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新たな火種
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「ハロルド様!」
突然の声に驚いて見ると、ヒル家の双子が立っていた。
「…なぜ声をかける?今俺は」
ハロルド様の顔が超絶不機嫌に変わる。もう少し、心情を出しすぎるのを控えたほうがいいと思うのだが…あまりにも、わかりやすすぎてこちらの方がいたたまれなくなる。
「ちょうど良かった、ヒル公爵子息が話があるんだろ?セシリア様、我々は」
コンラッド様が私を見て離れようとすると、クレイグ様が慌てたように遮った。
「いえ、皆様にお話が…来月、我々の成人の祝いがあるので、来ていただけないかと、」
その言葉に眉をギュッとしかめたハロルド様が、
「断る。シアは行かない」
と吐き捨てるように、クレイグ様の方を一瞥もせずに言った。
…え?
「あ、の、ハル様、」
「あんなことをしながらよく言えるな。今度はシアに何をするつもりだ、ヒル公爵令嬢」
クレイグ様の後ろに立っていたマリエル様は、ハロルド様の言葉にビクリと肩を震わせ顔色が悪くなっていく。そのマリエル様を庇うように、
「ハロルド様、2週間の停学中、マリエルも反省をいたしましたし、」
「復学してからシアに謝罪していない。反省したのはあくまでも形だけだろ。だいたい、俺はやらなかったからまだしも、シアの成人祝いにおまえたちを呼んでいないだろう。それで察するべきだ、呼ばれていないのにわざわざ呼ぶなんて何か企んでいるとしか思えないが?」
あまりにも喧嘩腰すぎるハロルド様を止めようとすると、マリエル様に腕を掴まれた。
「ハロルド様の許しがなければ何もできないの?貴女の意思はないの?侯爵令嬢なのに男性に寄りかかるばかりで情けないと思わないの?」
…この方は、本当に何も変わらない。
「…何を、」
「ハル様。お待ちください」
マリエル様の手を振り払い、彼女に向き合い視線を合わせる。先に目を逸らしたのはマリエル様だ。
「なに?ほんとのことを言われて怒ったの?」
「いいえ。怒る価値もありませんので」
「…なんですって?」
睨み付けるマリエル様を、私も睨み返す。
「…ふん、後ろにハロルド様がいるからと偉そうに」
「それなら、マリエル様も同じですよね」
「何がよ!」
激昂するマリエル様をじっくりと観察するように、無遠慮な視線を投げ掛けてやる。
「マリエル様だって、そんなに偉ぶっているのは公爵家の肩書きをお持ちだからでしょう。マリエル様おひとりで、肩書きなしで、それでも今と同様にできるのですか?周りの方々もマリエル様の後ろにある、公爵家に忖度しているのですよ。私のことを偉そうだという前に、ご自分を顧みられてはいかがですか?」
「…なっ、わたくしに向かって、そんな口を…っ」
私の思惑通り、またマリエル様は私に手を上げた。パシン、と乾いた音が教室に響く。それもそうだ。こんな面白そうなことを、皆が見逃すはずがない。固唾をのんで見守る人たちは、一言も発しておらず、静かなものだった。
「…シア!」
「ハロルド様も!」
私を庇うように立つハロルド様を押し退け、前に出る。
「そんなに過保護な真似をなさるから、私がマリエル様に見下されていると、弱々しく、何もできない惨めな女と見られていると、ご理解ください。私は、ハロルド様の婚約者ですが、庇護される者ではありません…それとも、私は、ハロルド様と同等の立場にはなれないということですか?」
「ハロルド、セシリア様の言う通りだ。おまえの行き過ぎた態度がこのバカ女を助長させてるんだ」
「なんですって!?」
コンラッド様は、マリエル様の手をひねりあげると
「セシリア様に謝罪しろ。一方的な暴力だと証言する。また明日から停学だな」
とニヤリとし、「ハロルド、担任を呼んでこい」と促した。
突然の声に驚いて見ると、ヒル家の双子が立っていた。
「…なぜ声をかける?今俺は」
ハロルド様の顔が超絶不機嫌に変わる。もう少し、心情を出しすぎるのを控えたほうがいいと思うのだが…あまりにも、わかりやすすぎてこちらの方がいたたまれなくなる。
「ちょうど良かった、ヒル公爵子息が話があるんだろ?セシリア様、我々は」
コンラッド様が私を見て離れようとすると、クレイグ様が慌てたように遮った。
「いえ、皆様にお話が…来月、我々の成人の祝いがあるので、来ていただけないかと、」
その言葉に眉をギュッとしかめたハロルド様が、
「断る。シアは行かない」
と吐き捨てるように、クレイグ様の方を一瞥もせずに言った。
…え?
