逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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入学式

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また抱き上げられて式の会場に入る。周りの目が非常に居たたまれない。

「ハル様、あの」

「シア、ちょうどアデルがいた。そこに座ろう」

ハロルド様は私をそっと椅子に座らせると、すぐに手を握ってきた。困って見上げるが、一向に離してくれる様子がない。仕方なく隣のアデル様に目を向けると、更に隣に座るコンラッド様と目が合った。

「セシリア嬢、申し訳ない。本来なら俺が盾になるべきところを、」

「コンラッド、エイサンは?」

「学園長室に向かったはずだ。式には出ないで城に戻ると」

コンラッド様の言葉を遮るハロルド様に少しイライラして見上げると、ハロルド様も私を鋭く見据えた。

「…シア。俺はいま、コンラッドを殴りつけないように自制しているところなんだ。これ以上俺を刺激しないで欲しい。我慢も限界に近い」

なんでそんなに怒ってしまったのかわからずに困惑していると、ハロルド様が握る手と反対の手をそっと握られた。

「アデル様…」

「セシリア様、申し訳ありませんでした。私のことを庇ったばかりに…」

ハラハラと零れ落ちる涙に胸が締め付けられる。こんなに痩せてしまって、…こんなに苦しんでいるのに、

「大丈夫ですから、」

「大丈夫じゃない」

隣から不機嫌な声が聞こえてきて居たたまれない。どうしたら機嫌を直してくれるのか。そんなに酷い状態ではないし、傷も付いたりしていないのに。

「ハル様」

見上げても、目も合わそうとしない横顔は先ほどの怒りの表情から変わっていなかった。こんなに激しい怒りを見せられたのは初めてで、ハロルド様にこんな激情が潜んでいたことに驚きを隠せない。

仕方なくアデル様の方に顔を向け、ハンカチを差し出した。

「アデル様、ようやくお会いできて…。大変でしたね。体調がかなり優れないようですが、」

「ご心配をお掛けして…本当に申し訳ありません。あの、セシリア様、今日式の後、お時間をいただけませんか。私、」

「俺も同席する。イーストウェル侯爵家でいいな」

また被せるように言ってきたハロルド様は、私が振り向くとすでに前を睨み付けるようにしていた。ため息しか出ない。

「…よろしいですか?」

「構いません、アデル様がよろしいのでしたら。初めてですね、アデル様のおうちに伺うの。楽しみです」

ニコッ、と笑ってみせると、アデル様も弱々しげではあるが微笑んでくれて少しホッとした。相変わらず右からの威圧は恐ろしい程だったが、こちらはどうしていいのかわからずに途方に暮れた。
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