【完結】あなたのことが好きでした

蜜柑マル

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後日

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「…いつから、」

「まもなく一年になります。留学先で無事に卒業された後、あちらに留まっていらしたのですが…オリザお姉様は、何しろ美しく反面お可愛らしいでしょう?そのギャップに惹かれてしまったあちらの第2殿下に、求婚されたのです」

求婚、という言葉に「…なんだと?」とベンジャミンの眉が吊り上げる。

「お怒りになるのはお門違いですわよ、ベンジャミン殿下。オーウェン様と違って、貴方様はオリザ様との婚約を正式に解消されたのですから。オリザ様は婚約者のいないフリーの令嬢です。ましてや王族と婚姻するからと素晴らしい教育を受け、それを努力と共に身に付けてきた最高の淑女です。…美しく可憐な籠の鳥を自ら放ったのは貴方様ですわよ、ベンジャミン殿下」

唇を吊り上げうっそりと嗤うソフィアに、ベンジャミンは怒りを顕に声を上げる。

「…俺は!彼女を守るためにああしたんだ、あの女の断罪が済んだらもう一度婚約するつもりだったんだ!」

「…そんなこと、オリザお姉様にはまったく伝わっておりませんわ。むしろベンジャミン殿下には嫌われていると思っているのですもの…体よく追い払われたのだとしか思えないでしょう?」

「それより、その求婚はどうなったんだ!」

怒鳴りつけるベンジャミンに、「あのさぁ」とレイノルドが呑気に声をかける。

「受けてないからここにいるんでしょ。頭いいんだから少しは使いなよぉ」

トントン、と自分の頭を指でつついたレイノルドは、そのあと嬉しそうにニヤーッと嗤った。

「でも最近、実家から帰って来いって書状が届いたんだよね?いつまでもソフィアに迷惑かけるな、って」

「パーカー君、僕のソフィアを名前で呼ぶのはやめたまえ」

ギラリと睨み付けるオーウェンに、「でも僕、義理の兄ですから」とニッコリ胡散臭く微笑んだレイノルドは、

「…オリザ様は公爵家を継がなきゃならないからねぇ。婿に来る男は幸せだね、ソフィアと違っておしとやかだから」

テーブルの上のお菓子をソフィアに投げつけられたレイノルドは、それを見事に受け止め口に放り込んでモグモグした。

「美味しい!チェイサー君に持って帰る!ソフィア、お土産準備して!」

「イヤです」

「パーカー君…」

「義兄なので」

「…いい加減にしろ!」

怒鳴りつけ立ち上がったベンジャミンの顔は怒りと焦りで真っ赤になっていた。

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