「あ、の、ハル様、」
「あんなことをしながらよく言えるな。今度はシアに何をするつもりだ、ヒル公爵令嬢」
クレイグ様の後ろに立っていたマリエル様は、ハロルド様の言葉にビクリと肩を震わせ顔色が悪くなっていく。そのマリエル様を庇うように、
「ハロルド様、2週間の停学中、マリエルも反省をいたしましたし、」
「復学してからシアに謝罪していない。反省したのはあくまでも形だけだろ。だいたい、俺はやらなかったからまだしも、シアの成人祝いにおまえたちを呼んでいないだろう。それで察するべきだ、呼ばれていないのにわざわざ呼ぶなんて何か企んでいるとしか思えないが?」
あまりにも喧嘩腰すぎるハロルド様を止めようとすると、マリエル様に腕を掴まれた。
「ハロルド様の許しがなければ何もできないの?貴女の意思はないの?侯爵令嬢なのに男性に寄りかかるばかりで情けないと思わないの?」
…この方は、本当に何も変わらない。
「…何を、」
「ハル様。お待ちください」
マリエル様の手を振り払い、彼女に向き合い視線を合わせる。先に目を逸らしたのはマリエル様だ。
「なに?ほんとのことを言われて怒ったの?」
「いいえ。怒る価値もありませんので」
「…なんですって?」
睨み付けるマリエル様を、私も睨み返す。
「…ふん、後ろにハロルド様がいるからと偉そうに」
「それなら、マリエル様も同じですよね」
「何がよ!」
激昂するマリエル様をじっくりと観察するように、無遠慮な視線を投げ掛けてやる。
「マリエル様だって、そんなに偉ぶっているのは公爵家の肩書きをお持ちだからでしょう。マリエル様おひとりで、肩書きなしで、それでも今と同様にできるのですか?周りの方々もマリエル様の後ろにある、公爵家に忖度しているのですよ。私のことを偉そうだという前に、ご自分を顧みられてはいかがですか?」
「…なっ、わたくしに向かって、そんな口を…っ」
私の思惑通り、またマリエル様は私に手を上げた。パシン、と乾いた音が教室に響く。それもそうだ。こんな面白そうなことを、皆が見逃すはずがない。固唾をのんで見守る人たちは、一言も発しておらず、静かなものだった。
「…シア!」
「ハロルド様も!」
私を庇うように立つハロルド様を押し退け、前に出る。
「そんなに過保護な真似をなさるから、私がマリエル様に見下されていると、弱々しく、何もできない惨めな女と見られていると、ご理解ください。私は、ハロルド様の婚約者ですが、庇護される者ではありません…それとも、私は、ハロルド様と同等の立場にはなれないということですか?」
「ハロルド、セシリア様の言う通りだ。おまえの行き過ぎた態度がこのバカ女を助長させてるんだ」
「なんですって!?」
コンラッド様は、マリエル様の手をひねりあげると
「セシリア様に謝罪しろ。一方的な暴力だと証言する。また明日から停学だな」
とニヤリとし、「ハロルド、担任を呼んでこい」と促した。
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