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ある出来事

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しかし、私の気持ちとはうらはらに、毎日は何事もなく過ぎていった。ハロルド様のくっつき加減に拍車がかかったせいなのか、クレイグ様もあの日以降、私に話しかけてくることはなかった。

「ハル様は、ヒル公爵家の成人祝いに」

「行きませんが。行きませんが、なにか?なにかセシリア様に関係が?」

何を怒っているのだろう。セシリア様、なんて初めての呼び方までしている。

「ハル様、」

「…行くわけないだろ!俺が婚約者だってわかってるのに、目の前で堂々と略奪宣言するような人間をなぜ祝う必要がある!?あいつ…最近、ヒル公爵も俺に『セシリア様を解放してさしあげては?殿下の愛は重すぎます』なんてチクチク言ってきやがるし…親子揃って陰湿だ!愛が重いのはむしろおまえだろうが!俺からシアを奪うために何年も何年も」

…何年も?

「ハロルド殿下、声が大きすぎます。また塞ぎますよ、唇を」

ハロルド様の後ろからニュッと手が伸びてきたかと思うと、イーサン様がハロルド様の口を塞いだ。

「…むぅ!」

口を塞がれたハロルド様はモゴモゴしながらまだ何か言っているようだったが、イーサン様が何かを囁くと途端に静かになった。

「無防備すぎです」

「…すまない」

そう言って、ハロルド様はイーサン様に頭を下げた。

「ハロルド殿下。まだ先は長いのですよ。セシリア様への愛があふれすぎて、本末転倒にならないようにしていただかなくては」

「…わかってる。すまない、イーサン。気を付ける」

ハロルド様の言葉を聞いたイーサン様はニコリとすると、

「セシリア様はヒル公爵家に行かないのですよね」

「はい。正式にお断りしています」

「それがよろしいかと。…セシリア様」

「はい」

イーサン様はニコリとした顔のまま、しかしまったく目が笑っていない顔でこちらをじっと見た。

「ヒル公爵家から、エイサン殿下にも招待が届いておりまして。エイサン様は王太子として参加するのですが、婚約者として周知するためにアデル様を同伴することになりました。アデル様は行きますが、セシリア様は行かないでください」

「…はい」

行かないでください、と言ってはいるが、要は命令のようなものだ。元々行く気もないのだから逆らうつもりもないが、あまりこういう言い方をしないイーサン様にしては珍しい圧の掛け方である。何かあるのだろうか。

「なにしろ、ハロルド殿下がもう気が気じゃないので…王宮でも煩くて敵わないと陛下が」

「イーサン余計なことを言わないでくれないかな」

「でも本当のことですからねぇ。セシリア様に、一言いただければハロルド殿下も少し落ち着くのではないかと思うのですが…」

チラリと見られて、いったい何のことかとハロルド様を見ると、ハロルド様は真っ赤になっていた。

「…ハル様?」

「あ、セシリア様、まもなく授業ですから、どうぞお席に」

イーサン様に促され、気になりつつも席に座る。隣に座ったハロルド様の顔はしばらく赤いままだった。



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