逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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アデル・イーストウェル

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「私は、…これはハロルド様以外には誰にも話していないことです。私の家族にも。コンラッド様、アデル様、私は、一度死んで、気付いたら14歳の自分に戻っていたのです」

「一度死んだ…?なぜ亡くなったのですか」

アデル様を抱き込んだまま対面のソファに腰かけたコンラッド様は、痛ましそうな顔になった。

「自殺したのです。私はその時、ハロルド殿下の…ハロルド王太子殿下の妻でした」

「ハロルドお兄様が、王太子殿下だったのですか」

「まあ、順当に行けば本来ならそうだよな」

頷くコンラッド様に、

「しかしそうだったら、コンラッドおまえとは、険悪なままだったろう」

「…あの当時は、すまなかった」

「責めたくて言ってるんじゃない」

ハロルド様とコンラッド様の会話の内容がわからず顔を見上げると、ハロルド様は苦笑し、

「俺はコンラッドに嫌われていたんだよ。エイサンにもね」

と呟くように言った。

「嫌われていた…?」

いまはこんなに仲がいいふたりが、

「それについては俺が…セシリア様は、俺の父が王弟なのは知っていますよね。結婚して侯爵家に婿に入った。父は、それをなんとも思っていない…自分が好きでそうしたわけですから。でも幼かった俺は、王宮で暮らし、殿下と呼ばれるハロルドを見て、自分だってそうだったかもしれないのにと、…バカな嫉妬をしたんです。一方的に妬んで、何かにつけてハロルドに嫌がらせをしました。無視したり、…エイサンと一緒になって」

「エイサン様はなぜ、」

「エイサンは、ハロルドが優秀なために自分が王太子になる可能性はゼロに近い、そういう妬みでしょうね」

ハロルド様は何も言わず、コンラッド様を見ていた。

「でも、8歳の時、アデルが我が家に引き取られて、父からアデルを守れと言われて、王宮にも今までにないくらい通うようになったら、ハロルドの背負うモノの重さに気付いたというか…俺はアデルすら守れるのかわからないのに、こいつは国ひとつを守らなくてはならない立場になるんだ、って。一緒に勉強したり、鍛練するようになったら余計にこいつの努力が見えてきて…まあ、8歳の時にこいつはこいつで王位継承権を放棄していたわけですけど、セシリア様の家に婿入りしたくて」

「そうだったのですか…」

あの時のコンラッド様が、もしいま聞いた内容のまま育っていたのだとしたら。

「戻る前の…なんて言えばわかりやすいでしょうね…」

「前回、って言ったらどうかな、シア」

ハロルド様がそっと手を握ってくれる。私を勇気づけるように。

「そうですね。そうします。コンラッド様、前回の時、私はコンラッド様とは一度もお会いしたことがありませんでした。コンラッド様は、イーストウェル侯爵様に反発して学園にも通わず、夜な夜な悪い仲間とつるんで遊び歩いているという噂だけ、…お聞きしたことがありました」

コンラッド様は、「そうですか」と頷くと、

「たぶん、アデルが我が家に来なければ、そうなっていたでしょうね、俺も。斜めにしか見れないバカな男に育ったでしょう」

と蔑むように冷たく言った。
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