逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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アデル・イーストウェル

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式が終わると、この日は早々に解散となる。ハロルド様は有無を言わさずまた私を抱き上げると、そのまま馬車に乗り込み「イーストウェル侯爵家へ」と短く告げてあとは口をきかなかった。

イーストウェル侯爵邸に着き、また抱き上げられそうになったので身をかわすと、

「今日のアデルの様子を見てもまだわからないのか、いい加減にしてくれ!アデルを殺す気か!」

という男性の怒鳴り声が聞こえてきた。邸に目を向けると、

「ハル様、あの方は、」

「エイサンだな。…まったく。アデルを心配なのはわかるが…」

と苦虫を噛み潰したような顔になり、私の手を取ると足早に歩き始めた。必死についていくと、ドアの前でエイサン殿下とイーストウェル侯爵が押し問答のようになっていた。

「叔父上、お願いします、一目だけでいいんです、」

「エイサン、おまえが無理矢理婚約者にアデルを定めたあの日から、アデルは悪夢に苛まれて眠れなくなったんだ!食事もできない、本来なら学園など行かせたくないのにおまえが飛び級なんてするから、婚約者なのに行かないわけにもいかず…おまえはアデルを大事になど思っていない、ただ自分の欲求を満たしたいだけだ!帰れ!気に入らなければ我が家を潰せばいい、やれるならやれ、俺も相応の覚悟で臨む」

鬼気迫る顔で怒鳴りつけるイーストウェル侯爵は、こちらに視線を移し「ハロルド、」と呟いた。

「叔父上、エイサンが申し訳ありません。エイサン、帰れ。いい加減にしろ」

「しかし、兄上…っ」

その瞬間、ハロルド様のカラダから威圧が迸った。

「エイサン。おまえのいい加減な行動のせいで、俺のシアが傷つけられた。どう落とし前をつける?これ以上ここで騒ぐなら、俺と叔父上でおまえを殺す」

いくら兄であっても、王太子を弑するなどと発言しては謀反と取られかねない。しかしエイサン殿下は「…申し訳ありませんでした」とポツリとこぼし、フラフラした足取りで馬車に乗り込んだ。

それを厳しい目付きで見据えていたイーストウェル侯爵は、私を見ると、

「…お恥ずかしいところを、」

と頭を下げた。

「叔父上、本当に申し訳ありません。…アデルは?」

「コンラッドとともに、自室にいるはずだ。最近はエイサンの声を聞くだけでパニックになってしまって…」

「だから、今日も倒れたのですね」

「陛下は、夫婦になれば落ち着くなんて呑気なことを言うが、あと3年もアデルが持つものか…!その前に、死んでしまう!」

「ましてや、学園に入って早々ヒル公爵家の兄妹が絡んできましたからね。早く手を打たないと、アデルが壊れます。…叔父上、ひとまずシアをアデルに会わせてもよろしいですか?」

「あ、ああ、そうだ、すまなかった。わざわざ来てくれて、本当にありがとう」

そう言うとイーストウェル侯爵自ら、アデル様の自室に案内してくださった。
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