逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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アデル・イーストウェル

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「ベッドの上に男性と女性が寝かせられていて…男性は、コンラッドお兄様、女性は私…コンラッドお兄様は、胸のあたりが真っ赤に染まっていて、ピクリともしなくて…私は、縄でカラダを縛られていました」

「…え?」

どういう、

「ベッドの傍らに、黒い頭巾を被った人間が立っています。その人が…声からすると男でした、その男が言ったんです。『王太子妃が亡くなり、ハロルド様が壊れてしまった。おまえたちの責任だ。エイサン殿下には責任を問えない。おまえたちふたりがエイサン殿下の…いや、それ以上の罰を受けろ』って」

「…え、あの、」

「シア、アデルは幻影を見たんだ。実際に起きたことではない」

振り返ると、ハロルド様がひとつ頷いた。幻影、

「そして、その男は、…私の首をしめました。『最後にひとつ教えてやる、おまえを抱いていたのはこいつ…コンラッドとエイサンだ。おまえのような娼婦を、ハロルド様が抱くわけがないだろう』って」

…いま、さっきも、

「ハロルド、って、言ったんですか」

「はい。ハロルドお兄様、コンラッドお兄様、そしてエイサン様の名前が出てきて、でも、もう、その目の前の光景に耐えられなくて、気付いたら、そのベッドに寝かされていて、エイサン様が覗き込んできて、…イヤッ!やだ、やめて!」

「アデル!」

駆け寄ってきたコンラッド様は、アデル様を抱き起こすと自分の胸に抱き込み頭を撫でた。

「大丈夫だ、アデル、ほら、俺だよ。コンラッドだ。エイサンはいない、大丈夫だから。聞こえるか、俺の心臓の音が聞こえるか?ここは現実だ。怖くない。怖くないから。俺が必ず守ってやるから…」

「シア、こっちにおいで」

ハロルド様がいつの間にか隣に立っていて、優しく抱き上げられる。顔を見上げると、ハロルド様も硬い表情をしていた。今の、アデル様の話って、まさか、…あの時の?

あの子爵令嬢が殺された…そして、彼女を抱いていたのは、コンラッド様と、エイサン殿下…?でも、じゃあ、ハロルド殿下はなぜ…。

ハロルド様は私を横抱きにしたままソファに腰をおろし、私の顔をじっと見つめた。

「シアが話してくれたことと、アデルの幻影の話は繋がっているのかな」

ボソリと呟いた言葉に、コンラッド様が「ハロルド?」と反応した。ハッ、としたように顔を上げたハロルド様をコンラッド様が凝視している。

「セシリア様が話したこととはなんだ」

「…おまえには関係ない」

「関係なくないだろ!いま、アデルの幻影と繋がっているのかと言ったじゃないか!セシリア様も幻影を見たのか?どこで?どんな幻影だったんだ、ハロルド!」

アデル様を抱き込んだまま、必死な顔で叫ぶコンラッド様からは、アデル様への想いが伝わってくる。苦しんでいるアデル様をなんとか救ってあげたいのだという、想いが。
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