逆行厭われ王太子妃は二度目の人生で幸せを目指す

蜜柑マル

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前回と異なること

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泣きじゃくっている間に、ハロルド殿下は私の部屋に入りソファに腰を降ろした。泣いてる私を見て、心配そうに、でも声をかけられずにいるデイジーに、「申し訳ないが、セシリアに果実水を準備してもらえないだろうか」と伝えると、ハロルド殿下は私の顔をハンカチで優しく拭い始めた。

だんだん頭が冷静になるにつれて、さっき口走ったことが頭に反芻する。…私、無意識に、

「ありがとう。少し、二人きりにしてもらえるかな」

果実水を運んできたデイジーに、ハロルド殿下は頭を下げた。デイジーはまだ心配そうに私を見ていたが、王族に言われたことには従わなくてはならない。コクリと頷いてみせると、デイジーも軽く頷き出て行った。

「セシリア、飲んで。自分で持てるか?支えるから、飲んでくれ」

ハロルド殿下の瞳も、心配そうに揺らいでいる。つい、あの時の感情に引き摺られて思いが溢れ出してしまったが、この方にぶつけてみたところでどうしようもないのに。

「申し訳、ありません、」

「そんなこと…謝ったりしないでくれ、セシリア、とにかく飲んでくれ。頼むから。また倒れたりしたら…」

そう言いながら私を見るハロルド殿下の顔色も心なしか青ざめている。

「殿下、申し訳、」

「セシリア!謝らないでくれ!謝らなくてはならないのは俺のほうだ、すまなかった、いくら謝罪したところで赦されるはずがない、わかってる、だけど…っ」

ハロルド殿下の鬼気迫る表情に驚いて、更に冷静になる。そんなに思い詰めることでは、

「殿下、悪いのは、きちんと確認しなかった私と、殿下が婚約者だと教えてくれずに今日を迎えさせた父です。赦せないなんて思っていません」

私の言葉に一瞬ハッ、と息を詰めるようにしたハロルド殿下は、

「…じゃあ、お互い様だと、赦してくれるか」

まだ顔色が悪いハロルド殿下を見て、目の前で倒れたり泣いたりするから心配をかけてしまったせいだと反省する。ハロルド殿下に関わりたくないのは事実だけれど、今のこの方は、…あの男ではないのだ。

それでも簡単には割り切れることでもなく…煩悶し、返事をできずにいると、

「ところでセシリア」

と、顎を取られ、顔をグッ、とハロルド殿下の方に向けられた。

「さっきキミが叫ぶように言った、『あんな風にひとりで死ぬなんてまっぴら』とはどういうことだ」

突如ピリッ、と空気が張り詰めたものに変わる。私を見据えるハロルド殿下の瞳は、獲物を前にした猛禽類の鋭さに変わっていた。
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