逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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新たな火種

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「…貴方が王太子になったのは、あくまでもハロルド殿下が王位継承権を放棄したからです。ただのおこぼれなんですよ。ハロルド様が8歳、貴方が7歳の時にもう放棄してしまわれた、それで貴方は自分が王太子になるために何か努力をされましたか?今回王太子になったのはあくまでも仮初めにすぎないというのに、」

「…なんだと?」

エイサン殿下の呆けたような声にニヤリとしたイーサン様は、

「あれ?そんなことも御存知ない?ほんと、おめでたい頭ですね。女のケツばかり追いかけて、国王陛下をはじめ国の重鎮の方々の話をまったくと言っていいほど聞いておられない…いや、理解できないのかな、低能すぎて」

王太子殿下に言っていい言葉ではないのでは、とハラハラしながらコンラッド様を助け起こそうとすると、ハロルド様に「シア、だめ」と抱えこまれ、代わりにハロルド様がコンラッド様を床から引き上げた。じ、とハロルド様に覗き込まれドキドキする。

「ハル様、あの、離してください」

「いやだ。シア、俺以外の男に触るの禁止」

…私が男性に触りまくっていると誤解を受ける発言だと思うのだが。

「ハル様、」

「シア、俺だけ見て。ね、シア。お願い」

「ハロルド、学園内だぞ。おまえも罰を受けたいのか」

コンラッド様に冷たく告げられ、「チッ」と舌打ちをするハロルド様。そんな素敵な顔で舌打ちとか…なんてことを…。

「イーサン、おまえっ」

「我はジルコニア家次期当主。仕える相手を選ぶことはできません。しかし、」

激昂するエイサン殿下に、イーサン様はひんやりとした、凶悪な笑みを向けた。

「仕える相手を、変えることはできます。我が家にはそれだけの力があることを、まずは理解してください。これは我が家だけの意見ではない。重鎮の方々の意見も同様です。くれぐれもお忘れなきよう…飛び級できるほど頭が優秀でも、王になる資質がないのに努力すらしない愚鈍な貴方ひとり、いつでも廃することなど容易いということを」

そう言うとイーサン様は、

「先生、では参りましょうか。コンラッド様は保健室に行かれるといい。傷が酷いですから、治療を受けてください。ハロルド殿下はどうされますか」

「俺もおまえと一緒に行く。先生、まもなく朝礼でしょう。我々ふたりでこのボンクラを学園長室に連れて行きます。よろしいですか?」

「では、お願いします。事情はわたくしより詳しいでしょうから。後程伺うと、学園長にお伝えください」

ハロルド様は頷くと、「シア、また後でね」とニコリとしてエイサン殿下を引き摺るように出て行った。その後ろにコンラッド様も続き出て行く。

「…では、朝礼を始めます」

教壇に立った先生の声で、教室内がようやく静まった。
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